日本自動車販売協会連合会、全国軽自動車協会連合会が相次いで2020年1月~12月の車名別販売実績を発表した。2020年は新型コロナウイルスの感染拡大により、非常事態宣言が発せられ経済活動は大きく停滞。その後は段階的に回復したもののwithコロナ下での社会活動となり、自動車販売は平均して対前年比で15%程度のダウンとなっている。
普通乗用車での実質トップは
こうした厳しい状況下で、軽自動車のホンダN-BOXが日本のクルマとしてナンバーワンの座を獲得、19万5984台を販売した。だが前年実績よりは23%ほど減少している。日本の販売シェアでは軽自動車は全乗用車の4割を占めているが、その軽自動車のナンバーワンのN-BOXは、全乗用車の中でもベストセラーになっている。
一方、普通乗用車では新型ヤリスが15万1766台を販売してトップに立っているが、ヤリスはハッチバックのヤリスとヤリスクロスを合算した台数だ。
そして2番手はトヨタ ライズで、12万6038台となっている。ところがこのAセグメントのSUV、ライズはダイハツとトヨタとの共同企画車で、開発・生産はダイハツが担当し、実質的に同一車種である。そのダイハツはロッキーという車名で販売しており、ライズとロッキーの3万1153台を合算すると15万7191台となり、ヤリスを上回りトップに立っていることがわかる。
販売ランキングでは、長らくトヨタ アクアやプリウスが王座を守っていたが、今やプリウスが12位、アクアが14位となり、トヨタのハイブリッド専用ブランドの力は失われつつあるように感じられる。
ヤリスはガソリンエンジン車とハイブリッド車を併売し、実質トップのライズ/ロッキーはガソリンエンジンのみのラインアップだ。
ライズ/ロッキーは、コンパクトサイズでありながら、十分に広い室内パッケージ空間を持ち、デザイン的にもバランスが良く、しかも軽自動車を上回るエンジンのトルク感、安定感を備え、しかも軽自動車に近い価格帯というコンセプトが多くの人のライフスタイルに合致し、評価されていると考えるべきだろう。
軽自動車の室内広さがポイント
軽自動車のトップであり、全乗用車でのトップを守っているのはホンダN-BOXだ。N-BOXは新車販売台数では4年連続、軽四輪車新車販売台数では6年連続の首位獲得という驚異的な実績だ。
同じ軽自動車スーパーハイトワゴンのスズキ スペーシアが13万9851台で、全乗用車でも4番手となっている。またダイハツ タントもスペーシアに肉薄しており、軽自動車カテゴリーではスーパーハイトワゴンが優勢だ。
軽自動車は国民車と位置づけられているが、スーパーハイトワゴンが選択される理由は圧倒的な室内の広さ、特に普通乗用車のCセグメントのクルマを超える室内の広さが第一に挙げられる。
普通乗用車でも同様の傾向が見られるが、室内の広さに対する価値観は動力性能などに比べてきわめて高いことに注目すべきで、マイカーとは生活の場所と考えられていることが実感できる。
経済性を重視する軽自動車で、単純に車両価格や燃費性能を考えれば、ハッチバックタイプの一択になるが、そうした経済性よりも、室内の居住空間の方が重視されていることになる。
日常的な渋滞の発生や、おびただしい数の信号によるゴーストップ走行など、日本における日常的な道路・交通状況はクルマで走るには気持ち良い環境とは言えないのが現実で、その中から見いだされている価値が、車内の広さ、開放感ということになるのだろう。<松本晴比古/Haruhiko Matsumoto>