マニアック評価vol136
2011年の東京モーターショーでコンセプトカー「雄(TAKERI)」として発表された次期アテンザ(欧州名マツダ6)のデビューがいよいよ近づいてきた。そして、2012年10月6日より予約受注が開始され、価格は250万円〜340万円と発表された。デビュー前の2012年9月中旬に一般公道である箱根ターンパイクを貸切り、一部メディア・ジャーナリスト向けの事前試乗会が開かれたので、早速、その時の模様をお伝えしよう。
マツダから発売される新型車は新技術の総称であるスカイアクティブが投入され、デザインテーマは「魂動(こどう)」をベースにしたデザインが投入される。平たく言えば、デザインのカッコいいクルマであり、走る歓びが得られるクルマがこれからのマツダ車であるというメッセージがこめられているわけだ。
さて、その実際だが、用意されたモデルは、2.0LガソリンNA+6ATセダン、2.5LガソリンNA+6ATガソリン、2.2Lディーゼルターボ+6ATワゴン、2.2Lディーゼルターボ+6MTセダンというラインアップ。いずれもプロトタイプであり、量産試作という段階での試乗会だった。とはいえ、既に詳細なスペックは発表されている。
まず、モデルラインアップはセダンとワゴンのFF2モデルで、グローバル戦略車としてワールドワイドに販売が予定されている。搭載するエンジンも2.0Lと2.5LのNAガソリンと2.2Lのディーゼル+ターボ、そして6AT&6MT(国内ではディーゼルのみ)という組み合わせになる。ボディサイズはC、Dセグメントサイズでセダンが全長4860mm×全幅1840mm×全高1450mm×WB2830mm、ワゴンは全長4800mm×全幅1840mm×全高1480mm×WB2750mmで、全幅以外のサイズが異なり、ホイールベースのサイズも異なっている。
↑↑左が新登場の2.5Lスカイアクティブガソリンエンジン。右は2.2Lのスカイアクティブディーゼル+ターボエンジン
試乗は前述したモデル全てを試乗している。2.2Lディーゼルターボの6MTセダンのマニュアルは、国内初登場のスカイアクティブ・マニュアルトランスミッションが搭載されている。これまで、ロックアップ領域の広いATはデミオから始まり、アクセラ、CX-5と試乗してきたが、マニュアルは初めてだ。
↑↑左は6AT。ロックアップ領域を拡大した、ダイレクト感のあるトルコンAT。→ディーゼルには6MTが設定された
マニュアルシフトへの新技術とは何だ?という疑問は別の機会での解説となろうが、結果的にフィーリングを向上させていることは感じられる。シフトストロークもほどよい距離で、シフトフィールはしっとりとした上質感がある。適度な手応えがあり、クラッチペダルは軽い。ミドルクラスのセダンに相応しい感触ではないだろうか。すなわち、各ギヤともに滑らかにシフトできるのだ。
エンジンの2.2Lディーゼルターボは175ps/4500rpm、420Nm/2000rpmのスペックで、セダン、ワゴンともに共通のスペック。低速からのトルクが太く、そしてなにより、レスポンスがいいことに驚く。スカイアクティブ6MTは箱根のワインディングを楽しく走れるのだ。軽めのクラッチをミートさせ走り出すと、低速トルクが太いから力強く動き出す。4500rpmで最大出力を出すようにディーゼルとしては高回転までエンジンは回る。ガラガラというかつてのディーゼル音ではなく、力強い音で高周波の好きな部類のエンジン音がする。
あまりに楽しく反応するディーゼルに、つい、ディーゼルであることを忘れ、ブレーキングしながらヒールで軽くアクセルをあおれば、ちゃんとレスポンスする。クルマに詳しくない人ならディーゼルエンジンと分からないエンジン音とレスポンスだと言える。各社の環境対応ディーゼルにも試乗してきたが、マツダのスカイアクティブ・ディーゼルは環境だけでなく、走ること、楽しいことが前提のディーゼルであり、明らかにアドバンテージのあるディーゼルと言えるだろう。欲を言えば欧州車のように、半クラッチがもう少し分かりやすく味付けしてあると、より楽に感じることができる。
ハンドリングでは、ステアリングの切り始めや切り戻しにこだわって開発した、と繰安性開発部の竹下氏は説明する。ワインディングでのコーナー進入時に少しの切り始めで、車両はわずかに動く。その度合いが調度いい。少しの操舵で大きく動くと疲れるし、逆にクルマが反応しなければ楽しくない。そのバランスに拘って開発しているのは、クルマ好きには大歓迎で、一般ユーザーは、素直に動くクルマには乗りやすい、という印象を持つことだろう。
コーナーリング中、切り増しをしていくとヨーモーメントがしっかり感じられ、回頭性が高まる。そのため、安心感が強く持てるので、より高速で走りたくなる衝動に駆られるほどだ。ただし、セダンとワゴンではそのフィールに少し違いを感じた。これはホイールベースの長さの違いが影響しているのではないか。同じように回頭性は高いがワゴンではアンダーステアを予測しながらコーナーリングをするという感じだ。
さて、そのワゴンだが試乗車には同じ2.2Lのディーゼルターボに6ATの組み合わせは、ロックアップ領域が広いため、レスポンスが良く、マニュアル操作でもDモードドライブでもストレスはない。ディーゼルにATだと、走ることより燃費だったり、CO2削減を気にしたりということでチョイスするかもしれないが、マツダの目指す走る歓びは十分味わえるだろう。まだ、Dレンジのままで急減速すれば、わずかにブリッピングしながらダウンシフトが行われる。このあたりは、もっとはっきりとブリッピングをつくれば、スポーツをイメージさせるアイテムになるのではないかと思う。
一方、新登場のレギュラー仕様2.5LガソリンNAエンジンは、こちらのエンジンフィールはディーゼルの力強さとはことなり、より滑らかなしっとりした方向のエンジンで、静かさからくる上質感をつくっているように感じる。エンジンのパンチもしっかりあり、188ps/5700rpm、250Nm/3250rpmというスペックに不満はない。出来のいいディーゼルと悩めるほどグッドフィーリングだった。
アクセラのときに(もっともサーキット試乗だったが)、レッドゾーン付近でのATレスポンスがいまひとつ遅いように感じたが、今回は特に感じることはなかった。また、マニュアルモードのときは、そのレッドゾーン付近ではすぐにシフトアップをせず、スロットル開度を監視しギヤをキープするような制御が新たに加わっているということだ。(パワートレイン開発部 山根義昭氏)
2.0Lガソリンでも箱根のワインディングを走るには十分なパワーとトルクだと感じた。155ps/6000rpm、196Nm/4000rpmというスペックで、レギュラーガソリンを使用する。静かな2.0Lエンジンは経済性も高く、乗り心地もよかった。試乗車の中で唯一17インチ装着車で、他モデルは19インチを装着していた。
新型アテンザには18インチが設定されず、17インチと19インチのいずれかになる。その違いは明らかに差があり、17インチはソフトで全体がマイルドになる。今回の試乗では2.0Lガソリンに設定された17インチは全体的にまとまりがあった。とはいえ19インチも乗り心地は良く、締まったフィーリングが17インチにプラスされるイメージだ。ただ、欧州のプレミアムセダンが持つ剛性感やまとまり感という部分では、違いがあるものの、コストで解決できるという期待が膨らんだ。次に期待するのは軽量でありながら、高い剛性感があるモデルだ。もっとも、素材が代わり、われわれも剛性感の捕らえ方が変わってくるのかもしれない。
今回の試乗ではプロトタイプ試乗ということで、ファーストインプレッションをお届けした。詳細な情報や、完成車でのインプレッションなどは正式発表されてからの報告を待ちたい。
↑レポートは編集部タカハシ