ホンダWR-V 試乗記 無駄を削ぎ落としてシンプリストにしたら、ここに市場が反応した

ホンダの新しいSUV WR-Vに試乗してきた。2023年12月に発表され3月22日から発売されたコンパクトSUVのWR-Vは売れ行きが好調だ。

ボディサイズがヴェゼルと似たようなサイズのBセグメントに属し、全長4325mm、全幅1790mm、全高1650mm、ホイールベース2650mmで、ヴェゼルとは全幅が同じで全長は15mm短いという程度の違い。しかしながらパワートレインはハイブリッドが主流のホンダの中で、このWR-Vは自然吸気エンジンだけというラインアップ。

これが価格にも影響するため、「こっちでいい」現象が起きた。当然e:HEVのほうが燃費はいいが、車両価格差を考慮しての判断だろう。ヴェゼルでもっとも燃費のよいグレードではWLTCモードで26.0km/L、対してWR-Vは16.4km/Lと10km/L弱異なるので、その差は大きい。

だが、車両価格ではヴェゼルのハイブリッドを選択すると、エントリーグレードで288万8600円する。ちなみにWR-Vのトップグレードは248万9300円だ。う〜む、悩ましい。ハイブリッドかNAか。はたまた装備の違いも気なるわけだ。

WR-Vの生誕地

じつはこのWR-Vはタイ、インド、日本のR&Dが共同開発したモデルで、インドで生産されている。インド市場では2023年6月に「エレヴェイト」の名で発表されているのだ。とはいえ、ホンダブランドの信頼性はあるしホンダセンシングも全グレードに標準装備されている安心感もある。

ベースは海外モデルのシティ用プラットフォームを採用し、ホンダのグローバルモデルの位置付けで販売されている。ラインアップはFFのみでグレードも3タイプとシンプル。エンジンは1.5LのL15Z型4気筒エンジンにCVTを組みわせた一択。出力は118ps/142Nmだ。

これでいいじゃん

これが乗ってみると慣れ親しんだ感覚が蘇り、なんの違和感もなく普通に走れる。綺麗な路面を走ると滑らかでスムースに感じ、これでいいじゃんとなる。荒れた路面になるとややハーシュネスが強くなり突き上げがある。またノイズも入り込み静かとは言いがたくなる。近年の量販モデルは高級感の大衆化現象もあり、多くのモデルが滑らかで静粛性が高くなっている。そうしたベクトルにはいないものの不満があるかと言えば「これでいいじゃん」と感じるのだ。

エンジンのパワー感も市街地を走行する限り不満もなく、アクセルを大きく踏み込む場面も数秒の世界であれば文句はない。CVTも「G-design Shift」を採用し、リニア感のある加速フィールになっているのだ。だからCVTのメリハリのない印象はないのだ。

見慣れているのがいい

インテリアではサイドブレーキがセンターコンソールにあり、電動ブレーキは採用されていない。こうしたところでコストがカットできているのだろうが、サイドブレーキレバーで何が悪い?何も不自由はない。むしろスピンターンができたりして楽しめるかもしれない。

シフトレバーも慣れ親しんだ形状のものだ。ホンダはシフトバイワイヤが進み、ギヤセレクターがボタンスイッチに変わりつつある。それもコストには反映するため既存のシフトレバーで良いということになる。

だから、インテリアを眺めた時に、先進感は感じられない。だからと言って古臭さを感じるのかと言えばそれも違う。逆に物理スイッチがあるほうが操作性はよく、初めてのクルマなのに迷うことなく、いろんなものを操作できる気軽さが湧いてくるのだ。

好感度が高いのは後席の広さだ。足元スペースが広くSUVだから天井高もあって、Bセグメントサイズなのに、十分な広さが確保されているのだ。また荷室も広く、なんとゴルフのキャディバッグが2本横積みできる広さがある。ただし後席を倒してもフラットにはならないが、逆にフラットへの期待は何を求めるのか、どこまで求めていくかということだ。

ホンダセンシングも標準装備

またエクステリアにも好感は持てる。高いベルトラインのデザインで厚みを感じ、がっしりとした印象を受ける。フロントフェイスもグリルが大きく存在感も強い顔を持っている。アンダーガードやホイールアーチをブラックにするなどタフさを印象づけるし、ヘッドライトも流行りの細目デザインを釣り上げた顔は引き締まっている。試乗したZ+グレードにはルーフレールも装備され、よりタフネスを感じるルックスも好感度が上がるのだ。

そして運転支援システムのホンダセンシングを全タイプに標準装備しており素晴らしい。もちろん誤発進抑制機能も搭載しているしACCや路外逸脱抑制、標識認識機能、そしてオートハイビームなどの機能も備えているのだ。さらにコネクテッドサービスの「ホンダ・コネクト」にも対応しているので、最新の安全装備を持ちながら削ぎ落とせる機能を省いたモデルというわけだ。

つまりは、過剰サービスをやめて必要なサービスだけにしてみたら、意外と「これいいじゃん」になったといいう印象。車両価格が高くなり、所有することが厳しいユーザーも増えているため、個人リースやサブスクリプションといった、買い方の変化も起きているが、こうした安価なモデルがヒットするということは、まだまだ所有意欲を持つユーザーは多く、求める性能もミニマリストになってきているのかもしない。

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