【ホンダ】新型プレリュードは運転すれば欲しくなるクルマ好きに刺さるヤツ[試乗レポート]

約2年前、2023年のジャパン・モビリティショーでプレリュードのコンセプトモデルがアンベールされ、大きな話題になった。
「プレリュード コンセプト」は、2022年4月に発表した「2030年に向けた4輪電動化」の取り組みにおけるスポーツモデルとして、グローバルへ投入していくことを予告。したがって当時「プレリュード コンセプト」はEVのスペシャリティカーだと思い込んでいた。
ところが、その1ヶ月後の北米LAショーで、100%EV化へ進む過程の中で、プレリュードはハイブリッドで発売することがわかったのだ。

それ以降、S+シフトという新機能や、シビックType Rとの共通パーツの存在など情報が小出しにされ、既報のように開発コンセプトの説明やデザイン説明などが行われてきた。

運転好きが刺さる心地良いドライブフィール

そしてやっと、実車をドライブすることができたのだ。それは驚愕の滑らかさとパワフルさを持ったスペシャリティカーだった。クルマ好き、運転好きなら絶対に刺さること間違いなしのドライブフィール。

まずは簡単に概要を振り返ると、6代目となったプレリュードはe:HEVである。2.0Lの4気筒ミラーサイクルエンジンに2モーター式ハイブリッドが組み合わされている。e:HEVだから、走行のほとんどがモーター走行であり、エンジンは充電する役目が大きい。高速走行などモーターでは効率の落ちる領域ではエンジン直結で走行をするシステムだ。

プラットフォームはシビックe:HEVと共通でフロントのサスペンションはシビックType Rのデュアル・アクシス式ストラットを採用し、電子制御ダンパーを組み合わせている。ついでに言うとType Rのサスペンションは埼玉県の寄居工場で手組み製作されているが、プレリュード用も同様の工程で製造されている。

デザインはグライダーを発想の起点として、非日常のときめきと高揚感のあるクルマを目指し「UNLIMITED GLIDE」をグランドコンセプトとしている。ダイナミックでありながら、スムースに旋回するグライダーのように、どこまでも行きたくなるような走りを追求しているというわけだ。低くシャープなフロントノーズ、滑らかなボディラインとロー&ワイドのスタンスもスポーティ。

より走りを感じさせるS+シフト

さて、こうしたパッケージで作られた6代目プレリュードを、クローズドコースで走らせる機会を得たわけだが、そこで強くアピールされたのが「S+シフト」だ。

ドライブモードはスポーツ、GT、コンフォートがある。GTは一般的なノーマルとイコールなのだが、じつはこのGTモードがもっともおすすめのドライブモードであると、制御担当者は話す。

そしてS+シフトは各ドライブモードそれぞれでON/OFFができ、ボタンを一押ししてONにすると、エンジンサウンドが強調され、ダウンシフト、アップシフトがリニアに感じられるモードに切り替わる。
ドライブモードでスポーツモードを選択すると、ハンドリング、レスポンス、サウンドが強調されるが、そこでさらにS+シフトをONにすると、そのレスポンスとサウンドがさらに強調される。GTモードはレーダーチャートで言えば、丸い円に近い全体のレベルがバランスした状態だが、S+シフトをONにすると、レスポンスとサウンドが強調される。言葉で説明するとスポーツモードのS+シフトONと同じになるが、フィールでは大きく異なるので、開発者はGTがおすすめと言っているわけだ。

スポーツモードでのS+シフトONはやる気MAX

実際にテストコースで走行してみると、スポーツモードでのS+シフトONはかなり高揚感がある設定で、やる気があがり、アクセルをどんどん踏み込みたくなる。サスペンションもしっかり踏ん張り、どっしり感が増すため、やる気MAXになるのだ。

さらにブレーキングをすると小気味よくダウンシフトされ、ピュアスポーツカーをドライブしている気分になる。エンジンは6000pmまで回り、ブレーキングするとタコメーターはピョンピョンと跳ね上がりながら減速する。

そのアップシフト、ダウンシフトは、まるでDCTのようなフィーリングで作られ、滑らかに変速しているように感じる。そして駆動パワーは実に滑らかに加速、減速をし、どの回転域からでも滑らかに加減速を行なうのだ。

あるエンジニアは「NSXとレジェンドの両方のキャラクターを持ってます」と話していたが、まさにスーパースポーツのようにも感じさせるのだ。もっともパワーはNSXほどないのでそれは言い過ぎなのだが、スポーツカードライブ・フィールであることは間違いない。

そしてGTモードでS+シフトをONにすると、これが非常にリニアな反応で大げさな印象にならない。エンジンサウンドも回転なりの大きさで聞こえてくるので、自然に感じる。イチ押しだという理由が納得できる。スポーツモードのS+シフトONは、GTのS+シフトONと比較すると、サウンド系が大きく、やる気を煽っている感覚だ。だからナチュラルに感じられるGTモードがおすすめというわけ。

そしてコンフォートでS+シフトをONにするとハンドリングやエンジンサウンドは控えめになり、ほとんどエンジン音は聞こえない。代わりに低回転時のトルクが太くなり、静かに力強く走れるのだ。個人的にはコンフォートでS+シフトOFFで走るとEVと同等感じる静粛性が出来上がるので、好みのタイプだった。これがレジェンド風ということだろう。

S+シフトの正体は

このS+シフトのエンジンサウンドはじつはギミックだ。作り出された音をスピーカーから流し、車外は無音だ。そのサウンドはホンダが持つさまざまなエンジン音をベースに作っていて、4気筒のナチュラルなサウンドになっている。そしてアクセル開度やブレーキング時の減速Gとリニアに反応しているように感じられ、全く違和感はない。

詳細を知らなければエンジン走行しているスポーツカーだと思うに違いない。プレリュードはe:HEVだからモーター走行なのだ。テスト後にエンジニアに聞いたが「このテストコースではエンジン直結になる場面がないので、100%モーターだけの走行です」という回答だった。それほどエンジンで走行している感覚になるというわけ。

さらに、コンフォートであればエンジンの存在に気づかないほど高い静粛性があるため、EV車と勘違いするレベルにもなっている。

ダイナミック性能の良さも際立っていた。旋回性能が高く、ショートホイールベースであることが感じられる走りだ。回頭性の高さはデュアル・アクシスのジオメトリーが生み出す魅力だろうし、電子制御ダンパーの味付けも文句ない。モードごとにマッチする走行フィールは多面性を感じさせるのだ。

さらにアジャイルハンドリング・システムも作動しているのだが、それも全く感じることができないほどナチュラルに作動している。ジオメトリーで旋回していると断言できるほどナチュラルな制御だった。

まとめ

個人的には非常に楽しく、欲しくなるクルマなのは間違いないが、ひとつ気になることとして、この魅力を感じる人がどれほどいるのか。走る喜び、操る楽しさを知る人には間違いなく刺さる。しかし、ミニバンで育ち、AT免許しか持たず、アップシフトやダウンシフトを意図的に行なう意味を知らない人、高回転までエンジンを回すことの気持ち良さを知らない人が、おそらく多数だろう。
怖いのは、中国のようにクルマに求める価値は走ることではなく、移動中に何ができるか?そこが最も重要だと考える人がグローバルで増えていないだろうか。そうした人たちには意味のわからないクルマになってしまう。
それでも今の時代にクーペボディという贅沢な車型で発売し、走る喜びを知る人を喜ばすモデルを発売するところがホンダらしさかもしれない。

購買層について、若者のホンダに対するイメージ回復に繋げたいと話していたが、直接的にイメージアップするかはわからないものの、中高年の男性は間違いなくハマる。そのユーザーが熱く語ることで広がるかもしれない。

また、女性が似合うデザインだとも思う。かつてセクレタリーカーとも言われたプレリュードだけに、上品なセンスと仕事のできる感が伝わる妄想も広がる。そうした女性を引き金に若い男性も興味を抱くのではないか。イメージ連鎖が起こりそうな、そんな6代目プレリュードだった。

スペック

車両価格 617万9800円
乗車定員 4人
エンジン 2.0L直噴アトキンソンサイクルエンジン+2モーターハイブリッド
トランスミッション 電気式無段変速機
駆動方式 FF
全長×全幅×全高 4515×1880×1355ミリ
ホイールベース 2605ミリ

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