2017年9月14日マツダの国内フラッグシップモデルとなる新型CX-8が発表された。発売は12月14日だが、これに先立ち、事前にCX-8の詳細な説明会があった。
CX-8は3列シートのクロスオーバーSUVというカテゴリーで、マツダの新世代商品群の中で最もボディサイズの大きいモデルになる。国内向けSUVラインアップにおけるフラッグシップモデルという位置づけで、多人数乗車という特徴を持つモデルだ。
■ポジショニング
多人数乗車が特徴ということは、ライバルはミニバンになる。もちろん、ミニバンが持つボックスとしての、スペース、広さ、高さなどの魅力は別として、人を乗せるためにミニバンを購入しているユーザーも多いはずだ。そんなユーザーにはピッタリの商品だといえよう。
マツダの小飼社長兼CEOも「新しいライフスタイルを求めるお客様とともに、新しい市場を作っていきたい」という意気込みを語っている。新しい性格を持つモデルで新しいマーケットを切り開き、アーリーアダプターへの訴求をしっかり行ない、いずれメインマーケットへと変化させていきたいという狙いがあるモデルだ。
ミニバン同様、多人数乗車が可能で、積載能力も高い性能を持ちながら、走りの楽しみ、快適性ではミニバンを上回るSUVとして注目してみたいモデルだ。
つまり、国産モデルでは日産・エクストレイル、スバル・エクシーガ、あたりが比較されると思うが、ボディサイズとしてはCX-8が大きい。トヨタ・ランドクルーザー/プラドだとボディサイズではライバルになるものの、車両価格帯が異なり選択肢としては上がってこない。さらに、輸入車ではBMW X5、レンジローバー・ディスカバリーなどがあるが、価格帯が大きく異なってくる。
新型CX-8のボディサイズは全長4900mm×全幅1840mm×全高1730mm、ホイールベースは2930mmの7人乗りとなっている。プラットフォームは北米等で販売されているCX-9と共通だ。
319万6800円から419万0400円(税込み)という価格帯で、FFとAWDモデルがある。搭載するパワーユニットは2.2Lのディーゼルターボのみで、6速ATとの組み合わせになっている。WLTCモード燃費ではベストな数値を出すグレード、XDの2WDで見ると、市街地モードが12.7km/L、郊外モードで15.7km/L、高速道路モードで18.0km/L。JC08 モード表記では17.6km/Lとなっている。2トン級の重量モデルとしては立派な数値だろう。
■ユーティリティ
3列目まで大人が乗れる居住性、無理のない乗降性、多目的に使える収納、荷室スペースというのが開発目標で、使いやすさと快適で上質な空間の両立を追求している。運転席は言うまでもなく、マツダのドライビングポジションへのこだわりは引き継がれ、理想的な運転姿勢がとれるポジションとしている。
2列目は大柄な人でもくつろげるスペースがあり、3列目は身長170cmの人が無理なく快適に過ごせる空間というサイズを実現している。2列目はキャプテンシートタイプとベンチシートを設定し、キャプテンシートタイプには大型のコンソールボックスの装備も可能。
荷室容量は3列目まで使用した状況で239L。A型ベビーカー、ゴルフバック2個搭載できる容量を確保。3列目シートを倒すと572Lになり、さらに荷室トランクボード下には307mmの深さを備えたサブトランクもある。
■2.2Lのディーゼルターボのパワートレーン
SKYACTIV-D2.2を搭載するが、エンジン本体も大幅改良が加えられ出力がアップしている。CX-5に搭載する同型のエンジンが170ps/420Nmなのに対し、CX-8では190ps/450Nmに向上している。ポイントは急速多段燃焼という燃焼コンセプトで、そのために段付きエッグシェイピングピストン、超高応答マルチホール・ピエゾインジェクター、2ステージの可変ジオメトリーターボを採用している。これらに伴い、圧縮比は14.4にアップしている。
ピストン形状をエッグシェイプ形に変更し、燃焼を変更している。あらかじめ混合気を作るプレ噴射を行ない、メイン噴射でクリーンな燃焼をさせ、アフター噴射で燃え残りを燃焼させる多段燃焼としている。具体的には最大6回の近接噴射で上死点付近で連続燃焼させて燃焼期間を短縮。
ピストン形状では、中央部が盛り上がった形状のエッグシェイプで、くぼんだ形状部に燃料が付着しないように最適化。またスキッシュエリアの段付きで、混合気の流動を抑制して壁面に伝わる熱エネルギーロスを防いでいる。そして超高応答のインジェクターは10個のマルチ噴口タイプでメイン噴射も多段化し、燃焼期間を短縮させている。ターボでは、大小のツインターボのうち大きいほうを可変ジオメトリー化しており、低速域から素早く過給圧を発揮することで、応答性を上げている。
そして従来からのダイナミックバランスを利用したナチュラルサウンドスムーザーにより、ノック音を低減し、周波数コントロールをさらに綿密に調整することで、さらに効果を上げているという。そしてアクセル応答にも影響するDE精密過給制御をすることで、快適な走り、期待値通りに走る性能を手にしている。
■シャシー
マツダのAWDはi-ACTIV AWDの名称で27個のセンサーを用い、フィードフォワード制御を行ない、またデフにボールベアリングや低粘度オイルの採用などで、エネルギー損失、機械摩擦損失を低減している。もちろん、マツダが開発した新制御システムG-ベクタリングコントロールも装備され、乗員全員が快適に過ごせる乗り心地を確保している。
ステアリングではコラムアシストの電動パワーステアリングのギヤブッシュの硬度をあげ、よりリニアなフィールになる工夫をしている。サスペンションでは、フロントにコーナリング時に浮き上がるロール挙動を抑えるために、リバウンドスプリングをフロントダンパーに採用している。
ブレーキではフロントに17インチベンチレーテッドディスク、リヤは17インチソリッドディスクブレーキを採用。確かな効きと高剛性を狙っている。また、電動パーキング(EPB)を全車標準装備した。ストップ&ゴーの多い市街地で、停車時にブレーキペダルから足を離しても停車状態を維持でき、また、アクセルを踏み込めば自動解除するブレーキを搭載した。
■NVHと安全
車内での会話明瞭度をあげるために、特に3列目を考慮してリヤフェンダーパネルに制振材の採用やフロントストラットにダイナミックダンパーを設定し、共振をコントロールする工夫がある。また風切り音の低減のために、リヤリフトゲートにパーティングシールやルーフレールの形状が空気の流れを乱さない形状にするなどとして3列目の静粛性を向上させている。
遮音性ではCX-5の時にもレポートしたが、反射音の研究により吸音効果の高いトップシーリングを採用して、室内の吸音性を高めている。またDピラー付近に吸音材を設定することで、3列目の乗員の耳に入る音を抑制している。
安全の分野ではマツダ プロアクティブ・セーフティに基づき、360度モニターを含め危険認知、運転支援、衝突回避支援、被害軽減のすべての領域でアクティブ、パッシブセーフティを開発している。
360度モニターでは4つのカメラを活用して、画像処理を行なうことで俯瞰からの画像が表示され周囲を認識できる。車庫入れはもちろんブラインドのT路地への進入や狭い道でのすれ違いなどのときに、死角や障害物との距離を目で確認することができる。
特に効果を期待したのは、アダプティブ・LEDヘッドライトで、12個のブロックに分割されたLEDを個別に点消灯して照射範囲を自動でコントロールする機能だ。防眩ハイビームやワイド配光ロービーム、光軸の上下自動で切り替えるハイウエイモードなど夜間走行時の視認性を高める認知支援サポートシステムを搭載している。(XD PROACTIV、XD L Packageに標準装備)
他にもブラインドスポットモニタリング(BSM)やレーンキープアシストシステム(LAS)車線逸脱警報システム(LDWS)、マツダ・レーダークルーズコントロール(MRCC)、ドライバーに休憩を促すドライバー・アテンションアラート(DAA)、アドバンスト・スマート・シティ。ブレーキサポート(アドバンストSCBS)、AT誤発進抑制制御(前進時/後退時)、スマート・ブレーキアシストなどが装備される。