【試乗記】マツダ・デミオ プロトタイプ試乗記 期待に胸膨らませ… レポート:髙橋 明

マニアック評価vol280

デミオ・プロトタイプ サイドスタイル
新型デミオのプロトタイプに試乗した。スカイアクティブシリーズはいつも乗るたびに胸が躍る

マツダのスカイアクティブ続弾。コンパクトカークラスデミオの試作車であるプロタイプに試乗したレポートである。

通常メディア向けに試乗が許され、レポートができるのはプロトタイプとはいえ、量産試作車のケースがほとんどだが、今回はさらにその前段階での試乗だと説明を受けた。試乗は2014年6月中旬で、このレポートが掲載されるほぼ1ヶ月前。クローズされた専用の場所での試乗だ。

◆ポジショニング
新型デミオはBセグメントと言われるコンパクトの量販クラス。ライバルとなるモデルは国内ではアクア、ヴィッツ、フィットなどで欧州であればポロ、208、クリオ(ルーテシア)、フィエスタなどである。

求められる性能には、多くの人が運転がしやすく、省燃費であること、そして価格も手頃であることで、その中でどれだけライバルにはない個性と性能の高さを持てるか?という高いハードルのあるクラスだ。詳しい車両概要は、こちらを参照してほしい。

新型デミオ デザインコンセプト

開発の目標とされるベンチマークに特定のモデルはなく、性能の部位によってライバルを特定し開発してきていると開発主査の土井歩氏は言う。強いて言うならアテンザ、アクセラらのラインの中で、そのラインから外れないクルマ造りを目指したとも語る。そして掲げる目標は「クラス概念を打ち破る」というのがキーワードだ。

新型デミオのデザインは「魂動」デザイン。これまでのCX-5やアテンザ、アクセラと同じコンセプトデザインで、5ドアのハッチバックスタイルは、これらの流れと同じ流れであることは一目瞭然。豹が走り抜けるとき、最も体を小さくした時の力感イメージをモチーフにデミオはデザインされているという。

マツダ デザインコンセプトDSCN9571

走りと燃費においてはスカイアクティブGの1.3LガソリンエンジンとスカイアクティブDの1.5Lディーゼルターボという2種類のエンジンに、ATとMTがそれぞれ組み合わされる。ただしガソリンには5MT、ディーゼルには6MTがセットされATはともに6速ATだ。また4WDは各エンジンのATモデルに設定さるが、それ以外はFFモデルとなっている。

マツダ 新型デミオ フロントスタイル
新型デミオのプロトタイプ、4WD以外の全タイプに試乗できた

◆インプレッション
試乗できたモデルはラインアップされるFFモデルのすべてで、4WDのみ試乗できなかった。

マツダの近年のクルマ造りには「走り」に対する強い拘りを感じる。人馬一体というスローガンを掲げ、意のままに操ることの楽しさを訴え続けている。それはロードスターがそうであったように、スカイアクティブ戦略にシフトしてからも変わらず、運転が楽しいクルマ造りを目指している訳だ。

そのハンドリングへの拘りだが、試乗してみるとガソリン、ディーゼルともにハンドリングへの拘りが伝わってくる仕上がりだった。それはパワーステアリングの制御や微小舵角時のクルマの動き、リヤサスペンションの追従性、シートポジションなどなど、レベルの高いものだと思う。

ガソリンとディーゼルモデルではステアリングの重さやフィールが異なるものの、どちらもいい印象だ。ガソリン車は軽く、特に駐車場での切り返しなどでも軽く、女性でも抵抗なく操作できるレベルで調整してきている。走行中の操舵でも正確に反応し、国産のエントリークラスになるとみられる応答遅れなど一切ない。

一方、ディーゼルはやや重くしっかりとした印象になる。ステアリングの太さも装備の違いでレザー巻きになり、高級感もプラスされる。一気にスポーティ度が増し、次期デミオのトップグレードはディーゼルであるのは間違いない。つまり、燃費も良く走りもよくお薦めのモデルはディーゼルである、と主張しているようだ。

新型デミオ インパネ ダッシュボード
高級感のあるインテリア

また、車内に乗り込んだ時の印象がモデルによって異なるのは気になった。つまりグレードによる違いに比例するのかもしれないが、おそらくトップグレードとなるディーゼル6ATは見た目の印象以外からも高級感や質感の高さは感じられるが、ガソリン車からはそこまでの印象はない、ということ。

防振や防音など吸音材の量や配置などが異なることから、ドア閉め音、静寂な室内から感じる外の騒音の入り方などが異なる。インテリアに使用される素材違いによる影響もあるかもしれない。原因は特定できないがハンドリングでは、エントリーグレードとトップグレードでの違いはあるものの(勝手にグレード分けしているが…)、プロダクトの持つ性格にあったレベルに仕上げられているのだから、乗り込んだ時の印象でも「お! デミオらしい」というイメージは共通であって欲しい。それはスタティックでもダイナミックでも印象は同様だった。

新型デミオ インテリアフロントシート新型デミオ インテリア リヤシート

エンジンでは新開発の1.5Lディーゼルターボの扱いやすさはこれまでの2.2Lと同様で、トルクフルで気持ちよく、ガソリン車のように静かで滑らかだった。タービンは2.2Lのツインターボとは異なりシングルターボで出てきた。

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新型デミオは1.5Lディーゼルと1.3Lガソリンエンジンをラインアップする

1500rpmで最大トルク250Nm を発揮するのだから乗りやすい。ちなみに6MTは220Nmで少しトルクを抑えている。またパワーはAT/MTともに105psとなっている。このディーゼルは自然吸気2.5Lに匹敵するトルクを発生するため、このクラスのクルマとしては異例なほど動力性能は抜き出ている。アイドリングストップも装備し、低回転で走る姿は容易に燃費の良さを想像させる。具体的な数値は未発表だが、実用燃費に自信があるという開発陣の言葉が印象的だった。

ガソリン車のスペックは1.3Lの自然吸気で92ps/121Nmという数値。最高出力は6000rpmというNAらしいデータだ。アクセルレスポンスも軽く、軽快でエンジンは気持ち良く滑らかにまわる。しかもレッドゾーンまで一気に回る。上まで回ることを開発目標の一つだったという開発陣の言葉通りの仕上がりだ。ただし4000rpmを超えたあたりからの加速感は鈍るので、スポーツエンジンのように高回転を楽しむと言うわけにはいかない。当たり前だ。しかしながら、このクラスのエンジンとしてはザラつきが少なく、滑らかさが突出しているとは言えるだろう。

こうして試乗を終えトータルで眺めてみると、CX-5、アテンザ、アクセラと続く、そのベクトルに乗ったデミオへの期待は大きい。先行したモデルのネガな部分はどんどん消化され、よりいいものへと変わっていくからだ。

「デミオ」というモデルの中でグレードや装備の違いによる差異が気になるというまとめになった。とはいえプロトタイプだけに、細かな部分のレポートは難しい。市販までに変更される可能性もあり、間違った印象を持ってしまう可能性もある。したがってやや消化不良気味だが、大きく変更のない部分だけをレポートしてみた。

新型デミオ主要諸元(プロトタイプ)

マツダ公式サイト

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