2015年12月23日、日産は2016年のFIA世界耐久選手権(WEC)LMP1クラスへの参戦を取りやめると発表した。前輪駆動という奇抜なレイアウトを採用した「GT-R LM NISMO」プロジェクトはついに破綻した。
2013年10月17日にニスモ本社でプロトタイプEVレーシングカー「ZEOD RC」の発表会が行なわれ、2014年のル・マン24時間レースに特別枠で出場すること、そして2015年には本格的なマシンでル・マン24時間レースおよびWECシリーズにフル参戦するという計画がスタートした。
そして2015年2月に世界耐久選手権(WEC)に参戦する「GT-R LM NISMO」を発表した。しかし、この計画は当初からつまずき、WECシリーズ1、2戦を欠場。第3戦のル・マン24時間レースにいきなり出場することになったが、予選での最高速を記録したものの、ラップタイムはLMP1の基準タイムをクリアできず、決勝レースでもLMP2クラスに遅れを取るという惨憺たる結果に終わっている。
このため、日産は2015年8月に第4戦以降のWECシリーズへの参戦を取りやめ、2016年シーズンに向け開発・熟成テストに専念すると発表していた。しかし結局、撤退を正式決定せざるをえない状態になったわけだ。
日産のWEC出場という一連のプロジェクトを推進したのは、日産・グローバルモータースポーツ・ディレクター兼マーケティング部長のダレン・コックス氏で、実際のマシン開発を担当したのは日産・モータースポーツ・イノベーション担当責任者のベン・ボウルビー氏であった。
この2人は、アメリカでインディカー・チームのチップ・ガナッシ、デルタウイングチームと連携し、デルタウイングカーを開発した頃からのコンビで、デルタウイングはその後日産・プロジェクトで継続され、ZEOD RC、そしてGT-R LM NISMOへと発展した。
しかしGT-R LM NISMOは奇抜なFF方式のレーシングカーでというアイディアで驚かせたが、LMP1クラスのマシンであるためトロ・トラック社製の機械式フライホイールジェネレーターを採用したハイブリッド・システムを採用することになっていた。がしかし、そのハイブリッドシステムがまともに作動せず、ル・マン24時間レースでもエンジンのみで走行していたのだ。
このため、ル・マン24時間レース以降は熟成に専念するとされていたが、2015年10月にグローバルモータースポーツ・ディレクター兼マーケティング部門代表のダレン・コックス氏が退職したことで、このプロジェクトは終わりを告げたことになる。
日産は目指すパフォーマンスを実現するために懸命に開発を続けてきたが、その目標を達成することは難しいと結論付け、LMP1クラスからのリタイヤを決定したのである。