マツダのロードマップ、先進技術ブランド「スカイアクティブ」を発表

雑誌に載らない話vol14
2010年10月20日、マツダは次世代技術説明会を開催した。その内容は異色とも言えるもので、冒頭に山内CEOからブランド戦略が説明され、次いで金井専務(研究開発・プログラム開発推進担当執行役員)から技術戦略が説明された。個別の技術概要については、その後にプレゼンテーションが行われた。

つまり、個別の技術説明をするだけではなく、中長期にわたる経営戦略を山内CEOが説明。そしてマツダの未来を構築するためには、この先進次世代技術がキーとなることを経営トップが解説をし、そして、すでにその準備ができていることを発表したのである。

↑発表会は東京ドームシティで行われた

マツダの次世代技術については、すでに2009年の東京モーターショーでSKY-G(ガソリン)、SKY-D(ディーゼル)エンジンと、次世代ATのSKY-Driveが出展されていた。そして今年に入ってヨーロッパでSKY-G/Dエンジン、SKY-Driveのメディア向け先行説明会と試乗会が開催され、今回、日本で技術プレゼンテーションが行われたわけだが、この説明会で次世代技術は「SKYACTIV」と紹介された。

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「SKYACTIV」とは、マツダの技術開発の長期ビジョンである「サステイナブルZoom-Zoom宣言」に基づく、「走る歓び」と「優れた環境・安全性能」の高次元での両立を象徴する革新的な次世代技術の総称とし、いわばマツダの新技術のブランド名称としたのだ。

このため、今回の説明会では、すでに発表しているSKY-G、SKY-DなどはSKYACTIV-G、SKYACTIV-Dに改称。そしてこれまでの新開発ガソリン、ディーゼル、ATに加え、SKYACTIV-MT(6速MT)、SKYACTIV-Body(軽量・高剛性ボディ骨格)、SKYACTIV-Chassis(新開発のフロントストラット/リヤマルチリンクサスペンションにより高い剛性と軽量化を両立(従来比14%の軽量化)をあわせて紹介していた。

つまりこれまでは、新開発のパワーユニット、パワートレーンの総称であったSKYがSKYACTIVと改称され、今後新開発される車両全体の技術名称となったわけだ。

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マツダの中長期経営戦略

マツダの中長期経営戦略は、2016年、つまり5ヵ年計画でグローバル販売170万台以上を目標とするという。そのための柱として、SKYACTIV技術、モノ造り革新、ブランド価値、新興市場、フォードとの相乗効果の5点をあげている。

注目されるのは、ブランド価値の「再構築」だ。そのために今回のSKYACTIVもブランド化されたと見るべきだろう。そして新興市場を明確にターゲットにするということは、クルマの大胆なコストダウンが求められ、それがモノ造り革新というテーマになっているものと思われる。

「モノ造り革新」とは、クルマの基本構想とフレキシブル生産構想と一体的に企画、開発することで、生産合理性やコストダウンをはかることを意味するという。具体的な目標は、開発の効率化30%以上、コスト低減、生産設備投資20〜60%の抑制だとされる。

ブランド価値の向上については、「つながり革新」と呼ばれる活動を行うという。メーカーの商品力、価格、販売店舗、販売手法、サービスなどを相互に連携させることで「One and Only」のブランド価値の向上をめざすというのだ。つまり小規模でも存在感のあるブランド力の再構築である。

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またマツダの企業平均燃費は、2015年までに2008年を基準に約30%、つまり7ヵ年でベース技術改良をメインにして30%の向上をはかることを目標にしている。これは、ハイブリッドカーやEVを市場導入するより、はるかにCO2削減に効果があるとしている。

マツダ全車の燃費から算出されるCO2排出量に置き換えてみると、燃費の30%の削減とは、CO2を23%削減することを意味し、このレベルを達成するためにはベース技術の革新がない場合、マツダ全車の約50%をハイブリッドカーにしないと達成されず、EVの投入ではマツダ全車の約23%がEVでなければならないという試算になる。つまりハイブリッドカーやEVの投入より、ベース技術で燃費を向上させるほうがCO2削減にも有利という判断なのだ。

これは正論である。高価格ゾーンにあるハイブリッドカーやEVに急速な販売拡大は望めないからだ。このような戦略のもと、エンジンの燃費はガソリンで15%、ディーゼルで20%、ATで4〜7%、ボディの軽量化は100kg以上(燃費換算で3〜5%)という燃費向上の振り分けを行っている。

マツダの次世代技術戦略は、ビルディングブロック戦略と名付けられた。その意味は、クルマの基本となるエンジンやパワートレーン、ボディ、シャシーなどを大幅にグレードアップさせ、環境適合性を向上させることを優先した上で、次のステップとしてアイドリングストップや減速エネルギー回生ブレーキ、モーター駆動技術などを積み上げて行くといということだ。

もっともアイドリングストップはすでに採用しているので、次はベース技術全般の引き上げという順番になり、その次のフェイズで減速エネルギー回生システムの採用ということになる。ハイブリッドはさらにその先と位置づけられている。

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一部にはフォードがマツダの株式を売却し、資本関係が解消されるのではという予想報道もあるが、マツダにとっての今後の5ヵ年の経営戦略を確立し、これからの事態に備える準備はできたと見ることができる。

文:編集部 松本晴比古

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