トヨタは2021年4月8日、先進運転支援システムを搭載した「レクサスLSアドバンスドドライブ」、「ミライ アドバンスドドライブ」を発売すると発表しました。
トヨタは自動運転技術への取り組みについて以前から、自動運転について人とクルマが気持ちを通わせながらお互いを高め合い、人とクルマが仲間のように、共に走るという独自の考え方である「Mobility Teammate Concept(モビリティ・チームメイト・コンセプト)」を提唱しています。今回発表した2車種もチームメイト・コンセプトに従った新しい先進運転支援システム「アドバンスドドライブ」を搭載しています。
なお新型LSは4月8日に発売し、新型ミライは4月12日に発売予定となっています。
アドバンスドドライブの特長
今回搭載されたアドバンスドドライブは、知能化、信頼性、高い認識性能、ドライバーとクルマとの対話、ソフトウェアアップデートという5点が特長になっています。
ディープラーニングを中心としたAI技術も採用し、運転中に遭遇しうる様々な状況を予測し、対応する運転支援システムになっています。また、周辺環境、ドライバーの状態などから危険が予測される場合は、システムが注意を促し、ドライバーはシステムからの提案に応じて操作を判断、指示するなど、双方向のコミュニケーションにより、人とクルマが信頼し合える運転支援を目指しているとしています。
同時に、アドバンスド・ドライブは、車外の画像データをはじめとする走行データを記録し、トヨタのサーバーに送信するようになっています。
刻々と変化する環境下でのクルマの挙動を把握することで、今後の自動運転・先進安全技術・地図関連技術の研究開発に活かす狙いがあります。その際のデータの取扱いは、個人情報保護法を遵守した上で、クルマの利用者とカメラに映り込む他車のプライバシーに配慮した対応をするということです。
アドバンスドドライブの機能
高速道路や自動車専用道路の本線上での走行を支援するシステムがアドバンスドドライブと規定されています。ナビゲーションで目的地を設定すると、ドライバー監視のもとで実際の交通状況に応じて車載システムが適切に認知、判断、操作を支援し、車線・車間維持、分岐、車線変更、追い越しなどを行ないながら、目的地に向かい、出口分岐までの運転を支援するようになっています。
このアドバンスドドライブが作動している間はドライバーはアクセル、ブレーキ、ステアリング操作からも解放され、疲労が軽減されます。また、カーブや渋滞、追い越しなど走行中のさまざまなシーンに応じて、自然で滑らかな走りを実現しています。
システム側が周辺の車両状況と道路環境を考慮したうえで車線変更可能と判断した場合は、ドライバーがステアリングを保持し車線変更先を確認、承認操作を行なうことで、自動的に車線変更を実行します。
またドライバーがウインカーレバーの操作をすることで、システムに車線変更動作を要求することもできます。これらの車線変更は基本的にはシステムによって行なわれるものの、ドライバーはステアリングに手を添えている必要がある点に注意が必要です。
アドバンスドドライブは、車内にドライバーモニターカメラを装備しており、ドライバーの顔の向き、目の開閉状態、視線方向、運転姿勢からドライバーの運転状態を検知し、ドライバーの脇見・閉眼状態をシステムが検知した場合はドライバーに警告します。
また、ドライバーの安全確認行動をシステムが確認することで、安全に車線変更支援を実行。更に、眠気の兆候も推定し、ドライバーの運転への関与度合いが低下し始めているとシステムが判断した場合、ブザーによる警告やシートベルトの振動、ヘッドアップディスプレイ表示の点滅、いたわり案内アプリによる対話など、きちんと運転できるようにドライバーへ促します。
なおアドバンスドドライブを実現するためのセンサー類は、現時点で判明しているのは高精度3次元地図、前方の物体を広角で認識できるLiDAR、前方をより高解像度で物体や車線を検知するアドバンスドドライブ・カメラ、中角度の前方カメラ、フロントの長距離ミリ波レーダー、前側方広角ミリ波レーダー×2、後側方広角ミリ波レーダー×2と、超音波センサーで、これらを複合的に使用することで360度マルチセンシングとしています。
また、トヨタが以前から展開しているITS技術である車車間通信も搭載しています。これは他車も同様のシステムを搭載していることが前提ですが、他車のアクセルやブレーキ操作を通信によって取得し、いち早く自車の制御を行なうことが可能になっています。
そしてアドバンスドドライブとは別に今回から、カメラ、超音波センサーを使用したアドバンスド・パーキングも搭載されています。スイッチ操作だけで、アクセル、ブレーキ、ステアリングが自動操作されるシステムですが、このシステムはすでに輸入車の多くが採用しており、今では特段先進技術とはいえません。
高度運転支援システム・レベル2にこだわる
アドバンスドドライブの特長として、高速道路や自動車専用道路での広範囲な手放し運転を実現していますが、ドライバーの運転環境への注視、車線変更時などでのドライバーの後側方確認動作も必須となっており、レベル2の高度運転支援システムとなっています。
その一方で、LiDARを搭載し、さらに前方カメラを2個装備し、ステアリングやブレーキなど運転システムの冗長性(システムの2重化、電源喪失時の操縦性能の確保など)により、実際にはレベル3の自動運転に対応したシステムとなっています。
なおこのシステムはウーブン・プラネット・グループ(旧トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント:TRI-AD)が開発し、今回の技術説明もウーブン・プラネット・ホールディングスCEOのジェームス・カフナー氏が担当しています。
したがって、現時点ではレベル2にこだわった高度運転支援システムとなっていますが、今後発売される車両の走行データを蓄積し、さらに制御ソフトを熟成させた段階で、ソフトウエア・アップデートによりレベル3の自動運転へ移行(ただし型式指定を改めて受ける必要はある)するというトヨタ戦略を見て取ることができます。
なお価格は以下の通りで、標準モデルに対してプラス55万円となっており、搭載システムを考えると格安の価格設定となっていることも特長のひとつとなっています。