【マツダ】 スカイアクティブ搭載デミオの実力向上を箱根で実感!(動画試乗付き)

マニアック評価vol57

デミオがマイナーチェンジ(MC)を受け、リッター30kmという燃費をアピールする、スカイアクティブ・ガソリンエンジンを搭載したモデルを追加して登場してきた。長らくお待たせしたが、その試乗レポートの第1弾をお届けしよう。

初試乗のステージは燃費走行には不向き!?

今回、そのMCデミオのフラッグシップになるSKYACTIV搭載車の試乗会が箱根で行われたのだが、燃費をアピールするにはワインディング路の試乗コースは不利なのでは? という疑問を持ちつつ試乗してみた。なお、高速道でのインプレッションについては、後日燃費計測を行った時のものであり、実燃費についてはこの後の報告を待ちたい。

エンジンは新開発のSKYACTIVの第1弾、1.3LのNAでCVTとの組み合わせのみである。欧州のBセグメントでライバルにはヴィッツ、フィットの2強がいるというカテゴリーであることを頭に入れて、走り出してみた。

↑ボディカラーはSKYACTIV専用の新色アクアティックブルーマイカ。

乗り心地は欧州のライバルに通じる秀逸さ

新型デミオSKYACTIVは燃費チャンピオンカーという位置付けなのだが、ステアリングを握ってみると気に入ったのは乗り心地で、しっとりした感触があることだ。Bセグメントの大衆モデルとしてはかなり際立ったもので、高級感というと大げさになるが好印象なのだ。欧州車のVWポロなどに共通する感覚であり、そして、ボディ全体からしっかりした感触も受ける。もっともポロのような鋼(はがね)を感じさせる剛性感とはフィーリングの質は異なるが、きちっとした感触は安心感が得られた。

このようにしっかりしたフィーリングを持っているクルマに共通するのは、ハンドリングの良さがある。実際このMC後のデミオのハンドリングは、小舵角時の反応や大舵角の時などにリニアに反応するフィーリングが得られた。特に切り込んでいった時のリヤの接地性が高く、安心感がある。

小舵角でクルマが反応を始めるため、ステア操作をゆっくりジワッと切ることができ、切り増しをしていってもリヤがしっかり接地している感触が伝わる。さらにブレーキのタッチもよく、リリースする時もジワッとブレーキが緩んでくれるので、コーナーを滑らかにクリアすることができた。

↑アルミホイールは1本あたり1kgも軽量化され、Cd値も0.29とクラストップだ。

リヤの接地感向上は顕著に実感!

リヤの接地感向上にはトレーリングアーム取り付け部の剛性アップと、ブッシュの取り付け角=スグリ方向を変えることで、接地性を高めたことが効いている。Gが生じた時にリヤタイヤには進行方向とは違った力が加わるが、このスグリ角により、進行方向=フロントタイヤの向いている方向へ力が加わるようにタイヤへ力がかかるため、ドライバーには接地感が高まって感じることになる。

こうしたフィーリングはマツダが最近のモデルで追求している統一感、つながり感のある走りというテーマがかなり達成できていると思う。例えばダンパーの減衰力はリニアリティを求め、微低速域の減衰力を下げることで、リニアに「よく動く」というストローク感を生み出している。実際のサスペンション・ストロークは従来モデルと変更はないのでストローク感が高まったという表現が適切だ。

具体的には「ダンパー内のオリフィスを変更し、小さな入力時には、ピストンロッドを動かして減衰するイメージからオイル、つまり流体で減衰するイメージとしたことで、実際の減衰幅が広がりました」と、デミオの開発主査水野茂夫氏は説明する。

↑インテリアの質感向上にもトライ。メーター照明はブルーグラデーションに。
↑i-DM(インテリジェント・ドライブ・マスター)の表示部。

唯一残念なのが長距離でのシート

また乗り心地のフラット感や直進性もよく、アクセルのオン/オフに関係なく真っすぐ走るので安心できる。小舵角での反応がよいとはいえ初期の応答は穏やかで、ステアリングを切り込む量に応じて舵が効くという素直なフィーリングだ。ただ、ステアリングのニュートラル付近では少しルーズな領域があり、フリクションを付けることで補っている感じがした。それは、高速走行時の左右1cm程度といった微小なアソビ?舵角の時に摩擦感が感じられるもので、操舵抵抗を感じるのでタイヤへ舵角が与えられたように感じるものの、実際には少々の切り増しが必要になる。極低速域でも同じであるが、操舵速度が速いため、高速域でしか顔を出さないフィールだろう。

唯一残念な点としてシートが挙げられる。近所での買い物や通勤に使うという走行距離ではまったく問題とはならないレベルだが、200kmを超えると腰が痛くなるのだ。おそらく、軽量化のために新設計されたシートバックがメッシュタイプとなり、一方座面は旧来と変更はない。そこで、マッチングに狂いが生じたのではないだろうか?

↑インテリアカラーには写真のライトグレーとブラックの2色を用意。

静粛性は明確に向上。高速の追い越しは苦手

さて、燃費に特化したスカイアクティブGのエンジンフィールだが、まずはエンジンサウンドのノイジーな感じが回転全域で抑えられており、そのために室内での静粛性が高くなっていた。このことについて、主査の水野氏によれば「エンジンの設計段階で、人間がノイズと感じる周波数帯を発しないデザインとすることで、静粛と感じるエンジンにできたと思います」と説明する。

↑燃費だけでなく、静粛性も高まったのは進化の証のひとつだ。

CVTとのマッチングでは、燃費に特化したグレードであるため、制御の見直しが行われたということで、40〜60km/hといった常用速度域では直ちに2000rpm以下に回転を下げるように制御される。ただし、最終減速を含むギヤ比に変更はないため、100km/h巡航では2600rpm付近となる。また、やはりフラットなトルクを狙っているため、高速道路での追い越しや登坂などでは苦しくなる場面もあった。

出力の違いを見てみると、スカイアクティブではない通常の1.3Lエンジンを搭載するモデル(13Cや13C-V)の方が馬力で5ps、トルクで12Nmとわずかに上回っている。試乗会では旧モデルも比較試乗できたため、このわずかな出力の違いを感じてしまったが、乗り比べをしなければもちろん感じるレベルではない。

↑あいにくのウェット路面でも特に不安を感じることはなかった。

車両全体がレベルアップしたと実感

マイナーチェンジしたデミオの特徴をまとめると、乗り心地、ハンドリング、ブレーキフィールといったものが、同じレベルのリニア感で揃っていて、そこにフラットトルク型のパワーユニットが存在しているという印象のクルマだった。つまり、燃費に特化したグレードの試乗会ではあったが、おそらく、車両全体のレベルアップができていることをアピールするための試乗会であったと感じる。したがって、試乗コースも箱根のワインディング路をチョイスしていることに納得できた。

文:編集部(松本晴比古/髙橋明)

撮影:中村宏祐/編集部

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