ルノー・グループと日産自動車は2025年3月31日、両者の新たな相互資本比率の変更、新たな戦略方針を発表した。

今回決定されたのは以下の項目だ。
◾️両社の新アライアンス契約により、相互株式保有に関するロックアップ義務を10%(現在は15%)に改訂し、双方の株式保有の柔軟性を高める。また、日産はルノー・グループのEV開発・製造専門会社「アンペア」への投資を実行しない。したがって、2023年7月26日にルノー・グループ、日産、アンペアの間で締結された投資契約は解約される。ただし、合意済みの新車プロジェクトは継続する。
なお、ルノーグループがフランスの信託会社に信託している日産株式(発行済株式総数の18.66%)には影響を与えない。また、新アライアンス契約により、株式の売却は相手方企業との協調的で秩序あるプロセスを通じて行なわれ、相手方企業または相手方が指定する第三者が優先購入権を有する。
◾️ルノー・グループは、現在日産が保有しているルノー日産オートモーティブインディア社(RNAIPL)の51%の株式を取得し、RNAIPLの100%の株式を保有する。これによりルノーが海外事業を拡大する上で重要な機会を得ることになる。ルノー・グループと日産は現在のインドでのプロジェクトを継続し、今後のインドにおける両者の関係を定めた業務契約を締結する。また、日産が49%、ルノーグループが51%の株式を保有するルノー日産テクノロジー&&ビジネスセンターインディア社(RNTBCI)を共同運営する。
日産は今後数年間、引き続きRNAIPLからインド市場向けと輸出用の商品を調達する。これにより日産は市場カバー率の向上に重点的に取り組み、インドでのプレゼンスを維持する。RNAIPLは日産が開発した新型「マグナイト」を含む日産車の生産を継続し、今後の日産の成長計画をサポートする。
ルノー・グループは、自社の事業計画「2027 International Game Plan」の一環として、インドでの開発を加速させていく。チェンナイにあるRNAIPLの工場は、競争力の高いサプライチェーンを備え、40万台以上の生産能力を持っている。RNAIPLは、現在のCMF-AプラットフォームとCMF-A+プラットフォームに加え、2026年にはCMF-Bプラットフォームを導入し、4車種の新型車を投入する予定だ。本取引完了後、RNAIPLはルノーグループの連結財務諸表に計上される予定となっている。
2025年はRNAIPLにとって新型車の発売とも時期が重なるため、投資のピークとなる年であり、2025年上半期末までに取引が完了する前提として、同年のフリーキャッシュフローへの影響は約2億ユーロと予想される。この点を考慮し、ルノー・グループはRNAIPLを連結したフリーキャッシュフローの通年見通しを20億ユーロ以上とする。
◾️日産は「トゥインゴ」をベースとした日産モデルの開発と生産をルノー・グループに委託する。ルノー・グループは、欧州初のEV専業メーカーであるアンペアを通じて、開発コストと開発期間を削減しながら、2026年から「トゥインゴ」をベースとしたAセグメントの日産モデルを開発・生産する。ただし、このモデルのデザインは日産が担当する。
ルノー・グループのルカ・デメオCEOは、「ルノー・グループは日産自動車とアライアンスを組む長年のパートナーであり、筆頭株主でもあるため、日産が早期に業績を回復させることに強い関心を持っています。私たちは、ルノー・グループにとって価値の高いビジネスチャンスを創出する一方で、日産の業績回復を支援するために最も効果的な方法を、現実的かつビジネス志向のアプローチで話し合いました。今回の枠組み合意は双方にとって有益なもので、新生アライアンスの機敏かつ効率的な考え方の表れで、トゥインゴをはじめとする私たちの商品が持つ高い魅力と、海外市場における事業拡大への意欲を裏付けるものです。ルノーグループは重要な自動車市場であるインドで、効率の高い事業基盤とエコシステムを構築していきます」と語っている。
つまりルノー・グループは日産の再建を重視する結果、今回のアライアンスの関係の変更を容認しており、両者の関係性には変更がないことになる。