世界が震撼 ルノーはゴーンCEOを解任しない!カルロス・ゴーン会長逮捕第2弾

雑誌に載らない話vol265
2018年11月19日、カルロス・ゴーン会長が金融商品取引法違反容疑で逮捕されたことをうけ、11月20日、ルノー・グループはグループの利益およびその事業の継続性を維持するための取締役会を開催。議長は社外取締役のフィリップ・ラガイェット氏が務めた。
※関連情報:世界が震撼!カルロス・ゴーン会長逮捕
ルノー

ルノー・グループ取締役会

取締役会は、日本のカルロス・ゴーン氏に対する司法手続き、日産、日本の司法当局の提供している証拠に対してコメントすることができないとし、その一方でカルロス・ゴーン氏は依然として、会長兼最高経営責任者であることを確認した。

取締役会は、カルロス・ゴーン氏が一時的に執行能力を喪失しているため、ティエリー・ボロレCOOを会長兼最高経営責任者(CEO)の代行を務めることを決定した。副社長のボロレCOOは、グループの経営陣であり、カルロスゴーン氏と同じ権限を持つことを確認した。

ルノー・グループのCEO代行を務めるティエリー・ボロレCOO
ルノー・グループのCEO代行を務めるティエリー・ボロレCOO

また現時点では社外取締役を議長に定期的に会合し、ルノーの利益とアライアンスの持続可能性を守り、さらに日産に対して透明性、信頼性、相互尊重の原則に基づいて日産が持つカルロス・ゴーン氏に関する内部調査によるすべての情報を提供するよう要請する。

もちろん、ルノー・グループ取締役会にはフランス政府の指示も盛り込まれている。フランス政府は、すでに東京拘置所のカルロス・ゴーン氏と接触した在日フランス大使からの第1報を入手していると見るべきだろう。

日産の異変と司法取引

日産の異変の始まりは5月18日、最高財務責任者(CFO)のジョセフ・ピーター氏が退任し、専務執行役員の軽部博氏が昇格したことだ。ピーター氏は兼任していた子会社の日産フィナンシャルサービスの会長も退任した。退社の理由は明らかにされていないが、GMから日産に移り9年間にわたり財務、経理の責任者を努めたピーター氏の突然の退任のタイミングは、日産の内部調査が開始された時期と見てよいだろう。

そして11月11日には国税庁により2017年3月期のタックスヘイブン(租税回避地:英領バミューダ諸島)に保有する子会社を巡って200億円強の申告漏れを指摘されている。申告漏れによる追徴課税は約50億円とされる。これも、内部調査、あるいは司法取引の一部に含まれているのかもしれない。

また、今回のゴーン会長、ケリー代表取締役の逮捕された容疑は「金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)」だが、有価証券報告書に自らの報酬を過小に報告したとしたというのは、株価に連動した報酬40億円を有価証券報告書に記載していなかったことで、これは取締役会、経理部門を巻き込んでの事案であるが、これを司法取引により企業を防衛するという手段が取られた。

しかし、「金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)」でゴーン会長、ケリー代表取締役だけを逮捕するのは別件逮捕であり、日産が内部調査で得た結果である、投資資金の不正流用、経費の私的使用などに関わる特別背任罪で起訴できるのかどうかが焦点になるだろう。

一方、日産側は司法取引で法的なダメージを最小限にとどめたとしても、適正な社内ガバナンスが行なわれていなかったとして、株主が西川CEOなどを相手に株主訴訟を起こすリスクも考えられる。日産の最大株主であるルノーが株主訴訟を起こしたとすれば、どうなるのか?

ルノー日産の経営統合は規定路線だった?

イギリスのフィナンシャル・タイムズ電子版は20日、カルロス・ゴーン会長が逮捕前に、同社と自身が会長兼最高経営責任者(CEO)を務めるフランス自動車大手ルノーの経営統合を検討していたと報じた。ある関係者によれば、数カ月内にも行なわれる見通しだったという。そして、そのことにより西川CEOとカルロス・ゴーン会長との間が緊張していたと伝えられている。

つまり、フランス政府が求めているルノーと日産との経営統合に対して、当初は反対していたカルロス・ゴーン会長が、経営を統合する方向に動き出したことが、今回の事案の背景にあるとみられるのだ。

日産関係者は、今回の不正はルノーと日産のゆがんだ提携のあり方に一因があり、日産は今後、ルノーとの持ち株比率を含め、提携のあり方を検討するという。現在はルノーは日産の43.4%株式を持ち、日産に対して議決権を持つが、日産はルノー株式の15%を所有。ルノーに対する議決権は持っていない。

これまでは、日産が増資によるルノー資本比率の希釈、あるいはルノーの株式の買付け等による関係の対等化を意図したとしても、日産の取締役会(9名)では、カルロス・ゴーン、グレッグ・ケリー、ジャンバプティステ・ドゥザン(社外取締役)、ベルナール・レイ、志賀俊之という5名のルノー派が存在し、日産側の西川廣人、坂本秀行、井原慶子(社外取締役)、豊田正和(社外取締役)の4名ではアライアンスの見直しや2社間の株式関係に手を付けることができなかった。

しかし11月22日の緊急取締役会でカルロス・ゴーン、グレッグ・ケリーの2名を解任することで、取締役会の構成が変わり、3名対4名で日産によるアライアンス見直し、あるいは株式増資などが実現できる可能性が高まっている。もちろんルノーは緊急に新しい取締役を派遣すると想定される。

ルノー、日産、三菱の3社アライアンスを重視するルノーは、もしこうした兆しが見えればもちろん黙ってはいないだろう。

世界が震撼!カルロス・ゴーン会長逮捕

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