2020年11月にマイナーチェンジしたホンダ オデッセイに試乗してみた。試乗車はe:HEVのアブソルートEXグレードで、これまでI-MMDと呼んでいた2モーター式のハイブリッドモデルだ。
多くのシーンでモーター走行するタイプの2モーターハイブリッドで、エンジンは充電するためと、駆動の両方の役目を持たせたシステムで、2017年のマイナーチェンジでラインアップに追加されている。そのハイブリッドは、今回2回目となるマイナーチェンジで名称を「e:HEV」へと変更している。しかし、出力などパワートレーンの変更は行なわれていない。
現行オデッセイは2013年にデビューし、これまでミニバンらしからぬ低い全高とスライドドアを持たないミニバンとして個性的であり、多くの人から人気を得たモデルだったが、この5代目のとき両側スライドドアとなり、車高も150mm高くし、スペースを拡大している。現在のボディボディサイズは全長4855mm、全幅1820mm、全高1695mm(4WD1725mm)となっている。
今回のマイナーチェンジでは、上級ミニバンに相応しい居住性をレベルアップし、広い室内空間と3列シートのユーティリティ、使い勝手、そしておもてなし感をもたせたモデルチェンジとしている。
エクステリアはフロントマスクに厚みを持たせ、存在感と車格を強調するデザインになった。ボンネット高を80mm上げ、ヘッドライトはフルLED化し、ターンシグナルランプは連続するシーケンシャルタイプに変更。こうした変更でスタイリッシュプレミアムと位置付けている。
インテリアも加飾パネルをインパネ上部へ配し、エアコン操作パネルやシフト周りにソフトパッドを配置して上質感を作っている。メーターは高精細液晶を3.5インチから7インチへ拡大し、ナビは10インチへサイズアップしている。
また収納といった使い勝手も改良され、助手席の大型収納ボックスや運転席に収納式カップホルダーを装備したり、シートを撥水・撥油シートで子供の食べこぼしなどで汚れを防ぐなどの工夫を取り入れている。開発陣も華々しい装備ではないが、実用性が非常に高い装備を目指し、あるといいなぁ、助かるなぁといった実用性を重視した改良を行なったとしている。
ユニークな装備としては両側スライドドアにジャスチャーコントロールで開閉できる機能をもたせている。ウインドウ下端にあるLEDに手をかざして左右に移動させると、電動スライドドアが開閉する機能を装備した。だが、実際使ってみると、どのような場面で便利に感じるのか実感は沸かなかった。ユニークなのは間違いないが。
パワートレーンに変更がないため、走りの印象はそのままだが、プレミアムサルーンをコンセプトにしているため、NV(ノイズ・バイブレーション)を鍛え、上質と本質を鍛えたとしている。そのために、タイヤの変更やホイールにレゾネータを設け、段差を乗り越える際の音を低減している。またフロントドア、スライドドアに遮音ガラスを採用し、風切り音を低減するなど対策している。またリヤウインドウはガラスの板厚を上げ、遮音性を高めている。
こうしたNV効果は通常走行で、特にエンジンが稼働しない状況では静粛性が極めて高く、滑らかに走行している印象となるが、エンジンが稼働すると、それなりに車内にエンジン音は入ってくる。特に急勾配の上りや高速での追い越し加速、合流時の加速といった場面ではエンジン音は大きめに入っていると感じた。
ただ、このマイナーチェンジでは2列目の快適性に注力している側面もあり、2列目では、そうしたエンジン音が気になるというレベルではなかった。エンジンルームから遠いこともあり、またロードノイズに紛れていくこともあり、運転席と2列目では異なる印象になった。また、3列目は乗り心地の点で課題はあると感じた。静粛性はそれなりに確保されているものの、揺れを感じる場面が多く、2列目との差は大きい。
シートアレンジでは3列目が床下収納できるため、広大な荷室にもなるし、2列目をスライドさせれば、大きなリビングスペースにも変更できるので、乗車人数次第ではかなり快適な空間を利用することが可能だ。
超低床プラットフォームを採用しているため、乗り込んでみるとその広さは意外な印象を受けるレベルにある。今回のマイナーチェンジでより使い勝手の向上やホンダセンシングにも後方誤発進抑制機能を追加したりと、安全装備も充実しており、実用面でも改良が目立つマイナーチェンジといえる。
搭載するパワートレーンはハイブリッドのe:HEVが2.0Lのツインモータ−式、そして2.4L直列4気筒エンジンにCVTのラインアップで、これまであった2.4Lの直噴エンジンは廃止されている。このようにパワートレーンに変更はなく装備・デザイン変更であり、I-MMDハイブリッドアブソルートの旧型と比較して、マイチェン後のe:HEVアブソルートEXグレードで+58万円、アブソルートで+41万8000円の価格上昇という結果になった。<レポート:高 橋 明/Akira Takahshi>