2016年5月18日、ミツビシは国交省に4回目の報告書を提出した。この報告書では、これまで判明した事実に加え、社内調査により第一性能実験部が実験業務委託子会社の三菱自動車エンジニアリング(MAE)に業務を丸投げする一方で、商品企画会議で決定された「目標燃費を達成するのは難しい」と認識しながらも、MAEの計測結果を検証・確認することなく、プロジェクトの遂行を優先させたとしている。
ミツビシの国交省に対する4回目の報告書では、商品企画会議での目標性能を完遂することが第一義的に優先され、また時間、工数的に後戻りができない最終段階のタイミングで、走行抵抗値の中央値ではなく下限値として処理したことが明らかになった。
また、これまで意図的に軽自動車4車系の走行抵抗値の低い値を申請したという報告がされてきた事実以外に、他の車種にいても、走行抵抗値を高速惰行法で計測し、試験実施日や天候条件の記載も正確ではなかったり、さらにRVRは走行抵抗を実測せず他車種のデータを元にした机上計算だったこと、パジェロ・ガソリン車は過去のデータから転がり抵抗や空気抵抗を恣意的に流用した机上計算による走行抵抗値だったことも判明した。
そしてアウトランダーPHEV、デリカD:5 、パジェロ、RVRは過去のデータをベースに、性能をアップデートした分を補正値として机上計算し、走行抵抗を算出していたことも明らかになった。
つまり、走行抵抗の計測が日本で規定された惰行法ではなく高速惰行法であったという以外に、多くの車種において机上計算された走行抵抗が型式認証に使用されていることが明らかになったのだ。
なお、1991年から走行抵抗の計測は法律により「惰行法」と定められたが、なぜかミツビシは一貫してアメリカ式の高速惰行法を採用し続けている。その理由、経緯は社内だけでなく退職者を含めた聞き取り調査でも不明だ。
eKワゴン、eKスペースなど軽自動車のみならず、他車種でも机上計算、過去のデータの流用などが幅広い車種で行なわれていたのは、様々な背景が考えられる。燃費性能の下地になる走行抵抗の計測はいわば開発の舞台裏の作業で、こうした地道な計測作業は、開発会議でのメインテーマとして上がらなかったこと、開発日程や工数の短縮に加え、開発プロジェクトにおいて燃費性能が必達目標とされるその圧力は開発チームの末端にじわじわとのしかかったことも想像できる。また開発の節目で行なわれる、各部門が開発状況をチェックするための開発会議が正常に機能していなかったことも原因ということができる。
こうした結果を受け、相川哲社長(COO)、開発担当の中尾龍吾副社長は、6月24日に開催される株主総会で辞任することが決定した。後任の社長は未定だが、開発担当の副社長は日産から派遣されると見られている。