エンジン内で何が起こっているのか
一般的にこれまでは、リーン燃焼させると省燃費にはなるがトレードオフとして、トルクが出ない。だからターボやモーターなどでトルク不足を補っていく、というのがリーン燃焼エンジンでは見られる技術だ。しかし、スカイアクティブXはオルタネーターを駆動モーターとする装備をしているだけだ。しかも24Vでマイルドハイブリッドではあるが、4.8kW(6.5ps)と出力は小さい。
スカアクティブXの燃焼は全域でリーン燃焼するわけではなく、通常燃焼+ミラーサイクル(高負荷時)、大量EGRを使っての燃焼、そしてΛ2(ラムダツー)と言われる大量の空気を送り込んでのリーン燃焼という、3段階がありその燃焼の切り替えによりトルク不足を感じさせないというシームレスな燃焼でトルク不足を補っている。
ちなみに、このΛ2の領域にするために、スーパーチャージャーを利用し大量の空気をシリンダーへ送り込んでいる。マツダではこれを「高応答エアサプライ」と呼んでいる。
つまり、高負荷域では通常燃焼するので、力不足の心配はない。そこから低負荷へと変化していく中で燃焼の切り替えが行なわれている。車載のナビゲーションモニターには燃焼状態を示すアイコンがあり、通常燃焼している時は4つのピストンの絵が赤く表示され、リーン燃焼になるとグリーンになる。
発進時などの高負荷では赤くなり、アクセルを踏み込んで加速させるころにはグリーンになっているのだ。ワインディングを気持ちよく走行しているときも、ほとんどグリーンが点灯しておりリーン燃焼していることがわかる。ただしEGRをつかったG/F(A/Fに対するマツダの呼び方)、とΛ2の違いまでは表示されない。
このグリーン表示されているときがSPCCIというスパークプラグを使った、マツダ独自の燃焼方法でリーン燃焼させている領域というわけだ。
そしてスカイアクティブGよりもギヤ比は約7%程度ローギヤード化をし、最終減速比ではスカイアクティブGが4.0、Xが4.3という数値から分かるように、ややギヤ比を低めて加速力を補う工夫がある。
スカイアクティブXの価値
特筆すべきは、このスカイアクティブXエンジンは、非常に滑らかに回り、ガソリン車と同じ6800rpmがレッドゾーン。そこまで一気に滑らかに回るのだ。この環境性能を追求したエンジンなのに、ガソリンエンジンと大差ないフィールで吹け上がり、走らせることができる。これこそスカイアクティブXの価値と言える。
さらに、自己着火つまりディーゼルのような燃焼の領域があるため、ノイズや振動といったものがあるはずだが、車内にいる限りガソリン車とそう大差ない。ややエンジン音が太い音がするという程度の違いなのだ。
したがって、ワインディングのような場所でも滑らかで、静かに走りながら、スポーティな走行が可能で、どの領域でも滑らかさを失っていないのだ。前述の乗り心地の良さや操舵フィールの気持ち良さに加えてエンジンも滑らかで力強さも感じられる。それでいて環境性能が高いということになる。つまり環境性能を追求しながら運転して楽しいエンジンというのがスカアクティブXの正体だ。
なお、燃費に関しては今回の試乗ではデータ取りをしていないので、マツダが公表しているデータをお伝えしておく。燃費データは今回の試乗場所でマツダのドライバーが公道走行して記録したデータで、車両はFF/ATハッチバック、タイヤサイズは同じだ。その結果ガソリンが15.1km/L、スカアクティブXは18.2km/Lという結果になっている。燃費差は21%だ。
マツダの主張
これほど進化した新型マツダ3は「アクセラ」の後継モデルで、グローバルで使われていた「マツダ3」という名称が国内でも使われるようになった。そのマツダ3はスカイアクティブの第2世代となる最初のモデルだ。車両サイズは全長4460mm、全幅1795mm、全高1440mm(セダンは1445mm)、ホイールベース2725mm。
さらに、マツダの主張を感じるのが、このスカイアクディブXには6速マニュアルトランスミッション搭載モデルがラインアップしていること。それは「運転が楽しいぞ!」というメッセージだ。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>