【三菱】新型アウトランダーのプラグインハイブリッド・システム、安全運転支援システムの概要

アウトランダーPHEV システムのパワートレイン・レイアウト

三菱自動車は、新型アウトランダーをベースにした「アウトランダーPHEV(プラグイン・ハイブリッドEV)」を、2013年初頭に発売するとしていることを発表した。このアウトランダーPHVに関し、2012年9月5日にPHEVのシステム概要と、新型アウトランダーから採用される運転支援システム「e-Assist(イーアシスト)」の発表があり、考察してみた。なお、通常モデルの新型アウトランダーは2012年10月に発売予定されいてる。

アウトランダーPHEV システムのパッケージング

●アウトランダーPHEV(プラグインハイブリッド・システム)
三菱の新たなプラグインハイブリッド・システムを「PHEV」と呼ぶことからもわかるように、プラグインハイブリッドのEVと位置付け、トヨタのハイブリッド車から派生したプリウスPHVとはまったく発想が異なることに注意したい。

システムとしては、前後輪を駆動する(つまりモーターによる4WD)2個の高出力モーター、エンジン、発電機、大容量の駆動用バッテリーから構成されるている。


ハイブリッドシステムとしては、エンジンで発電しモーターで走行するシリーズ・ハイブリッドと、エンジンで駆動しモーターが駆動をアシストするパラレル・ハイブリッドの両方のシステムを切り替えている。そして、走行モードとしては、エンジンを停止してバッテリーの電力だけで走行する「EVモード」と、エンジンで発電しモーターで走行する「シリーズ・ハイブリッド・モード」があり、さらにエンジンで駆動し、モーターが駆動をアシストする「パラレル・ハイブリッド・モード」の3モードがある。

エンジンは4気筒2.0L・DOHCのMIVECエンジンを搭載。このエンジンはミラーサイクル運転は行わない。エンジンには発電モーター(ジェネレーター)が直結され、さらに5速ギヤに相当する駆動用のギヤを備えている。

前後に搭載される2個の駆動用のモーターは永久磁石式同期モーターで、出力はいずれも60kW、最大トルクはフロントが137Nm、リヤは195Nm。またジェネレーターの発電量は70Kwと大出力だ。

床下に搭載されるバッテリーは、リチウムイオン電池で総電圧300V、総電力量は12kWhという能力のもの。バッテリーの容量はピュアEVであるi-MiEVの70%、日産リーフの半分の容量に相当する。ちなみにプラグインハイブリッドのプリウスPHVが搭載するリチウムイオン・バッテリーは4.4kWhで、アウトランダーPHEVのバッテリー容量の1/3だ。これは、プリウスPHVがハイブリッドをメインにしているのに対し、アウトランダーPHEVはその名称通りバッテリーに依存したEV走行がメインであることを意味している。

そのためバッテリーが満充電の場合、EV走行モードで55km以上(JC08モード)の航続距離を持ち、日常の使用はEV走行で完結できることになる。走行してバッテリーの充電レベルが下がれば、帰宅後に家庭用電源で充電することでガソリンに依存することなく使用できるのだ。したがって外出先での急速充電や、エンジンによる発電は、ロングドライブでのみ必要、ともいえる。

ロングドライブ時の走行中に、バッテリーの充電レベルが低下するとエンジンが始動して発電し、バッテリーの充電とモーターへの電力を供給する。その結果、エンジンの使用を含めた航続距離は880km以上(JC08モード)となり、通常のガソリン車以上の航続距離を持つことになる。またエンジンの使用を含む複合燃費は61km/L以上とされている。

アウトランダーPHEVは前後2個のモーターによる4WDシステムであるため、モーターのトルクをコントロールすることで前後駆動力の可変配分も行う。さらに4輪のブレーキを自動制御することで左右輪の駆動力配分(三菱の名称はAYC)、つまりトルクベクタリング
も同時に行う。これは、従来から三菱が開発してきたモーター駆動4WDシステム適用であり、こうした可変駆動力配分により旋回性能、駆動力性能、安定性などを大幅に高めることができるのだ。

今回発表された三菱のPHEVシステムは、駆動用2基、発電用の合計3基のモーターを搭載し、さらに大容量のリチウムイオン・バッテリー、DC-DCコンバーター、前後2基のインバーターを搭載していることを考えると、コストは安くないはずだが、三菱は車両全体のコストを下げることで対応しているという。

アウトランダーPHEVは、三菱としてはi-MiEV、ミニキャブMiEVに続く第3弾であるが、2015年から世界各国の燃費基準が一段と厳しくなることへの対応として、今後の2014年〜2016年までにEV、ハイブリッド、プラグインハイブリッドなどを7車種投入する計画になっているという。

新型アウトランダーはロシア、タイで生産が行われるが、アウトランダーPHEVについては日本での生産で、各国に輸出される計画とされている。

●e-Assist(新型アウトランダーに採用される安全運転支援システム)
「e-Assist」は10月に発売される新型アウトランダーで採用される、安全運転支援システムの総称だ。もちろん今後は他車種へも展開されることになる。

今回、発表されたシステムは、ミリ波レーダーを使用したレーダークルーズコントロール(ACC)、同じくミリ波レーダーを使用した衝突被害軽減ブレーキシステム(FGM)、カメラを使用した車線逸脱警報システム(LDW)の3種類がe-Assistだ。

レーダークルーズと衝突被害軽減ブレーキシステムは、共通の周波数77GHzのミリ波レーダーを使用している。このレーダーは可変ビーム式で、照射ビームを絞ることで長距離(レーダークルーズ)用、照射ビームを広げることで短距離(衝突被害軽減ブレーキ)用として使用される。

レーダークルーズは、全車速追従機能タイプで、渋滞時のノロノロ走行にも対応できる。作動状態はメーターパネル中央のインフォメーション・ディスプレイに表示される。

また衝突被害軽減ブレーキは、ブレーキが遅れた時の警報音と警報表示がされ、それでもブレーキをかけない場合は自動ブレーキが介入し、30km/h以下であれば追突を回避でき、それ以上の速度の場合は衝突被害を軽減できるようになっている。

ただし、レーダー式であるため、対象物の認識はクルマ、大型オートバイ程度までで、自転車や人間は認識されない。これは、システムの普及を促すためにコスト低減を狙い、可変ビーム式レーダー1個で対応しているためだ。

車線逸脱警報システムは、ルームミラー前方のフロントガラス面に貼り付けられたカメラの情報により前方の車線を監視し、クルマは車線を逸脱しそうになるとディスプレイと警報音でドライバーに注意を促すシステムだ。このカメラは雨滴感知式ワイパーとヘッドライトの自動ライトオン/オフのセンサーとしても使用されている。

このe-Assistは、価格を10万円以下に抑え、普及を図るためにシステムの低コスト化をはかることを重視しているのが特徴となっている。衝突軽減システムは各メーカーともに、搭載車種を小型車に拡大することが急務になっており、そのためにいかに低価格化を実現できるかが大きなテーマになっている。今回の三菱のe-Assistはそのトレンドに合わせたシステム構成といえる。

三菱自動車公式サイト

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