三菱アウトランダーPHEV 絶大な安心感をもたらすS-AWC雪上走行性能(2.4L+ツインモーター/AWD)

三菱アウトランダーPHEVを雪上の一般道で走行する機会があり、極めて安定した走行ができることを改めて実感することができた。以前、クローズドコースで試乗する機会は何度も体験しているが、公道を一般車に混じって走行してみると、その安定性と信頼性の高さを肌で感じることができた。

19MYから4WD走行モードにスノーとスポーツが追加

試乗ルートは東京から群馬県のスキー場に向かう道程で、降雪直後の圧雪路を走行することになった。アウトランダーPHEVには、19MY(モデルイヤー)から走行モードに「SNOW」と「SPORT」が加わり、まさにその「スノー」の恩恵が得られる環境となった。

周りの一般車両も慎重に走行している中、速度は40km/h前後でスキー場までの山道を登っていく。センターコンソールにあるトグルタイプのスイッチを操作し「SNOW」を選択。もちろんタイヤはスタッドレスタイヤを装着している。余談だが、「4WDだから多少の雪はOKだ」と誤解をしているユーザーもいるが。決してそんなことはなく、4WDでもスタッドレスタイヤはマストな装備だ。

アウトランダーPHEVのGプレミアムパッケージ。ボディカラーはレッドダイヤモンド

スキー場までは滑る感覚を微塵も感じることなく到着できる。そして電子デバイスが稼働した!といった制御されていることすら感じることなく走行できるのだ。

なお、今回試乗したのは2019年9月に発売された最新型の20MYで、主な改良点は「スマートフォン連携ナビ」のディスプレイ画面が8インチに拡大され、見やすさや操作性が向上したほか、510Wのパワーアンプ、8個のスピーカーシステムからなる「ミツビシパワーサウンドシステム」が新たに設定された。

S-AWC制御を体験

アウトランダーPHEVの制御とはどんなものか? アウトランダーPHEVの走行は前後に2つの独立したモーターを持ち、そのモーターで走行する。また高速道路など高速域での巡航走行で、モーターよりエンジンの方が効率の良い場合や、追い越しなどパワーが必要な場面ではフロント側モーターの代わりにエンジンで駆動するという独特の走行方法だが、前後モーターのトルク配分と左右輪にかかるトルク配分をコントロール、そして4輪のブレーキ制御をして走行しているのだ。これを三菱では「S-AWC」と表現している。

S-AWCは「スーパーオールホイールコントロール」の略で、常時連続的に4輪を制御し、車両の安定を図る仕組みだ。2つのモーターの前後トルク配分は、走行モードでトルク配分が自動で変更され、また走行状況に応じても連続的にトルク配分は可変する。

EVモード、チャージモードはシフトレバーの直下。ドライブモード切り替えはスポーツのみ独立して設置してある

まず、スノーモードでは通常8:2の前後トルク配分で走行し、滑りを予測、検知すると45:55まで変化する。そしてスノーモードはいうまでもなく安定方向で、ブレーキが繊細に働き、車両が滑らないように制御が入る。これらはフィードフォワード制御であり、滑りの予測をする制御であるため、ブレーキコントロールは繊細だ。ドライバーにブレーキがつままれている感覚は伝わってこない。ちなみにフィードバック制御の場合は、滑ってから滑りを止める制御になるので、ABSのようにブレーキがつままれているのはわかりやすいのだ。

したがって、40km/hで走行する車列では、そうした制御のおかげで実に安定して走行し、安心感の高い走行を体験できるわけだ。運転感覚としては「急な操作」をしてもクルマ側が反応しないので滑らないという印象を持つ。雪用の長靴とかトレッキングシューズなどで、デリケートな操作がしにくい時などその恩恵は大きいと感じるだろう。

スノーモードはあまり神経質にならなくても、車両が滑りを制御してくれるので安心感があり疲れない

モードによる違い

一方、ノーマルモードでの通常走行は前後のトルク配分が8:2の割合で走行し、滑りを予測、検知すると55:45まで前後のトルク配分が変わる。ちなみに、ドラテクに自信があれば、雪上では非常に走りやすいので、ハイスピードでの走行がしやすいから運転しやすいと感じるかもしれない。

Lockモードは通常、前後のトルク配分が7:3で、滑ると4:6になる。これもスキルによるが、実は意図的に滑らせて走らせるような走り方をすると、このLockモードが走りやすいのだ。それは滑った時、アクセルの反応がリヤ寄りになり、スライドコントロールがしやすいと感じるからで、19MYモデルからはリヤモーターの出力を上げているので、その効果というわけだ。

また、もうひとつ19MYモデルに追加された「SPORT」モードは、センターコンソールに独立したスイッチがあり、それを押すとリヤ駆動力が強くなる。通常は7:3のトルク配分で、滑りの予測、検知により33:67に変化するというわけだ。

このモードはシステム最大出力を発揮できるよう強制的にエンジンがかかる。トルクの立ち上がりも性能曲線でいう急峻なトルクの出方に変わるため、アクセルの反応が敏感になり、雪上だとステア操作が忙しくなるほどリヤが動く。雪上のようにかなり低いμの路面だと、スポーツモードでは忙しすぎて走りにくい。ドライ路面のワインディングがベストだろう。

高い技術力がもたらす信頼と安心

アウトランダーPHEVの発売当初、その駆動方式の複雑さや前後のタイヤにドライブシャフトが存在しないことなど、革新的でそのメカニズムを理解するのに苦労したものだが、アウトランダーPHEVはその先進性の高さから息の長いモデルライフになった。

その複雑な走行モードは、EV走行、シリーズハイブリッド走行、そしてパラレルハイブリッド走行という3パターンの走行モードがあり、これらがさまざまな走行負荷、センサー類のデータにより最適なモードを選択し、自動で走行モード変更が行なわれている。ドライバーは何も考える必要はなく最も高効率な低燃費走行を自動選択しているわけだ。
尚、「EVプライオリティモード」を選択すれば、EV走行モードを維持することも可能だ。

これらは前後に独立した2つのモーター駆動と、高速走行でのエンジン駆動という独特の走らせ方による成果ではあったが、日産のe-POWERやホンダのi-MMDには、このアウトランダーPHEVのシステムと共通した部分がある。したがって今となっては、三菱の高い技術力を高評価できるまでにマーケットが成長したと言えるだろう。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>

試乗車スペック

・グレード:Gプレミアムパッケージ
・ボディカラー:レッドダイヤモンド
・乗員:5名
・ボディサイズ:全長4695mm、全幅1800mm、全高1710mm
・排気量:4気筒2.4L
・最高出力:94kW[128ps]/4500rpm
・最大トルク:199Nm [20.3kgf/m] /4500rpm
・フロントモーター最大出力/最大トルク:60kW[82ps]/137Nm [14.0kgf/m]
・リヤモーター最大出力/最大トルク:70kW[95ps]/195Nm [19.9kgf/m]
・総電力量:13.8kWh リチウムイオン電池
・総電圧:300V
・駆動方式:ツインモーターAWD
・バッテリー保証:8年16万km

WLTCモード燃費

・市街地モード:15.4km/L
・郊外モード:16.8km/L
・高速モード:16.8km/L
・EV走行換算距離(等価EVレンジ)57.6km

価格

・車両本体価格:499万1800円(税込)
・オプション価格:36万9908円(税込・工賃込み)

COTY
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