シムドライブ(SIM-Drive)社は、2011年3月29日に先行試作車「SIM-LEI」を発表した。SIM-LEIは一回の充電でJC08モード333kmの航続距離を達成した。
シムドライブ社は、2009年8月に設立された電気自動車の開発を行うベンチャー企業で、福武總一郎氏(ベネッセホールディングス取締役会長/電気自動車普及協議会会長)、慶応大学で300km/hを突破したエリーカを開発した清水浩教授が社長に就任し、インホイールモーター型の電気自動車の研究・開発を行っている企業である。社名のSIM-DriveはShimizu-Inwheel motor-Driveの頭文字だ。
また、このほど発表されたSIM-LEIのLEIは「Leading Efficiency In-wheel motor」を意味するという。このプロトタイプは2010年1月に開発着手され、1年間の開発を経て発表された。
LEIの基盤技術になっているのは、清水教授が研究・開発してきた各輪のホイール内側に駆動モーターをレイアウトするインホイールモーター駆動システムと、電池、インバーター、インホイールモーターの支持・取り付けを担当するコンポーネント・ビルトイン式フレーム(プラットフォーム)のふたつである。
SIM-LEIの開発目標は、電気自動車で最も大きな問題となっている航続距離を300km以上とすることだった。その点でLEIはJC08モードで、333kmの航続性能を得ることができたという。
この航続性能を実現するための電池の容量は、24.9kWhと既に市販されている電気自動車の電池容量とほぼ同等で、特に大容量化したわけではない。交流電力消費率としては、77Wh/km(ワットアワー/km)となる。この性能を達成するためにインホイールモーターによる4輪駆動を採用したほか、オールスチールモノコックボディによる車体の軽量化、高パワー密度電池の利用による回生エネルギーの高効率回収、超低転がりタイヤによる転がり摩擦の低減、空力ボディによる空気抵抗低減の効果が大きな役割を果たしているという。
動力性能は0→100km/hは4.8秒。最高速は150km/hである。LEIのボディサイズは小型車であるが、ナロー&ロングボディで、かなり空力性能を意識していることが分かる。電池の詳細は発表されていないが、当然ながらリチウムイオン電池と見られる。
インホイールモーターはコスト的な問題と、ばね下重量が極めて大きくなる問題があるが、将来的には各輪の駆動統合電子制御を行ううえで有利であることは間違いない。また長い航続距離を実現しているのはブレーキ回生率を大幅に高めていると考えてよいだろう。なお、LEIは2013年頃に量産化を目指している。
SIM-LEI主要諸元
・全長4700mm 全幅1600mm 全高1550mm 定員4名
・車重1650kg
・駆動方式 アウターローター式ダイレクトドライブ・インホイールモーター×4
・一充電航続距離 333km(JC08) 305km(100km/h定速)
文:編集部 松本晴比古