【日産】次期型ノートは抜群の省燃費が自慢

9月に発売される新型ノート。搭載されるエンジンは2種類で、1基はすでに市販されているマーチにも搭載されているHR12DE。そしてもう1基はスーパーチャージャー付きのHR12DDRである。排気量は現行の1.5Lから1.2Lへ、4気筒から3気筒へとダウンサイジングされている。(欧州では既存)

日産の新型ノートの画像日産の新型ノートのエンジンHR12DDR画像

新型ノートに搭載されるエンジンの狙いはダウンサイジングにある。省燃費型としながらも、従来通りのパワー&トルク感を確保した使い勝手に優れるユニットということになる。ちなみに、組み合わされるCVTはこれまでノートやマーチに搭載されていた副変速機付きのCVTを継続搭載している。

注目は過給器付きのHR12DDRユニットだ。HR12DDR型がそれで、直噴ミラーサイクル運転+スーパーチャージャー付きエンジンで、1.5L並みのパワーと低燃費を追求したモデル。そして、もう1基はNAタイプのエンジンで、こちらも副変速機付きCVT。小型・軽量化を図り、低燃費と日常の使い勝手に適したトルクのある低燃費エンジンとしている。

気になる燃費は、スーパーチャージャー付きのHR12DDRはJC08モードで25.2km/Lでクラストップの燃費である。また、NAのHR12DE型は22.6km/Lで、1.5Lを搭載する先代ノートの18.0km/Lを上回っている。新型ノートが省燃費を実現しているのは、プラットフォームの一新、CVTのフリクション低減、アイドリングストップ機能などに加え、やはり新型エンジン搭載が大きく寄与している。

日産の新型ノートのエンジンHR12DDR画像
燃費改善のためのアプローチ

新型ノートが搭載する省燃費で効率のよい2基のエンジン。日産・パワートレイン主管の岸一昭氏は、燃費改善のポイントは3点、すなわち
(1)熱効率の向上
(2)ポンピングロス低減
(3)フリクション低減
があると説明する。

熱効率の向上というポイントからみてみよう。ひとつには、高圧縮比がある。過給器エンジンでありながら先代ノートの1.5LNAの10.5よりも高い12という圧縮比である。圧縮比があがれば燃焼効率は高められ、高出力も得られる。反面、ノッキングが起こるので、その対策をする必要がある。

日産の新型ノートのエンジンHR12DDR画像日産の新型ノートのエンジンHR12DDR画像

↑高圧縮化にともなうノッキング対策は、熱を下げるための工夫がされている

ノッキングがおきにくい状況とするには燃焼室内の熱を下げることが有効だ。ピストンの持つ熱対策としてクーリングチャンネルのついた油冷ピストンを採用するとともに、高熱伝導率のピストンリングを採用している。バルブステムにはナトリウム封入タイプを採用し、真鍮のバルブガイドで熱を吸収する方法がとられている。どれも高出力ターボエンジンと共通する高度な技術である。

燃焼行程では、まず、吸気ポートをストレートとし、シリンダー部との境にシャープなエッジを設けることでタンブルを発生させている。これによりシリンダー内混合気の均一度を高めることができ、燃焼効率の向上を狙っている。インジェクターは6墳孔のマルチタイプで、燃圧は15Mpaという高燃圧で噴射。タンブルを受けて均一度が高くしているわけだ

日産の新型ノートのエンジンHR12DDR画像日産の新型ノートのエンジンHR12DDR画像

混合気の均一度を上げるには、噴霧を広げれば保つことはできる。しかし広げすぎるとシリンダーのボア部分に混合気が付着し、ピストンリングでかき下げられオイルの希釈が起きてしまう。そのため、6ホールのインジェクターを採用し、シリンダーに混合気が付着しにくいように噴霧。高燃圧で高い均一度を保つようにしているという。

日産の新型ノートのエンジンHR12DDR画像日産の新型ノートのエンジンHR12DDR画像

図はタンブル比と流れ係数を示している。少ない空気の流れのときでも、強いタンブルがあれば燃料の均一度を増し、効率よく燃焼させることができる。ここが過給器エンジンでも燃費がよくなるポイントである。つまり、少ない空気=スロットルが開いてない、だから流速も遅い、だがタンブルで高効率燃焼に持っていけるので高トルクを稼げる。トルクがあればアクセルを踏まない、だから燃料を消費しない、という理屈である。

HR12DDR型はミラーサイクルでもある。ミラーサイクルはご存知のように、吸気したあとに吸気バルブを開いたままピストンが上昇する。ピストンの下死点から180度のうち100度まで吸気バルブは開いたままなので、吸気した空気が押し戻されることになり、ピストンによる圧縮時の抵抗は少なく、吸気行程でのポンプロスが少ないというメリットもある。言い換えれば、1.2Lの排気量のエンジンであるにもかかわらず、約0.9Lの排気量のエンジン並みのポンピングロスになるのだ。

一方、ミラーサイクルは吸気バルブが通常より長く開いているために吸気のタンブルが逃げる。そのため圧縮、爆発行程ではタンブル流が発生しないことになる。そこで燃料のミキシングの段階ではタンブルを発生させているが、着火の時には、火付き性、燃焼時間を短くする必要がある。そのために今度はスワールコントロールバルブで燃焼が始まるまで混合気の乱れ(渦流)をつくって高効率燃焼を実現しているという流れだ。

日産の新型ノートのエンジンHR12DDR画像
ミラーサイクル行程とEGRのクーリング方法

環境性能のためにEGRも採用している。EGRは一度排気されたガスをインテークマニホールドへ戻す。この排気を吸気に戻すことで、燃焼室では燃焼済みの排ガスと新気がミックスされ、軽負荷時でもスロットル開度が大きくなることで、ポンプロスを減らしている。戻すにあたってはヘッドから、水の回っているウォーターアウトレットを通してインテークマニホールドに戻している。ここにEGRバルブがあり、少しでも熱い排気ガスの温度を下げ、充填効率を上げているわけだ。

日産の新型ノートのエンジンHR12DDR画像
180度中、100度のタイミングで吸気バルブは開いている

整理すると、燃料を均一にするためにタンブルを使い、燃焼時間を短くするためにスワールを使うという、この2つが省燃費とするためのキーポイントということだ。

日産の新型ノートのエンジンHR12DDR画像

フリクションの低減という点では、すでに他の日産のエンジンに採用されているものもある。例えば、鏡面加工のカムシャフト、クランクシャフトや、水素フリーDLCコーティングされたバルブリフターやピストンリング(世界初)など、F1エンジン並みの技術が採用されている。その結果、HR12DEより約10%メカニカルフリクションを減らすことに成功している。

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最後になるがスーパーチャージャーはルーツ式の4葉タイプを採用。ポイントは電動クラッチを装備し、自動で過給とNAを切り分けていることだ。前出の岸氏によれば、スーパーチャージャーはアクセルを大きく踏み込んで加速するときなど、ごく限られた場面でしか使われないだということだ。市街地や巡航時などは、それでも十分な加速が得られる。

9月に発売される新型ノート。ダウンサイジングされたエンジンと新型プラットフォーム、軽量化など、数多くの新技術が投入されていると思われる。その実際の乗り味の報告はもう少し待ちたい。

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