ホンダの主力車種でもあるフリードが3代目となってフルモデルチェンジを受けた。もちろんコンセプトの「ちょうどいい」は継続して開発さているが、おおきな変更はハイブリッドのシステムがi-DCDからe:HEVへと変更されたこと。それと「Air」と「Crosstar」のキャラクターが明確にされたことの2つがキーだ。
開発責任者に話を聞くと、先代はエアーとクロスターの差別化はできていなかったという。そこでまず2列のクロスター、3列のエアーをベースに位置付け、その上でクロスターに3列6人乗りモデルを設定している。そして2列のクロスターは、荷室が大きく遊び道具などをたくさん詰めるアクティブなユーザーをターゲットとし、エアーはいわばノーマルでファミリー層を大切に、多くの人に支持されるモデルに位置付けることになったのだ。
フリードの全長は4310mm、全幅1695mm、全高1755mm、ホイールベースは2740mmで、クロスターの全幅はホイールアーチプロテクターをつけた関係で1720mmに広がった。また全長は先代に対して+45mmで、これはハイブリッドユニットが変更されたために全長が少し伸びている。
そして提供する価値は広い空間価値であり、セダン的な快適さ、SUV的なアクティブさ、そしてミニバン的な実用性をもったモデルなのである。
最新e:HEVを搭載
変更されたハイブリッドユニットは、エンジンは1.5Lアトキンソンサイクルのi-VTEC で熱効率40%以上という高効率なガソリンエンジンを搭載し、モーターは駆動モーターと充電用モーターの2モーターハイブリッドになった。エンジン出力は78kW/127Nmで、モーター出力は90kW/253Nmの組み合わせになっている。
e:HEVとなったことで、動き出しはモーターで走り、エンジンはバッテリー状況や要求トルクによって稼働したり、止まったりを自動で行なっている。走っているときでもモーターの役割、エンジンの役割が変化しており、走行状況によりもっとも効率のいい走行モードを車両が判定して走行しているわけだ。
この制御ロジックは、少し前にマイナーチェンジをしたヴェゼルと同じロジックで制御されている。ただし、バッテリーサイズがヴェゼルとは違うのでエンジンの可動領域やトルクの使い方といった部分では、電力に合わせた合わせ込みをしている。ちなみにヴェエルは60セルのバッテリーでフリードは48セル。先代フリードも48セルなので、バッテリー容量自体は変更がないものの、ハイブリッドのシステムが変更になったので、電池の使い方が変更されたわけだ。
そうした中で加速感とエンジン音がリンクしない場面がときどき顔を出すが、基本的には静粛性が高くエンジンの振る舞いが気になるといったことはない。
広い空間価値
試乗車はハイブリッドのFFとAWDの両方に乗り、AWDはホンダ独自の油圧多板式AWDで、リアルタイムで駆動配分を変化させるAWD。その違いによる走行フィールの相違は、強いて言えばリヤの駆動トルクがある分、踏ん張りを感じるのがAWDという程度で、誰もが感じる違いというものではない。
そしてフリードの大きな魅力のひとつに室内空間価値がある。広々とした印象でコンパクトなミニバンとは思えない広さを感じる。とくにこの3代目ではシートバックのショルダー部を削ることや座面の改良などで、ウォークスルーのしやすさや、後席からの前方視界など、広さや動きやすさが際立っている。
3列目にもこだわりがあり、まず大人が普通に座れることを設計条件にし、ライバルモデルが子供向けとか小柄な人用、あるいはエマージェンシーとして設定している3列目を、実用シートにしている点だ。高橋も身長は180センチあるが、問題なく3列目に座れるし、窮屈な印象はないのだ。
そして荷室から3列目シートを畳む時にもこだわっている。シートそのものを先代から2.7kgも軽量化し、跳ね上げ式でも重さを感じにくいようにしている。質量変化とともに、跳ね上げる際のヒンジ位置を90センチ下へ移動させ、テコの原理の応用で跳ね上げる力が小さくて済むように工夫もしている。そしてシートを固定するストラップのフック位置も小柄な人でも手の届きやすい場所へ移動させたため、非常に簡単に3列目を畳むことができるのだ。
2列のキャプテンシートは前述のシート形状変更等で前後に移動しやすくなり、またスライド量も大きいので、全席から2列目へのアクセスも簡単。ベビーシートを使うようなケースでも助手席から、運転席から容易に2列目にアクセスできる工夫もある。
メーターまわりの変更
そしてインパネ周りも大きく変更され、先代はフロントスクリーン下端にメーターがあったが、今回メーターはダッシュボードに移動させ、二本スポークのハンドルの中から覗くデザイン変更している。表示されるデータも整理されており、デジタル情報が多い昨今のメーターとは一線を画し、デジタルデトックスされたメーターになっている。
一方で、メーターがなくなった分、前方の広がりが大きく感じられるようになり、視界もよくなった印象を受けるが、それは単なる錯覚で、実際のフロントスクリーンサイズは変更されていない。またキャビンフォーワードされていることが強調されたようにも感じられる景色になった。
安全装備ではホンダセンシングが全車標準装備となり、特に単眼広画角のレンズを使いACCやLKASも最新版にアップデートされたものへと変更されている。
このように、多くの人が多くの要求をした結果、3代目は大きく進化し、エクステリアデザインでもエアーとクロスターの明確な違い、そしてだれにでも交換を持たれるデザインで登場したのだ。