201年1月12日に、レクサスブランドで最も小型のCt200hが発表された。このモデルの原型は2009年のフランクフルト・モーターショーに出展されたレクサスLF-Chだが、市販モデルはCT200hとされ、ヨーロッパでは2010年末に発売されている。
欧州に続き2011年初頭から、日本、アメリカ市場へも販売を開始したわけだ。CTの意味はクリエイティブ・ツーリングの略で、コンセプトはヨーロッパのプレミアムCセグメントがターゲットで、具体的にはアウディA3だろう。そのため5ドア・ハッチバックというCセグメントの基本パッケージを踏襲しているが、レクサスらしさを演出するために、複雑な面構成を採用して強調している。
パワートレーンは、プリウスなどと同じ1.8Lエンジンとリダクションモーターを組み合わせたハイブリッドシステム(THS)を採用しているが、ヨーロッパをメインターゲットとしているため、より正確でしっかりしたハンドリングの性格付けが行われている点がプリウスとは異なる。
プラットフォームはHS250hと共通だ。HSはホイールベースが2700mmだがCTは2600mmと少し短縮され、全幅も20mm狭い1765mm。ボディサイズとしてはCセグメントのど真ん中のサイズとなるわけだ。全高はHSの1505mmに対して1460mm(シャークフィンアンテナが20mmで、実質は1440mm)と低められており、ライバル車と同等といえる。
エクステリアデザインでは、キャビンのガラス面積を狭めることでロアボディの安定感や姿勢の低さを強調しているが、実際の全高はライバル車より低いわけではない。エクステリアにおいてプレミアムCセグメントの特徴とも言えるのだが、ドアのあわせ目をゴムシールや段差処理を採用して隙間感を低減し、サイドボディの一体感を作り出している。しかしこれらの手法は他のライバル車と同じである。
デザインのパッケージングはキャビンフォワードを採用せず、キャビン後方の絞り込みやサイドショルダーの張り出し、タイヤ側面の位置をフェンダーパネル面ぎりぎり(ツライチ)にすることで、安定感を作り出している。
また、ボディの軽量化のために、ボンネット、リヤハッチドア、サスペンションリンクの一部をアルミ製にしている。ヨーロッパの道路を意識し、空力も徹底追及され、Cd値=0.28を達成している。
インテリアでは、ドライバーを取り囲むメーター類やスイッチ類の配置と、左右を貫く水平基調のダッシュボードを組み合わせている。またシート造形も、従来にはないほどサイドサポートを高くしホールド性を高めている。ちなみにサイドサポート内部には金属芯を入れ剛性を高めているが、このタイプが日本国内で販売されるのは異例だろう。
インテリアの質感では、ダッシュボードのソフトタッチ化や艤装の仕上げ、シート生地や縫い目の質感の向上などプレミアムCセグメントを相当に意識していることがわかるのだが、これらの点はライバル車に一歩及ばずといったところだ。
1.8Lのアトキンソンサイクルエンジン(2ZR-FXE)、リダクション機構付きモーター、ニッケル水素電池など、ハイブリッドシステムはプリウスとまったく同じだが、制御ソフトは変更を加えている。つまりダイナミックを強調するためもあって、ドライブモードセレクトを新たに採用し、ECO、ノーマル、スポーツをダイヤルで選択できるようになっている。
スポーツモードを選択すると、通常は500Vの駆動電圧を650Vまで電圧を高め、ブーストアップ効果を引き出す。またこのモード選択に合わせてメーターパネルの照明色が変化し、スポーツモード時はタコメーターに変化するようになっている。ECO、ノーマル時はハイブリッドシステムインジケーターが表示されている。
このドライブモードセレクトとは別のスイッチでEVモードも選択できるので、走行モードは合計4つとなる。トランスミッションは、遊星歯車によりエンジンとモーターを結合した無段変速であるが、CT200hはパドルシフトを設け、6段変速を擬似的に設定している。シフトレバーでSを選択すると6段の各ギヤが固定されるマニュアルシフトとなり、Dレンジではパドルを操作することでエンジンブレーキが得られるようになる。そのため、プリウスなどより積極的なドライビングを体感できるようになっている。
なおシステム最高出力は136ps(エンジン=99ps、モーター=82ps)。10・15 モード燃費はベース車が34.0km/L、標準装備車が32.0km/Lで、この差は車重の違いによるものだ。最高速度は180km/h、0→100km/hは10.3秒。ヨーロッパ混合モードでのCO2排出量は96g、同じくヨーロッパ混合モードでの燃費は24.4km/Lと公表されている。THSの実用燃費は10・15モード値とは乖離(かいり)が大きく、むしろヨーロッパ混合モードが実燃費に近いと思う。
なお燃費を高めるため、従来から採用されている排気熱再循環システムの他に、室内用の湿度センサーを採用している。つまり、湿度センサーで室内の湿度をチェックし、窓の曇りを発生させない範囲でできるだけ内気循環をさせエアコンの負荷を抑えようというものだ。
シャシーの開発の狙いは、俊敏で一体感のあるハンドリングと快適な乗り心地の両立で、従来のレクサス車に比べ、相当にアジリティを重視している。そのため、アンダーフロア面の結合剛性の向上などにより、特に平面曲げ剛性を高め、さらにサスペンション入力部の局部剛性をアップさせている。
サスペンションはフロントがストラット式、リヤはダブルウイッシュボーン式という構造をとっている。そしてハンドリングの質感を高めるために、フロントは左右ストラット取り付け部のタワー部に、リヤは左右ダンパー取り付け部にパフォーマンスダンパーを装備している。このパフォーマンスダンパーはヤマハが特許を持つダンパー付きの補強ロッドで、ボディの減衰性と剛性の向上を両立させようという狙いだ。この他に、コーナリング初期のエンジンの横ズレを防ぐサイドストッパー付きエンジンマウントなど、細かな技もハンドリングの向上のために採用している。
↑パフォーマンスダンパーとエンジンマウント
そして、ハンドリングをより重視したスポーツモデルとして、Fコンセプトを取り入れたF SPORTグレードが設定されている。F SPORTは専用のスポーツサスペンションを備え、215/45R17タイヤと組み合わせている。ホイールやフロントグリル、内装のデザインにも専用品が与えられる。
AutoProveのひとこと
CT200hはレクサスブランドとしては最も小型のエントリーモデルになるが、デザイン、安全性装備、走りのコンセプトなど、まさにターゲットとするプレミアムCセグメントに真っ向勝負をかけたという点で評価できる。またその一方で、他車にはないハイブリッドシステムを搭載し、環境性能をアピール、既存のプレミアムCセグメントではないことも訴求している。ただしヨーロッパでは現地のターボディーゼルとの燃費競争になるわけだが、Cセグメントの本場でどのような評価を受けるだろうか、興味深い。
文:編集部 松本晴比古
関連記事