日産構造改革
まず来期の見通しは、販売台数は554万台の微増を盛り込み、日本、中国での成長を見込んでいるが、アメリカ市場は6.5%の減少、ヨーロッパは6.7%の減少と想定している。売上高の見通しは2.4%減の11兆3000億円、営業利益は27.7%減の2300億円、営業利益率は2%にまで落ち込むと予想されている。ただ、こうした厳しい状況だが、設備投資と研究開発費は微増させている。
このため、新たな経営戦略として「NEW NISSAN TRANSFORMATION(新・日産構造改革)を打ち出した。まず社内統治制度の改革として、新取締役の選定、そして6月に行なわれる定期株主総会で、新取締役の承認と取締役会を「指名委員会等設置会社」へ移行させる計画だ。
日産としての新組織の体制は決定しており、取締役としてはルノー会長のジャンドミニク・スナール副議長、ルノーCEOのティエリー・ボロレ氏の取締役ポストも決定している。だが、その他の社外取締役、議長の選定などは定期株主総会でどうなるのか、現時点では流動的であり残された時間は多くない。
また決算発表会で、西川CEOはスナール氏から、ルノー・日産の経営統合案が提示されたことを認めたが、「今はその時ではない。業績回復に集中するのが最優先だ」と語っている。
北米事業の見直し
構造改革の2番目は、アメリカ事業の立て直しだ。新型車を投入し、現在、モデル年数が5年を超える状態から2021年度までにモデル年数を3.5年程度とする。また新型車の投入に合わせ、安全システム、コネクテッド技術の普及拡大を図り、2022年にはプロパイロット装着率50%、通信モジュール搭載車は70%以上とするなどが目標とされている。また現地の販売店に対しては販売奨励金の抑制、個人ユーザーへの販売の促進を重点的に進めるという。
構造改革ではグローバル規模でのリストラを断行し、アメリカの一部工場、メキシコ工場での生産台数の抑制、ヨーロッパの工場での生産台数の抑制、イギリス工場でのインフィニティQ30 、QX30の生産終了、そしてヨーロッパからのインフィニティ・ブランドの撤退が行なわれる。従業員はグローバルで4800人のリストラを行なうという。
さらに日産としての商品ラインアップの開発効率を高めるために、日産はC、D、フレーム付きSUVの開発に専念し、A、Bセグメント、商用車/バンは、ルノーと三菱に委ねる方針も明らかにした。
つまり従来の成長戦略を否定し、販売台数は現状を維持しながら、2022年度までに営業利益率を6%台に回復させることが新たな目標とされている。しかしながらアメリカ市場でのブランドの回復はそう簡単ではなく、ここ数年のうちに、厳しい状況をどのように打開するかが大きな課題になっている。