今マツダに何が起きているのか? スカイアクティブX誕生の背景とは? 1/5

雑誌に載らない話vol206

マツダ次世代技術徹底考察2017 vol.1/5

2017年10月上旬、マツダは注目のスカイアクティブXを中心とした次世代技術の説明会を行なった。技術説明の前段として、マツダの考える地球環境、社会問題への対応、そしてクルマを通じて豊かな人生を柱とする目標があり、これらの目標を達成するために新しい技術に挑戦しているという、コーポレートビジョンを聞くことができた。

マツダ スカイアクティブX 試験車 走行イメージ
次世代技術を搭載した試作車をテストコースでドライブした

マツダの商品戦略として規模を追うのではなく、ユーザーとの絆の深さで世界一を目指すという。そのために、マツダのコーポ―レートビジョンには、クルマを通じて人生を豊かにし、永続的に地球や社会とクルマが共存し、どんなことにも独創的な発想で挑戦し続けるということを掲げている。

マツダ Zoom-Zoom宣言2030 説明イラスト
Zoom-Zoom宣言2030は人と地球と社会をテーマに取り組む宣言

そうした想いを表現するキーワードが「Zoom Zoom」で、未来永劫続けなければならず、「サスティナブルZoom Zoom宣言」と発しているわけだ。そして2017年8月に2030年に向けて地球、人、社会の調和を目指すためのサスティナブルZoom Zoom宣言を小飼社長が行なっている。

こうしたコーポレートビジョンに基づき、大きなスキームを作ることで目の前の課題にもぶれることなく取り組めるというわけだ。その具体的な課題が、地球環境の抱える問題や、交通事故なのど社会問題、そして人そのものが幸せな人生をおくるために、ということにクルマを通じて、技術を通じて取り組んでいるということだ。

■CO2削減への挑戦

マツダ Zoom-Zoom宣言2030 CO2削減イメージ

課題解決へのアプローチは、ライフサイクル全体でのCO2削減でWell to Wheelの視点でCO2削減に取り組む必要があると考えている。自動車メーカーとして、Tank to Wheel(走行時のCO2排出)ではなく原油からクルマで消費するまでに生成されるCO2削減を言及していることは称賛できる。

マツダ Zoom-Zoom宣言2030 CO2削減目標

その具体的な目標は、2010年を100とした場合、2030年で-50%、2050年で-90%の企業平均CO2の削減を目指すとしており、マツダの予測では2035年時点でも、85%のクルマが何らかの形で内燃機関を使っている、と予測している。つまりCO2削減には内燃機関の改善が必要であるという結論をだしているのだ。

そこでマツダは内燃機関の理想を追及し世界NO1を目指すとしている。そして、その先には理想を追求した内燃機関に効率的な電動化を組み合わせることも視野にある。また、クリーンエネルギーで発電できているとか、大気汚染がある地域には、電気自動車など電気駆動技術を展開する必要があるとしている。

マツダ Zoom-Zoom宣言2030 内燃機関によるCO2削減

現在のEV車の電費と、ガソリン車の燃費で排出されるCO2量をマツダは独自に算出している。スカイアクティブ-Gの燃費であれば、現在の石炭、石油による火力発電から排出されるCO2より、すでに少ない、もしくは同等という試算があり、そのデータに基づき内燃機関のさらなる効率向上という道筋を歩んでいるわけだ。

つまり、電気を作るよりガソリン車のほうが環境に貢献しているし、この先も有利である、ということだ。だから、クリーンエネルギーで発電ができていれば、EV車の投入は必要だとする理由もそこにある。もっともEV推進派とは意見が食い違う点もあり、どちらが正解とか、いい悪いではなく、技術への自信と得意分野での競争により、地球環境が改善されていく、ということが大切であり、根底にはあるのだろう。

■自動運転も投入

マツダ Zoom-Zoom宣言2030 安全技術や自動運転の装備目標

交通事故ゼロを目指すことや高齢者ドライバーの事故、過労疾病による危険運転、スマホなどによる注意散漫運転などなどさまざまな課題がある中、社会構造の変化により、過疎地域での公共交通の弱体化、空白化そして高齢者や病人などの移動手段の不足も現実に起こり始めている。

これらの社会問題に対し、基本安全技術の継続的進化、全車標準化であり、車両ではドライビングポジションの最適化による誤操作防止やペダルレイアウト、視界視認性、ディスプレイ表示の分かりやすさなどを通じて対応していく。

さらに、自動運転技術の標準化は2025年を目指す「コ・パイロットコンセプト」と呼ぶ自動運転技術も同時進行で開発をしていくとしている。

サポートカーSという制度は国土交通省と経済産業省が自動車メーカーに対して装着を依頼している項目で、高齢者事故対策のひとつだ。その要求に応える形で各社は対応をはじめたが、マツダはいち早く対応を始めている。また、2050年には、人口のシフトによりメガシティ化すると言われ、グローバルで60億人に膨れ上がり、今の2倍、交通渋滞は3倍になるとも言われている。その一方で、地方の過疎化問題もあり、こうしたことへの対応もマツダはすでに始めているというわけだ。

■究極の人馬一体

便利な社会になったことの反動で、身体を動かさないことによるストレスも生まれている中、意のままに操り、人の能力を引き出し、心と体を活性化させる「人馬一体」を目指し、さらに見る人すべての心を豊かにする、デザインで心豊かな人生を味わう、ということを目標にしている。

こうしたコーポ―レとビジョンに基づき、さまざまなアプローチの中から、内燃機関に関しては、スカイアクティブXが誕生しつつあり、そして次世代プラットフォームも、そしてデザインも、次世代に向けてのあらたな取り組みが始まっているのだ。

マツダ Zoom-Zoom宣言2030 次世代技術の導入プラン

その中での技術では、マツダの長期ビジョン、ビルディングブロック戦略を2010年に当時のCEO山内孝氏から発表され、そのロードマップに従って現在進行形というわけだ。
*参考:ビルディングブロック世界戦略

マツダ Zoom-Zoom宣言2030 スカイアクティブXエンジン
かなり特徴的な外観のスカイアクティブXエンジン単体

次回は、技術での革新で地球環境に貢献するとしている点について考察したい。スカイアクティブXがなぜ生まれ、そしてキーテクノロジーは何か?を探っていく。
*資料提供 マツダ株式会社

シリーズ:マツダ次世代技術徹底考察2017
雑誌に載らない話

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