2012年9月12日、日産はパリモーターショーでSUVコンセプトカー「TeRRA(テラ)」 を公開すると発表した。「TeRRA」は、SUVとEVという日産のオリジナリティを象徴する2つを組み合わせたコンセプトモデルだ。オフロード走行と、都市部での快適な走りを両立させるクロスオーバーSUVで、革新的な4×4の燃料電池パワートレインと、一クラス上の風格を感じさせエクステリアを持ち、ゼロ・エミッションSUVという新たな持続可能性を提案している。
TeRRAは、ムラーノやデュアリスなど、都市部向けのクロスオーバーSUVをベースにつくられ、日産のピュアドライブ戦略が燃料電池車まで視野に入れていることを示すゼロ・エミッションSUVだ。ターゲットは若いユーザー層で機能的でユーティリティを重視したパッケージングになっている。
商品戦略室副本部長のフランソワ・バンコン氏は、「本コンセプトでは、日産のSUV/クロスオーバーの強みをゼロ・エミッションの領域まで広げると同時に、日産が燃料電池車をゼロ・エミッション社会の新たな提案として明確に示すことに挑戦しました。また、オフロードを走る大きくタフなクルマではなく、日常の生活にも適したSUVをつくり上げたかったのです。ユニークで革新的なシートレイアウトにより乗員の視界を広げることは、どのような環境でも全てをコントロール可能な感覚を乗員に与え、刺激的なドライビング・エクスペリエンスを実現しています」と語っている。
またデザイン担当常務執行役員の中村史郎氏は、「私たちは、この車をデザインする際、北欧の若者のライフスタイルを思い浮かべることから始めました。自然の情景を思い浮かべながらクルマの外観を考え、ゼロ・エミッションの未来という、私たちのビジョンと共に、今までのSUVの伝統をより逞しい方法で表現し直しました。大きなタイヤ、高いベルトライン、太いピラーと細いサイドウィンドウというSUVの要素だけでなく、ホイールアーチ上に張り出したフェンダーに囲まれたスレンダーなウエスト部分と、彫刻的なフードにより、外観から分かる逞しさをつくり上げました。シャープなボディの四隅、短いオーバーハング、彫刻的なランプが、すっきりとして堂々としたスタンスを印象付ける役割を果たしています。目を引くカラーリングの空力に優れたフラットなボディパンが、車体下部全体を覆うことで、モダンでタフなイメージをつくり上げています」と語っている。
インテリアは包み込まれるようなデザインで、木製のドアパネル、色付きのアクリルパネルが調和されている。室内を肩の高さで取り囲むメタルフレームは、乗員に安心感を与える狙いだ。ウッドとメタルのコントラストは、ダッシュボードまで続いており、ブナ材とアクリルの組み合わせが柔らさ、温かさを演出。特徴的なインストルメントパネルはインテリジェントキーの役割も果たす電子タブレットを差し込むことで、このクルマを起動させることができる。取り付けられたタブレットは、ディスプレイに速度や主要な性能を表示できるほか、エンターテインメント、通信、ナビゲーションなど、タブレットを使用して他の画面に簡単に切り替えることができるようになっている。
ドライバーは、中央寄りに配置されたフロントシートに座り、後席の乗員は斜めに配置されたユニークなシートレイアウトにより、フロントの乗員の真後ろではなく、肩越しに前を見ることにななる。
このコンセプトカー、TeRRAに搭載される4輪駆動の燃料電池パワートレインは、限りなくリアルなレイアウトを採用している。前輪を駆動するのは、日産リーフに採用されているシステムだ。後輪は既に発表しているコンセプトカー「PIVO」シリーズのような、実用レベルのプロトタイプをベースにしたインホイールモーター(IWM)を搭載した4輪駆動になっている。後輪を駆動するのにドライブシャフトは必要ないので、室内やアンダーボディに突起がなく、フラットな室内を実現している。
エンジンフード内には、水素燃料電池を搭載するのに十分なスペースが確保され、ここにフラットでコンパクトな、世界トップレベルの出力密度2.5kW/Lの燃料電池が搭載されている。このコンポーネンツは日産の最新の燃料電池で、2005年当時のものと比べて必要な貴金属の量は1/4で、コストは1/6になっているという。