コンチネンタルは2018年12月13日、エリクソン、日産自動車、NTTドコモ、OKI、クアルコムの各社が連携した5.8GHz帯を用いた日本初のセルラーV2X通信の実証実験が成功裏に終了したと発表した。
この実証実験は、車車間(V2V : Vehicle-to-Vehicle )、車両と交通インフラ間(V2I: Vehicle-to-Infrastructure)、車両と歩行者間(V2P: Vehicle-to-Pedestrians)の直接通信と、車両とネットワーク(V2N :Vehicle-to-Network )の基地局経由の通信という車対X通信における特性評価を目的とし、常時接続のセルラーV2X通信の有効性を確認するものだ。
コンチネンタルはリアルタイム通信における通信の信頼性や遅延特性を評価・確認。直接通信ではモバイルネットワーク圏外でもV2V、V2I、V2P通信を可能とし、また基地局経由の通信では、道路や交通状況を含むクラウドベースの広域で、情報収集と配信をV2N通信により実現できることを確認した。
この実証実験は日本国内のテストコースなど、複数の実験場所で行なわれ、5種類のユースケース(追い越し禁止警告、急ブレーキ警告、ハザード警告、交差点通過アシスト、歩行者警告)を想定した走行試験を実施し、これらのユースケースは通信技術の基本的な特徴を検証するものとして選ばれたシチュエーションだ。V2V通信に限らず、V2I、V2P、V2N通信を、さまざまな走行環境と走行速度のもとで実験を行なったということだ。
直接通信の実験では、最大速度110km/hで走行する車両同士のすれ違い(大型トラックを含む)や、車両間に遮蔽物が存在する環境等で、基本的な通信性能が確認できた。こうしたテストの結果、中央値20mm秒の通信遅延、見通し環境で最大伝送距離1.2kmを達成し、データ伝送の遅延レベル、到達距離のいずれもセルラーV2Xが交通環境の中で有効なことを確認した。また、ドコモの商用LTE-Advanced (LTE-A)網を用いた基地局経由の通信では、中央値50mm秒の通信遅延を達成しており、いずれの場合でもLTEの通信規格で有効と認められた。
テスト環境
これらの実証実験では、コンチネンタルが直接通信用の通信モジュールを搭載した試験端末「Qualcomm 9150 C-V2X Reference Design」を日産の試験車両に組み込み、クアルコムと日産は、セルラーV2X技術に求められるテストシナリオの作成とV2Xユースケースの選定を行なった。
OKI(沖電気工業(株))はITS関連のインフラ導入実績を前提に、V2Iによる各種アプリケーションの適用可能性を検証するため、通信モジュールを用いて交通インフラとして設置するシステムを構築した。
また、電気通信分野のリーディングカンパニーの1社であるエリクソンは、直接通信技術とLTE-Aネットワーク技術を融合したV2N通信のシステムを構築。そしてドコモは、LTE-A網とV2Nアプリケーションサーバーを提供し、通信を用いたさまざまな車両の交信を行なうために、直接通信と基地局経由通信が相互補完できることを確認した。
こうした実証実験で得られた結果をもとに、コンチネンタルはさらにセルラーV2X技術の開発を世界レベルで進め、セルラーV2Xは4.5G(LTE Advanced Pro)からスタートし、2022年以降に5Gへの移行する計画だ。
直接通信と基地局経由通信
コンチネンタルのインフォテインメント&コネクティビティ事業部長のヨハン・ヒーブル氏は今回の実証実験終了にあたり、「今回の日本での実証実験でセルラーV2Xは車車間、車と交通インフラ間、車と他の交通参加者間で情報を速く、確実にやりとりするに適しているということがわかりました。直接通信および基地局経由通信が車の視野を広げ、将来のコネクテッドでインテリジェントなモビリティに向けたクラウドサービスを可能にすることでしょう」と語っている。
携帯電話用の電波を使用するセルラー通信によるV2Xの役割は、カメラ、レーダーなど先進運転支援システム用のセンサーを補完するという位置づけだ。現在は、3GPP(3G通信から5G通信までをカバーする通信システムの仕様標準化プロジェクト)により、自動車の交通安全性の向上、自動運転、交通効率化を支えるソリューションとしてグローバル規模で規格化されつつある。なおV2X通信は、直接通信と基地局経由の通信の2タイプの通信方式があり、両方を使用する方向で開発が行なわれている。
コンチネンタル 関連情報
コンチネンタル・オートモーティブ 公式サイト
エリクソン 公式サイト
日産自動車 公式サイト
NTTドコモ 公式サイト
OKI 公式サイト
クアルコム 公式サイト