2014年5月23日、日産はイギリス・ロンドンで、2015年にル・マン24時間レースを含むFIA世界耐久選手権(WEC)のLMP1クラスに復帰すると発表した。マシンの名称は「GT-R LM NISMO」。すなわちGT-Rの名を冠したマシンでアウディ、ポルシェ、トヨタとの対決に挑む。もちろんWECには2台のLMP1マシンをエントリーし、ワークスチーム体制で参戦する。
ロンドンのオールド・トルマン・ブリュワリー(古い製酒工場を改装したギャラリー)で行なわれた発表会には、ル・マン24時間レースの主催者であるACO(フランス西部自動車クラブ)会長のピエール・フィヨン氏と共に、日産チーフ・プランニングオフィサーのアンディ・パーマー氏、ニスモ社長の宮谷正一氏、ニスモ・グローバルヘッドオブブランド兼マーケティング&セールスのダレン・コックス氏が出席した。
アンディ・パーマー氏は「私たちが今回のイノベーションを披露する場所は、ヨーロッパにおいてデジタルマーケティングの新しい中心地と言えるこの地の他には考えられませんでした。2015年は、ル・マンがその舞台となります。私たちは今日この会場で記者会見を行なっていますが来年は祝賀会を開きます」と語っている。
なお日産のスポーツマーケティングは、F1グランプリで日産の高級ブランド「インフィニティ」をレッドブル・レーシングの活動と連携させ、モータースポーツ以外においても、UEFAチャンピオンズリーグのオフィシャルパートナーとして、新たに4年間の契約を結んだ。また、2016年のリオデジャネイロ・オリンピックにおいても、公式パートナーとなっているなど、新たな活動を次々に展開しており、今回のWEC参戦ももちろんその中の重要なプロジェクトのひとつと位置付けられている。
LMP1マシンについては、「WECはマシンの性能だけの戦いに留まりません。このクラスにおけるライバルはすべて技術面で異なるアプローチを取っています。私たちも同様です。ライバルたちに対し、まったく異なる方法で勝ちたいと思っています。私たちは、ポルシェ、アウディ、トヨタと同じ枠のマシンに収めるつもりはありません。他とは違ったものを目指しています」とパーマー氏が語っているのは注目に値しよう。
さらにパーマー氏は、「我々のチームをひと言で表すとするならば、何か違った形で参戦する、ロードカーの技術にも応用できるような何か新しい技術や革新的でエキサイティングなアプローチを取る、そして勝つために走る、ということになる」と語る。つまり市販モデルとも関連性があるテクノロジーを実験し、熟成させるという意図が感じられる。現在のLMP1カテゴリーはハイブリッドシステムが義務付けられているが、日産はよりEV的な要素を持ち込むのではないかと予想される。
ニスモの宮谷社長は、「NISSAN GT-R LM NISMOのデザインやクルマ造りは、日本に根差すDNAを基盤としているが、このプロジェクトチームのエンジニアやチーム員は、日本、アメリカ、ヨーロッパから集まるメンバーで構成されています。LMP1の戦いはとても厳しく、メーカー同士の真剣勝負であることは承知の上ですが、私たちもこうしたライバルたちに対抗するべく、競争力の高いマシンを造り上げ、素晴らしい走りを必ずお見せします」と語っている。
ドライバーは、現在検討中ということだが、2014年のル・マン24時間にガレージ56枠で参戦する「ZEOD RC」にはゲームソフト「グランツーリスモ」を使用したGTアカデミー卒業者が起用されているが、彼らもドライバー候補者に入っていることは言うまでもないだろう。
なおLMP1マシンの詳細は明らかにされていないが、現時点ではすでに設計後期段階にあると予想されるが、2014年秋10月にはテスト走行を開始するという。