2012年11月20日、日産リーフがビッグマイナーチェンジを行い、同日から発売を開始した。リーフは2010年12月に発売以来、約2年間で日本は1万9000台、北米で1万5000台、その他の地域で6000台を販売している。世界で販売された電気自動車のうち、リーフのシェアは52%に達している。こうした実績を積んだリーフは、今回のマイナーチェンジでは、EVとしての更なる性能向上と、ユーザーがより使いやすくすることを目的に、大掛かりな仕様変更や装備の改善が行われている。
今回のマイナーチェンジでは、航続距離の拡大、装備の追加、より低価格のエントリーグレードの追加が行われた。
航続距離を伸ばすために、80kgにも及ぶ車体の軽量化が行われている。この軽量化は、パワートトレーンの軽量パッケージ化で-30kg、床下のバッテリーを軽量化して-20kg、その他車体での軽量化が-30kgにという内訳になる。
パワートレーン関係では、従来はリヤシートの背後に置かれていた車載充電器を小型化してフロントに移動させている。このため、エンジンルームには上から充電器、インバーター、DC-DCコンバーター、モーターという積み重ねたレイアウトになり、結果的にはEVのモーターとパワーコントローラーがひとつのパッケージにまとまったため、他のボディへの転用も容易になったといえる。また車載充電器をフロントに移したことで、後方まで延びていた配線の長さを大幅に短縮することもできている。
駆動用バッテリーの軽量化は、リチウムイオンバッテリーのセルそのものの軽量化ではなく、セルを格納したモジュールの金属ケースの構造をシンプル化することでケースの重量を削り、トータルとして20kgもの軽量化を果たしているのだ。
リーフのもうひとつの大きな変更点は、駆動用のモーターが新設計になったことだ。
特性的には初期のトルクをダウンさせ、その一方で使用頻度の高い中速域のトルクを増強したことで、常用域での効率を高めている。発進時のトルクダウンした分は、減速ギヤ比を7.9377から8.1938に落とすことで適合させている。このような従来のモーター(EM61型)から新型モーターに(EM57型)に進化したことで効率を高めている。
また、新型のモーターは磁石に使用するレアアースのネオジムとともに、必要なジスプロシウムの使用量を40%削減することに成功している。従来はネオジムとジスプロシウムは均一に混合させていたが、新タイプでは必要な部分にジスプロシウムを配置させる粒界拡散技術を使用することで、レアアースのジスプロシウムの使用量を低減させている。結果的に、新型のモーターを採用することで効率が向上し、軽量化の効果も合わさり、0-100km/h加速が3% 向上しているという。
また回生ブレーキの利用域を限界まで拡大している。主として制御の高効率化により、従来は7km/h以下では回生は行われなかったものを、新型では3km/hまでと停止寸前まで回生ができるようにしている。このため回生エネルギー量が増大し、航続距離を伸ばすことに貢献している。このような軽量化や、モーター本体、制御の改良により、従来の航続距離(JC08モード)200kmが228kmに伸びている。
今回のマイナーチェンジでは、こうしたモード構造距離だけではなく、実走行での航続距離を向上させるための技術も投入されている。その代表がヒートポンプ式エアコンの採用(Sグレード以外)だ。
家庭用エアコンでは常識化しているヒートポンプ式は、従来の電熱による温水式ヒーターの約半分のエネルギー消費に抑えることができるという。またエアコンに送風モードの追加、天井内側に遮熱用のアルミフィルムを貼ることでエアコンの外気温の影響を少なくするなど細かな配慮をしている。
またステアリングホイール、5座席分、全席のシートヒーターを標準装備化し、エアコン使用量を抑えるることもできるようにしている。静粛性では、磁気制御回路の改良、駆動系の振動音の抑制などにより中速域での静粛さがさらに改良されている。
ドライバビリティの向上のために、従来の「D」と「ECO」モード以外に、「B」モードが新設された(Sグレード以外)。これまでの「ECO」モードは「D」モードより回生ブレーキ量を増大させていたが、新設された「B」モードはそれよりさらに回生ブレーキを強めることで下り坂などで運転がしやすくなっているのだ。
なお「ECO」モードはエアコン制御などもマイルドな制御になるが、「B」モードは単純に回生ブレーキ量だけを増大させるようになっている。もちろん「ECO」と「B」は併用することもできる。
ナビゲーションも使いやすさをさらに追求。メニューに省電力ルートの案内や、到着時のバッテリー残量予測なども表示できるようになった。省電力ルートは、標高データ、勾配計算、走行抵抗、空気抵抗などを演算することで、最も電力消費の少ないルートを表示する。
これ以外に、充電スポットの営業時間表示や、スポットがすぐに使用できるかどうかなども表示できる。充電スポットの満空情報は日産カーウイングスのデータセンターから通信で送られる仕組みになっている。
今回のマイナーチェンジでは、、リーフのラゲッジスペースの拡大、17インチホイール装着仕様の設定、本革シートのオプション設定、内外装色の追加なども行われた。
なお、新設定されたエントリーグレードの「S」は、ナビ、ヒートポンプ・エアコンなどの装備は含まれず、さらにレスオプションとすることにより補助金前提で、実質250万円を切る価格設定となっている。