マツダ3 CX-30 スカイアクティブXはこうしてつくられる マツダの生産技術[1/2回・動画]

2019年11月中旬、マツダから「生産技術見学会」という案内があり、広島の本社へ取材に出かけてきた。そこではこれまでのマツダの生産技術における取り組みについて語られ、そして現場も見学することができた。なかなか見る機会のない生産現場を知る貴重な機会であり、そこで得た情報をお伝えしよう。

マツダの本社広島にある宇品第1工場でCX-30は生産される
マツダの本社広島にある宇品第1工場でCX-30は生産される

マツダのモノづくり

専務執行役委の菖蒲田清孝氏から説明があった
専務執行役委の菖蒲田清孝氏から説明があった

現在のマツダはグローバルで年間156万台を生産している。トヨタのRAV4は1車種で100万台を販売するスケール。それほど企業規模は異なり、全世界のクルマのうちマツダ車の占める割合は2%に過ぎない。マツダ自身もスモールプレイヤーであると発言しているが、そのマツダが、この先の生き残りをかけていくには、ブランドの独自性と強さが大事であると位置付け、走る歓びを伝えていくことをコーポレートビジョンにしている。

そして土台となる考え方はE=V/C。Eはビジネス効率、Vは価値、Cはコスト。またVは機能、Cは物理量という考え方を開発部門も生産部門も浸透させ、同じ考え方のもとでのモノづくりを始めている。つまり全体最適の実現のために、この考え方を土台としたわけだ。

マツダのモノづくりの基本的な考え方。E=V/C
マツダのモノづくりの基本的な考え方。E=V/C

その共通認識の下、はじまったのが「一括企画」と言われるモノづくりだ。商品企画の見直しや生産性を考慮した商品、工場稼働率をあげるフレキシブル生産といった分野で共通認識を持ち一括企画が始まった。そして、マツダ自らブレークスルーしたと説明するのが、従来、生産領域が共通構造で、開発がフレキシブル生産を要求していたものだが、その流れが逆になったことだという。

開発が共通構造で、生産がフレキシブルに対応するという枠組み。構造と工程を同時に考えていくことで、車種ごとに考えていくことから脱却したことだというのだ。その結果がコモンアーキテクチャーという言葉で伝えられているものだ。スカイアクティブエンジンとかシャシーとかだ。

車格や排気量の領域を超え、各ユニットの理想を追求した基本コンセプトを作り、相似系の設計とすることで、CAE解析の容易さ、ボリューム効率、フレキシブル性を同時に高めることができた。だから、製品化されたマツダ車は似たような顔をもち、似たようなダイナミック性能であり、大きさこそ違うものの、相似系なのだ。もっともこの手法は欧州プレミアムモデルの常套手段で、メルセデス・ベンツ、BMW、アウディ、ジャガーなど見渡すとどれも相似形だ。

革新はフォードのおかげ?!

マツダは製造・生産業のセオリーとして数を追うビジネスに走った時代があった。しかし、大手のカーメーカーのようにはいかず経営不振に陥り、フォード傘下となった時代があった。その時代に、フォードからブランドを見直す提案があり、クルマづくりを見直すきっかけとなったという。そして後にZoom-Zoomを策定した経緯がある。

ブランドの見直しを機に、クルマづくりの手段も革新の必要が生まれ、開発と生産を含めたモノづくり革新が始まったのだ。そこでマツダはクルマのベース技術に拘ったという。また魂動というデザインテーマを決め、メッセージ性、一貫性、継続性のあるクルマづくりをスタートさせた。

余談になるが、Gベクタリングコントロールが誕生したとき、当サイトでは、この技術は全てのクルマのベース技術になる技術だと伝えていたことを思い出した。

※関連記事:マツダがまたやった! 進化するスカイアクティブ G-ベクタリング搭載

話を戻すと、工場で働く従業員に、この経営陣が考えていることを理解しもらうことも重要だったという。そこでは経営サイドは100-1=0であると伝えた。マツダにとっては100台の中の1台でしかないが、ユーザーにとってはその1台が100%であること。だから100-1はゼロであると。

だから作りやすいモノづくりから価値のあるモノづくりへと変わり、価値創造に貢献できるモノづくりを目指し、開発部門と生産部門が共同でプロジェクトを進めていくようにできたという。

Car as Artが魂動の真髄

エクステリアデザインの領域では、生産性の高さと高い価値の提供という商品でなければだめで、保有価値を高めるためにはストーリーも必要だと考え始めた。それがマス・クラフトマンシップであるとした。つまり、匠の技術を量産化することだ。

その一例として、髪の毛の1/3、つまり0.03mmの違いでキャラクターラインは違って見える、だからこそ、正確な金型が必要であり、その精度をプレス工程でも発揮できる金型が必要なのだと。それが完成できれば、芸術が量産できるのだと説明している。

魂動デザインは生命感を形にする究極のモーションフォルムという位置付けにされており、マツダが言うところのデザイン・コンセプトをオブジェ化した「チーターオブジェ」が御神体である。ここまでくると、もはや宗教じみてくるが、企業全体がその考えに傾倒しモノづくりに突き進んでいるのが今のマツダだ。

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