マツダは2012年7月6日にデミオをベースに開発した電気自動車、「デミオEV」のリース販売を日本国内、特に中国地方の地方自治体や法人顧客を中心に開始すると発表していたが、10月4日、広島県に納入が予定されている15台のうち、リース第1号車を含む5台を納入したと発表した。今後は広島市、呉市、府中町、三次市、山口県、防府市など中国地方の地方自治体や法人顧客を中心に、合計で約100台を販売する予定。価格は357.7万円。
デミオEVは、デミオをベースにEV化しながら、爽快な加速性能、気持ちよいハンドリング、優れた乗り心地を備えた「Zoom-Zoom」をEVでも達成することを目指して開発された。
気持ちよい加速を実現するために、自然な発進フィール、リニアなレスポンス、滑らかで伸びのある加速を、モーターとその制御で実現している。
モーターは「巻線切り替え式」を採用。通常のモーターは低回転/高トルク特性か高回転/低トルク特性のどちらか一方の特性しか持っていないが、巻線切り替え式モーターは、回転数に応じて巻線を切り替えることで、両方の特性を両立させることができ、この特性により、発進加速の力強さと高速域での伸びを実現している。
またEV化により、室内の静粛性は格段に向上し、重量物である電池パックをフロア下配置にすることで低重心化とヨー慣性モーメントの低減が実現し、、軽快なハンドリング性能と、上質な乗り心地を両立している。
EV化による重量増加をできる限り抑えるため、小型・高出力の巻線切り替え式モーターの採用、バッテリーパックケースへのアルミ材の使用などにより、軽量化を図りEV化にともなう重量増をベース車+190kgに抑え、車両重量1180kgを達成している。
↑18650型リチウムイオン電池 ↑床下配置のバッテリーパック
バッテリーは汎用サイズの18650型リチウムイオン電池を採用。これを床下配置のバッテリーパッケージとしている。バッテリーパッケージの電力容量は20kWh、総電圧346V、バッテリーパッケージの容量は約160Lと発表されている。ちなみに日産リーフは24kWhのバッテリー容量を持つが、デミオEVの方が約400kg軽量なため、航続距離はデミオEVのほうが長くなっている。
モーターは巻き線切り替え式の永久磁石型3相交流同期モーターを採用。最高出力は75kW(102ps)/ 5200rpm〜1万2000rpm、最大トルクは150Nm/0〜2800rpm、最高回転数は1万2000rpm。
↑永久磁石型3相交流同期モーター ↑巻き線切り替え式の効果
↑インバーター ↑DC-DCコンバーター
充電は、200V用充電ケーブルを標準装備し、電力残量警告点滅状態から約8時間で充電完了する。またCHAdeMO(チャデモ)規格の急速充電システムに対応しており、残量警告点滅状態から約40分で80%の充電が可能だ。スマートフォンによる遠隔操作での充電予約・開始・停止が可能な「リモート充電モード」、決められた 時間に充電する「タイマー充電モード」などにも対応する。
メーカーオプションとして、リヤトランク下部のスペアタイヤ・スペースに100V給電システムを装着できる。この給電システムを装備すると家庭用電気機器に交流100V、最大1500Wの電力を供給することができる。
走行モードは、通常走行用の「Dレンジ」と、エコドライブをサポートし航続距離を伸ばす「Eレンジ」を設定。Eレンジでは、回生ブレーキを強めると同時に、アクセル操作に対する加速を穏やかにしている。またシフトセレクター頭部に回生ブレーキをさらに強めるチャージスイッチ(Chスイッチ)を装備し、スイッチを押すと降坂時などに回生ブレーキ力を高めてコントロール性を向上させるようになっている。
EV専用の空調システムとして、ヒーターで直接空気を暖める即温式の暖房システムと電動コンプレッサーを使用した冷房システムを採用。
デミオEVの航続距離は、効率的なエネルギー回生システムや電気駆動システムの高効率化・軽量化を追求することでクラストップレベルの電費100Wh/kmと、JC08モードで1充電当りの航続距離200kmを実現しており、現時点でのEV性能は相当高い。
なお現時点でのデミオEVは、リース販売方式で販売台数も100台程度に限定しており、実証実験的な意味合いが強いが、その経験は今後登場するであろうマツダの電動化自動車に反映されることは間違いないだろう。