ルノー・日産・三菱 奇跡の復活で世界のBIG3へ駆け上る!!

雑誌に載らない話vol165

Yokohama, Japan.
日産自動車 グローバル本社

1999年にルノーは日産に資本参加した。過剰な有利子負債を抱えていた日産は、新たにルノー・日産アライアンスを構築することで再生を図った。1999年にスタートした日産リバイバル・プランは、カルロス・ゴーン社長の指揮の下で、2002年度までに有利子負債を7000億円以下に圧縮するという目標を掲げ、その目標は1年前倒しの2001年に達成した。

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カルロス・ゴーンCEOの指揮の下、日産は奇跡の復活を遂げた

まさに奇跡の復活である。日産は1999年から2003年までの4年間で2兆1000億円の負債を完済する一方で、2002年に新たに「日産180」をスタートさせている。日産180は企業再生から成長へと、軸足を移す経営計画で、これも2004年度には完遂することができた。その後、中期経営計画として日産バリューアップ、日産GT2012を掲げたが、これはリーマンショックの金融危機、景気後退、そして円高により再検討を余儀なくされてしまった。

2015販売
2015年度のグローバル販売台数

■新たな目標とその戦略

日産はグローバルで存在感を強めるための中期経営計画として、2011年6月に「日産パワー88」が策定された。この6カ年計画でカルロス・ゴーン社長は、2016年度までにグローバルでのシェア8%、安定的な営業利益率8%を実現するとともに、新興国市場でのリーダーとなること、グローバルで持続可能なモビリティ、EV、ピュア・ドライブでリーダーシップを握ること、そのためにグローバル市場に向けて新型車攻勢をかけること、新車攻勢によりグローバルのセグメントの92%をカバーすること、先進技術を2016年度末までに約90件を投入すること・・・といった意欲的な計画を公表した。

2016年度 地域別販売の見通し
2016年度 地域別販売の見通し

これらを実現するために、ブランドの強化やセールス・ネット枠の拡大強化、商品クォリティの向上、EVのトップメーカーとなりゼロエミッションにおけるリーダーシップを確立することを目標にした。さらにインフィニティ、商用車、新興国市場での事業の拡大、新プラットフォーム(CMF)の導入、ロジスティックなどグローバル規模でのコスト削減という6本の柱の強化を事業の基盤に置いてのだ。

そして営業利益率を高めるためには、インフィニティ部門の強化、車種ラインアップの拡充、新興国用として30年ぶりに「ダットサン」ブランドを復活させ、新興国に投入。またロシアではルノー・日産は、政府の公認の下でアフトワズ社と合弁会社をスタートし、このプロジェクトが成功すれば何とロシアのシェアの50%以上を抑えることになるなど、ロシアに対する攻勢はグローバルで見ても最も積極的だ。ただ、ロシアはオイル安、ウクライナ問題による経済制裁の影響で経済不況となり、当初の見込みははずれている。

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日産パワー88のシンボルマーク

■2016年日産パワー88の成果

ルノー・日産は、グローバル規模でダイムラー、三菱、中国の東風、インドのアショク・レイランドと合弁事業を行ない、新興国市場に布石している。さらにルノーは新興国用にダチア、日産はダットサン・ブランドを展開するなど重層的なグローバル戦略を展開していることも特徴で、この点ではトヨタやGMを上回るといってもよいだろう。

さて、いよいよ日産パワー88がゴールとした2016年度を迎えているが、実績はどれほど積みあがったのか?

2015年度の業績は、売上高は前年比7.2%増の12兆1895億円、営業利益は前年比34.6%増の7933億円、当期純利益は前年比14.5%増の5238億円、営業利益率は6.5%で、過去最高の業績を記録することになった。またグローバル販売台数は542万3000台で、日本、欧州(ロシア含む)、その他地域で台数が減少したものの、北米が9.9%増、中国が6.3%増となり、全体では前年比2.0%増となっている。

地域別販売推移
2011年~2015年の地域別販売台数の推移

ロシア経済が日産パワー88の策定時に比べ低迷している影響を受け、ロシアでの販売は予想をかなり下回っているが、アメリカ、中国は堅調で、特に中国においては日本の自動車メーカーとしてトップの座を確保している。またグローバルでCMFプラットフォームを具現化したエクストレイル(キャッシュカイ、ローグ)が成功し、アメリカではアルティマがヒットするなど、新戦略車種は好調といえる。

利益率推移
2007年~2016年の営業利益率の推移

日産にとって懸案であった利益率の向上も着実に成果を上げているといえるが、その一方でアメリカ市場では依然として販売奨励金が大きいという懸念もある。ちなみに2014年度にはトヨタの営業利益率は9%、スバルは13%、ホンダ、マツダが6%台であったのに対し、日産は4%程度だった。それから比べれば2015年度は大幅に改善したといえるが、まだ目標には到達していない。それを脱却するために、日産はインフィニティ・ブランドの強化を進めているのが現状だ。

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2017年度の業績見通し

だが、2016年度は為替が円高に振れたことも影響し、2015年度より売上高は-3.2%、営業利益は-10%程度ダウンする見通しで、営業利益率は6.0%と見込まれている。予想としては日産パワー88の経営戦略は80%程度の達成率に終わりそうだ。

■巨大化するルノー・日産

その一方で、本家のルノーはヨーロッパ、アフリカ、インドが好調で大幅な成長を遂げている。さらに2016年5月、日産は2370億円を出資することで三菱自動車の株式の34%を取得し筆頭株主となり、資本関係を持つ戦略的アライアンスが実現した。

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ルノー・グループの2016年度の業績

これにより、ルノー・日産のアライアンスに三菱が加わることで、グローバル販売台数は1000万台に限りなく近づき、フォルクスワーゲン・グループ、トヨタ、GMなどと肩を並べる世界トップレベルの自動車企業集団として存在感を強めることになる。

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2016年5月に日産が三菱の株式の34%を取得し、筆頭株主に

アライアンス

将来的にはプラットフォームの共有化やグローバルな販売網の再構築などの課題をクリアすれば、その存在感は一段と高まることは間違いない。ただ、日産はグローバル戦略のロードマップは明確である一方で、日本におけるシェアや存在感が薄れているのも現実で、日本のビジネスロードマップが今ひとつ不明確であるのが残念だ。

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