なんでも微分するマツダ
そしてステア操作では気持ち良さまで加わってくる。「ライントレース性」とか「期待どおりに動く」といった操舵性能に加えての印象なのだ。プレミアムモデルにとっての当たり前性能に、プラスされるもう一つの性能をマツダは「感性性能の熟成」を付け足しているわけだ。つまり「気持ちよさ」や「運転の楽しさ」だ。
もともとドライビングポジションへのこだわりやペダル配置といった基本レイアウトをとても重視するクルマ造りのメーカーだが、その上に感性性能をプラスした。その感性性能、つまり人が感じるフィーリングを数値化し、MBD(モデルベース開発)で作り上げている。なんでも微分するマツダらしい、新しい領域へ踏み込んだ性能だと言えよう。
なぜ、こうした試乗フィールが得られるのか、エンジニアに聞いてみた。すると、これまで背反性能とされる領域のものを、「統合した考え方」にすることで両立できることが見えてきたのだ。
人間だってサスペンション
乗り心地とダイナミック性能の両立は難しいというのは常識だ。ハンドリング性能をあげれば高い減衰力が必要になり、乗り心地では「硬い」ということになる。その両立がこれまでのクルマづくりにおいて難しいとされている部分だ。
マツダ3では、人間がどう感じるのか?という「人間中心」の乗り心地とダイナミック性能の追求から両立を目指したのだ。
コーナリングをするとき、車両姿勢としてはブレーキングと加速によってピッチングが起きている。また、旋回ではコーナリングフォースが発生し、車両の動きとしてロールとピッチング、そしてヨーモーメントを感じているわけだが、マツダ3ではそうしたGや動きをあまり感じない。
その秘密は、ドラポジにおける骨盤の位置を正しく立ててあげるポジションにすることで、人間自身がサスペンションの働きを無意識にできるという能力を使っているということなのだ。つまり制御や機械での性能と人間の本来持つ能力を統合して、クルマの乗り心地をつくるという考え方だ。
もちろんマツダ3も、横Gや前後Gは発生しているが、それをどこで減衰していくのか?という視点でみると、まずタイヤでの減衰があり、ダンパー、スプリングなどのサスペンションがある。そしてシートでも減衰できるパーツということになる。加えて、人もプラスするというわけだ。
運転が楽しくなるマツダ3
コーナリングGが発生すると、人は目線を旋回方向へ向け、外側にGがかかりシートのサイドサポートによって支えられる。このとき、人は横Gを全身で感じている。マツダ3に搭載する新設計のシートでは骨盤を立てることで背骨のS字カーブの歪みを減らし、つまり人間で減衰することができ、結果、頭の位置はあまり動かない。だから視線の動きは小さく、横Gを感じにくいというわけだ。さらにタイヤへの設置荷重をコントロールするGベクタリングプラスの制御も加わり、前述したような試乗フィールが得られるという理屈だ。
この感覚に慣れてくるとドライバーは、クルマが曲がっていくことをすごく簡単に感じる(理解する)ことができるので、どんどん高い速度で走りたくなるのだ。さらに、車両コントロールが上手にできているという気持ちにもなる。まさに、「運転が楽しい」と走れば走るほど感じてくるのだ。
スカイアクティブXの訴求ポイントはここ
注目のスカイアクティブXは当Webサイトでも技術解説をしてきているが、いよいよ、公道で走行できる機会となったわけだ。
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簡単に注目ポイントを先に伝えると、スカイアクティブXは、リーン燃焼させて環境負荷を軽減する環境エンジンという位置付けだ。つまり、省エネエンジンは「つまらない」ものというのが、これまでの常識。パワーもなくレスポンスも悪い、およそスポーツドライブとは無縁というイメージがあると思う。
だから、その環境性能を追求したエンジンがどこまで、通常燃焼するエンジンのように走れるのか?というのが簡単に言えば、スカイアクティブXの訴求ポイントになる。