2012年7月20日、ルノー/日産アライアンスは韓国のルノーサムスン自動車(RSM)に1億6000万ドル(約125億6000万円)を投資支援すると発表した。同時に2014年からルノーサムスン自動車の釜山工場に日産「ローグ」の次期型モデルの生産を委託する。釜山工場を輸出基地のひとつとすることで、ルノーサムスンが現在抱えている課題を解消するとともに、今後の成長を促進するという。
ルノーサムスン自動車は、サムスン財閥の自動車メーカーとして日産の技術支援を受けつつ1995年にスタート。しかしアジア通貨危機の影響を受け、2000年に経営破綻。そこでルノーは同社の株式の70.1%を取得(その後80.1%まで高めた)、筆頭株主となりルノーグループ傘下に収め、社名もルノーサムスン自動車(RSM)とした。なお同社と日産との直接的な資本関係はない。
ルノーサムスン自動車は今年、「RSM 2012 リバイバルプラン」を発表した。その背景には、ルノーサムスン自動車の販売不振がある。同社の釜山工場は年間30万台の生産能力があるにもかかわらず、現状では約半分程度の操業率にまで落ち混んでいた。リバイバルプランは、不振を打破してルノーグループの中での役割を明確にすることを目指している。そして同社の余剰生産力は日産が活用し、次期型「ローグ」の生産を行う。
日産ローグとは、小型SUV「デュアリス」のアメリカ版とされるSUVだ。現行モデルは日産自動車・九州で生産している。しかし次期型からはアメリカのテネシー州スマーナ工場に生産を移す事が既に決定している。とはいえローグのアメリカ市場での販売の拡大が予想されるため、スマーナ工場の生産能力の不足を見越して2014年からルノーサムスン自動車・釜山工場で約8万台を生産することにしたのだ。
その一方で、ルノーサムスンとしても2012年度内には18万台にまで生産を回復させるとしている。リバイバルプランでは、釜山工場で業界トップの効率性と韓国製の部品比率をさらに高めることでコスト競争力を実現し、韓国でのシェアは従来の7%から10%にアップさせることを目指すという。
リバイバルプランでは2013年に新しい小型クロスオーバーと電気自動車「SM3 ZE」を発売する予定で、現状のコンパクトカー「SM3」、中型セダン「SM5」、大型セダン「SM7」、SUV「QM5」というラインアップをより強化する計画だ。
ルノーと日産のCEOであるカルロス・ゴーン氏は韓国を訪問し、「韓国での生産能力の増強は、ルノーサムスンがコスト競争力と成長に対する目標を達成するため、アライアンス全体でサポートをしていくというコミットメントを明確に示したものです。今回の釜山での発表は、ルノー、日産、ルノーサムスンにとってユニークな『win-win-win』の関係を表したものであり、全てのパートナーにとってのアライアンスの柔軟性と、その力を証明するものです。私はルノーサムスンの従業員ひとりひとりが、今回のプロジェクトを成功裏に完了させるため、取り組んでいくと期待しています」と語っている。
今回の投資は、ルノーのグローバルな事業拡大の鍵のひとつとして韓国を重視していることを明確にしている。同時に日産にとっても韓国での生産はメリットがある。対米輸出で韓国とアメリカの自由貿易協定により関税ゼロとなることや為替のウォン安などを利用することができるためだ。将来的には日産・九州と釜山、さらに中国の工場を連携させ、部品の共通化を行うなどの東アジア構想も見通していると考えられる。
ルノーは事業範囲をヨーロッパ諸国以外、特にアジア太平洋地域に広げ、ヨーロッパ地域以外での販売台数比率を50%以上とすることを目指している。その構想を進める上でルノーサムスンを重要な資産と位置付けているのだ。