ミツビシ ランサーエボリューション・ファイナルエディション試乗記

マニアック評価vol356

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1992年にデビューしたランサー・エボリューション。2015年8月にファイルナルモデルをリリース

あのランエボが遂に、生産終了する。1992年にエボリューションⅠがデビューしてから23年。モデルチェンジも10代目まで育ち、今回のファイナルエディションで最終章となる。その試乗の機会が富士スピードウエイショートコースであり、試乗させてもらった。<レポート:髙橋 明/Akira Takahashi>

ファイナルエディションは2015年8月に発売される。ベースはエボXのGSR 5MTで、こちらにエクステリア、インテリア、そしてエンジンチューンを施したモデルというのがファイナルエディションだ。限定1000台ですでに完売が近いという状況だ。

詳細を見てみよう。気になるのはエンジンチューン。馬力・トルクがアップしているのだ。エボXの300ps/422Nm に対し、ファイナルエディションは313ps/6500rpm、429/3500rpmと約4%の性能向上をしている。

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エボリューションXの300psから最高出力は313psにまでアップされている

ポイントはナトリウム封入式排気バルブによって、燃焼によりバルブに伝わった熱をシリンダーヘッドに逃がし、温度上昇を抑え出力向上につなげている。排気バルブには耐熱許容温度があり、出力が決まっていたが、これによってさらに出力アップできたわけだ。効果は中高速域での性能アップだ。

エクステリアではオプションだがブラックルーフのツートーン、専用フロントバンパーカラー&フードエアアウトレット、専用アルミホイールカラー(BBS)、リヤバッジを装備。インテリアでは、ピラー&天井をブラック化、シート、ステアリング、シフトブーツなどにレッドステッチを採用、専用オープニング画面、シリアルナンバープレートがシフトレバーの近くに貼られている。オープニンング画面は「Final Edition」の文字がエンジン始動のたびに表示される。

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価格は税別398万円で、GSR 5MTよりプラス40万円高い。内容としては、メーカーオプションとなっているハイパフォーマンスパッケージのビルシュタイン製ダンパーやアイバッハ製コイルスプリング、ブレンボ製ブレーキユニット、BBSホイール、レカロシートなどが標準装備され、さらにエンジン出力が向上されているので、随分とお得なモデルでもある。

ボディは全長4495mm×全幅1810mm×全高1480mm、ホイールベース2650mmで搭載エンジンは2.0L直列4気筒の4B11型MIVECターボ+5MTというスペックだ。ちなにみにタイヤサイズは245/40-18。

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◆先端技術のパイオニア
ランエボと言えば、いまではよく耳にするトルクベクタリングの先駆車でもある。92年にラリーフィールドでの活躍を目指しデビューしたエボリューションⅠはエボⅢまでを第1世代としている。第2世代はエボⅣからⅥまでで、この世代がWRCでの大活躍などでブランドイメージを確立し、そして最初のトルクベクタリング技術であるAYC(アクティブ・ヨー・コントロール)を搭載した。

エボⅣに搭載されたAYCはリヤの左右へのトルクをコントロールすることで、ヨーをコントロールし旋回性を高めるという、いまでは手法は異なるが、輸入車のプレミアムモデルをはじめ一般的になりつつある技術だ。これを19年前の1996年に市販車投入しているのだ。

そして第3世代となるエボⅦからⅨでは、ドライバーとクルマの一体感、走りの質感をレベルアップし、海外でも展開をはじめワールドワイドのブランドへと成長した世代だ。そして前後のトルク配分をコントロールするACD(アクティブセンターデファレンシャル)をエボⅦに搭載した。これが2001年の14年前である。

第4世代が現在のエボXで2007年に発売。駆動技術はさらに進歩したS-AWCスーパーオールホイールコントロール搭載へと進化した。AYC+ACD+ABS+ASCを統合制御し旋回性能の向上と合わせて、車両の安定性も高め誰もが気持よく安心して高い次元の走りを楽しめる、新世代ハイパフォーマンス4WDセダンへと成熟したわけだ。このときDCTも搭載している。

ファイナルエディションは、これらの技術も受け継ぎ、長く乗って、持つ喜びを感じてもらいたいということを主眼に置いて開発され、発売されることになった。

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◆ランエボファイナル試乗インプレッション
試乗会にはスーパー耐久でシーズン全戦ポールポジション、全戦優勝という信じられない歴史をランエボで刻んだ中谷明彦/木下隆之組もジャーナリストとして参加し、この日は他にもランエボで大活躍した桂伸一氏やドリキン土屋圭一氏、元ラリードライバー竹平素信氏なども出席していた。

余談だが、三菱自動車はミラージュカップなどでジャーナリストドライバーを数多く育てた経緯があり、上記の中谷明彦、木下隆之、桂伸一、佐藤久実、瀬在仁などなど現在ジャーナリストとして活躍するジャーナリストドライバー育ての親とも言えるのだ。

試乗は富士スピードウエイのショートコース。ランエボに乗るのは2007年のエボXデビューの時の篠ノ井サーキット試乗会以来で、8年振りにランエボに乗ったことになる。コースインしてコース確認しアクセルを踏み込みコーナーへ飛び込む。すると予想以上に回頭性が高く、あわてた。

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予測よりももっとインを向くのだ。最近のトルクベクタリングの付いたモデルやコーナリングブレーキでヨーコントロールするモデルにも数多く試乗してきたが、それ以上の旋回性と言っていい。設定は「Tarmac」「Gravel」「Snow」とあり、最初はターマックをチョイス。

最も敏感にヨーコントロールが働く設定と言っていい。タイヤの舵の方向とスロットル開度などから前後のトルク配分が最適化され、リヤのアウト側タイヤへどんどんトルクが伝えられている。だから、準備していない気持ちもあり、身体や頭、目線が外側に置いて行かれた瞬間を味わった。

「こんなに曲がったっけ?」と自問しながら、アクセルを踏み、ハンドルを切った。出力向上のポイントについては、エボXオーナーに評価してもらいたい。ただ、6500rpmまでストレスなく滑らかにまわり、シフトもシャキッとギヤボックスに収まるので、軽快に走れる。

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身体も慣れたところでターマックからグラベルに変えてみる。そしてスノーも試す。この違いは結果的にヨーの出方が変わるので回頭性が弱まっていく。このスノーモードの時がいわゆる普通のコーナリングだと感じるほどで、ドライバーの予測どおりにアンダーやロール、回頭性を感じた。

それほどランエボのS-AWCは戦闘機能が高く、ドライバーの技量を超えてもクルマは安定して、速く走れる。ハンドルを切ってアクセルを踏めばアンダーはエボが消してくれるし、ロールしている間にヨーが追い越し、コーナー出口へと姿勢を変えてくれる、という凄い武器を手にした試乗だった。短い時間ではあったが、とにかくアクセルを踏み、ハンドルを切ってファイナルエディションを存分に楽しませてもらった。

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そうそうたるメンバーが試乗会に参加。右から桂、木下、ミツビシ広報・中村氏、中谷

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