【レクサス】新型ISプロトタイプ試乗記 コンプライアンス・ステアを制御するLDH レポート:高橋アキラ

マニアック評価vol187

ターンパイクを占有して開かれたプロトタイプ試乗会でISを堪能

レクサスISがまもなくフルモデルチェンジをする。それに先立ち量産試作最終車のプロトタイプによる試乗会があったので、ファーストインプレッションをショートレポートしよう。


欧州において、また北米、国内においてISのライバルとなるモデルはBMW3シリーズ、メルセデスベンツCクラス、アウディA4のいわゆるプレミアムDセグメントになるが、中でもBMW3シリーズが競合するモデルの筆頭だ。その理由は、やはりISの開発目標に「真の走る愉しさ」を掲げているからで、本気で3シリーズとの勝負に出たのだと思う。

用意された試乗コースは箱根ターンパイクをクローズし、山頂の大観山から御所の入り駐車場までの約9kmを占有使用して行なわれた。試乗時間は約30分×4回で、コースを何度も往復。存分にプロトタイプをテストすることができた。

次期レクサスISには3モデルがラインアップされる。2GR-FSE型のV型6気筒3.5Lエンジンを搭載するIS350、4GR-FSE型のV型6気筒2.5Lエンジンを搭載するIS250、そして2AR-FSE型の直列4気筒2.5L+モーターというTHSIIを搭載するハイブリッドモデルIS300h。そしてそれぞれにFスポーツとバージョンLというグレードが存在し、IS350FスポーツだけにLDH(レクサスダイナミックハンドリング)という装備が付く。ボディサイズは全長4665mm×全幅1810mm×全高1430mm、ホイールベース2800mmでレクサスGSと共通になったプラットフォームを使用するが、ホイールベースは70mm短い。

注目はそのLDHで、後輪操舵機能(DRS)を持つLDHは現行レクサスGSに装備される機能と同じシステムをISにも搭載したものだ。スポーティとラグジュアリーを共存させるための武器とも言えるシステムで、興味はそのLDH搭載モデルとノーマルシャシーとの違い、そしてハイブリッドモデルはどうか?というのがポイントだろう。しかし今回は、もっとも気になったハンドリングだけについてショートレポートを書いてみた。エクステリアやインテリア、また、全体の細かなレポートは次の試乗の機会に譲ることにした。

ちなみに搭載されるトランスミッションはIS350はアイシン製の8速ATで、IS250は6速ATとなる。ハイブリッドモデルは、これまでのTHS IIと同じように電気式無段階シフトでトランスミッションは持っていない。またシャシーはドライブモードセレクト機能により、グレードにより最大4つのモードセレクトが選択できるようになっている。エコ、ノーマル、スポーツ、そしてスポーツ+とあり、スポーツ+ではVGS(ギヤ比可変式電動パワーステアリング)、AVS(アダプティブ・バリアブル・サスペンション)の制御が変わる。

結論から言えばLDHのアリ、ナシの違いはコンプライアンス・ステア的なフィーリングを感じるか感じないかという1点に集約できると思う。旋回時に発生するタイヤ横力によって、ブッシュがたわみトー変化を起こすのだが、LDH装着モデルは後輪が操舵できるため、このコンプライアンス・ステアを抑制することができるということを体験できた。

ISのエンジンはV6 3.5Lと2.5L。直4+モーターのハイブリッドをラインアップ。

どういうことかというと、リヤのブッシュやサブフレームの取り付け部がコーナリング時の横力によってたわみ、設計の狙い以外のトー変化が起きてしまう現象がある。そうすると、ドライバーは予期しないクルマの姿勢変化や動きを感じるのだが、後輪操舵デバイス(DRS)によってそのトー変化を制御すれば、ドライバーの意思通りにクルマは動くということになる。LDHナシではそのコンプライアンス・ステアの傾向が見られ、LDH装着との差を感じることができたというわけだ。

フリクション低減など改良されたEPS

コンプライアンス・ステアは当然設計の段階で一定のトー変化しか起こらないようにされているが、相手がゴムブッシュだけに、設計通りのたわみ量を正確に作るのが難しいとされている。したがってブッシュの「すぐり」なども研究され、最善のものが提供されているわけだ。

また、レクサスGSのときに感じたLDHのフィールでは、低速域では逆位相に操舵されるため回頭性が上がり、反対に高速域では、同位相で操舵されスリップアングルはゼロとなるため高速安定性が増すのを感じた。ところが、今回のISではその違いをあまり強く感じることがなく、後輪操舵しているのか、していないのかはわからないという感じで、ナチュラルなフィールということができる。

このインプレッションは意見の分かれる部分で、せっかく先端技術を搭載したのだから積極的に感じたい、という人もいればナチュラルなフィーリングのほうが好ましいという人もいるだろう。私見だが、GSは回頭性と高速安定性が良かったものの直進の座りが弱いため、GSであればLDHナシを選択。しかしISではこの味付け変化により、ナチュラルになったLDH装着を今回は選択したいと思った。ちなみに、後輪切れ角はGSは最大2度ということだが、ISはそれよりも切れ角は小さくしたということだ。

LDHの有無での差を、存分に感じることができた

 

今回はコンプライアンス・ステアについてレポートしたが、それはレーシングスピードとも言える車速域で、そして減速荷重が大きい時のコーナリングで顔を出す部分であり、たとえ速度無制限のアウトバーンの国でも公道でそれを感じる状況はまずないということを付け加えておく。

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