ホンダ フィット試乗記 マイナーチェンジでダウンサイザーも満足の乗り心地に

マニアック評価vol534
2017年6月29日発表、30日から発売されているホンダの基幹モデル「フィット」がマイナーチェンジした。ホンダセンシングを搭載するなど、コンパクトカーの領域を超える装備と乗り心地になり、さらなる進化を遂げたマイナーチェンジのフィットを試乗してきた。<レポート:高橋 明/Akira Takahashi>

ホンダ フィット マイナーチェンジ 試乗 フロントイメージ ルージュアメジスト・メタリック
新色の「ルージュアメジスト・メタリック」のハイブリッドSホンダ センシング

2001年の初代デビューから数えて3代目となる現行フィットは2013年に発売されている。4年たった今、大幅な改良が加えられ、先進装備のホンダセンシング、ダウンサイザーからの乗り換えユーザーも満足する高級感のある乗り心地など、注目ポイントはたくさんだ。6月末からの発売にもかかわらず、1か月で1万3000台と順調に推移している。

ホンダ フィット マイナーチェンジ 試乗 サイドイメージ ルージュアメジスト・メタリック
フィットトップグレードはダウンサイザーから求められる上質感を意識

もともと人気の高いフィットは、累計で250万台も販売をしており、独身の若年層からの支持が高いというモデルだ。おおむね40%弱が若い層というデータだそうだ。そのフィットに、先進性、スポーティさ、上質感を追及したというのが、今回のマイナーチェンジのポイントになる。

ホンダ フィット マイナーチェンジ 試乗 ラゲッジスペース
荷室の広さはライバルを寄せ付けない

フィットの特徴はセンタータンクレイアウトがもたらす、広い室内スペースと多彩なシートアレンジなどのユーティリティであることは間違いない。その普遍的な価値を維持しつつ、深化させ新しいコンパクトカーのベンチマークを作るというのがメインメッセージだという。

ホンダ フィット マイナーチェンジ 試乗 ハイブリッドL ホンダセンシング
ハイブリッドL・ホンダ センシンググレード

グランドメッセージは「人にFITする」。人の気持ちに寄り添って自分らしさ、楽しさを広げていき、ライフスタイルの幅を広げていきたいというコンセプトだ。具体的に人にFITするというのは、ホンダのMM思想が根底にある。メカ・ミニマム、マン・マキシマム。メカスペースは最小に、人のスペースは最大にというコンセプトだ。

分かりやすく言えば、パッケージングがライバルに対し、比較とはならない優れたポイントがあり、コンパクトカークラスではトップクラスであるということ。フラットな荷室、チップアップ機能による多彩なシートアレンジ、1505mmまでの長尺モノが荷室に積めるユーティリティ。そして、前席の肩周りの広さ、後席の足周りの広さ、後席頭上の広さ、荷室容量の大きさなどが特徴だ。

ホンダ フィット マイナーチェンジ 試乗 インテリア

さて、そんな特徴を持つフィットは3色のボディカラーを追加して全12色から選べる豊富なカラーバリエーションを筆頭に、エクステリア、インテリアもチェンジしている。

ホンダ フィット マイナーチェンジ 試乗 コックピット

モデルは大きく分けて3タイプ。ハイブリッドモデル、1.3L、1.5Lモデル。もちろんそれぞれにグレードが存在するが、この3つのタイプ共通なデザインコンセプトはワイド&ローだ。

■ハイブリッドSに試乗

ハイブリッドは4グレード展開し、最も上級なグレードがハイブリッドS。こちらはダウンサイザーが50%近くを占め、上級思考のユーザーの期待に応えるハイクオリティモデルという位置づけだ。バンパーはスポーツバンパーを採用し全長が4045mmで標準車の3990mmとの2タイプというわけだ。全体にブラックを基調とした色使いで、ドアミラーやサイドシルガーニッシュ、大型テールゲートスポイラーに16インチのアルミホイールを装着する。

ホンダ フィット マイナーチェンジ 試乗 リヤイメージ ルージュアメジスト・メタリック
乗り心地も静粛性も高く、上質な印象のハイブリッドS ホンダ センシング

駐車場からの乗り出しで、歩道から車道へ降りる段差で早くも乗り心地の良さと上質感を感じる。大きな衝撃を受けるところを丸くしっとりと乗り上げて降りる感触は、気持ちいい。

こうした上質感を作るために、ボディにも手が入れられている。ボディ剛性を上げるために各部に補強スティフナーの追加や、板厚の変更を行なっており、さらに静粛性を上げるために遮音材やメルシートの採用なども行なっている結果なのだ。これらのボディ剛性や静粛性についてはこちらに詳しく掲載している。

ホンダ フィット マイナーチェンジ 試乗 ハイブリッドL エンジンルーム
i-DCDのスポーツハイブリッドもきめ細かなチューニングがされた

とりわけ、このハイブリッドSだけには遮音の領域だけでなくエンジンマウントの制振性の向上、遮音用シートをラミネートしたフロントガラスの採用などもあり、NVHの性能は著しく向上していると感じる。この量販モデルのBセグメントとしては、高級と感じる上質感、乗り心地、遮音材効果、重量などからくるしっとり感は欧州Bセグメントの上級モデルに匹敵する印象だった。

エンジンやミッションも燃費効果を生かすために改良が加えられている。その結果JC08モードでハイブリッドモデルは37.2km/Lという数値になっている。そのエンジンの改良についてはこちらに掲載している。

また、ミッションのギヤ比をローギヤード化しているので、出だしの加速感などに力強さを感じ、量販モデルとはいえ、スポーツハイブリッドを標榜するホンダらしい一面も感じる。そしてブレーキペダルにも改良がくわえられ、ハイブリッド車の難点でもある、停止直前での回生ブレーキと油圧ブレーキの協調制御における違和感をなくすために、リンク機構を取り入れて対策をしている。したがって、ブレーキに対する違和感はまったくなく、油圧ブレーキとの差異は感じない。

前述のボディ剛性の向上に伴い、サスペンションやハンドリングにもその好影響は感じられ、しっかりしたボディに依存するサスペンションは、しっかりとそのボディを支えるので、ダンパーやスプリングもデータどおりに機能するという効果が表れている。それが上質と感じる乗り心地につながるわけだ。

安全装備のホンダセンシングもこのハイブリッドSには標準装備される。8つの機能を持つホンダセンシングだが、コンパクトクラスでこれだけの先進の安全機能を装備するのは、安全に対する企業姿勢を感じさせる。

■RSに試乗

ホンダ フィットRS マイナーチェンジ 試乗 フロントイメージ 
RSホンダ センシング。ルックスがいい

試乗する前まで少し勘違いしていたのが、このRSへの理解だった。マニュアルトランスミッションでもあるので、すっかりスポーツモデルだと思い込んでいて、タイプRほどではないが、スポーツモデルなのだと。ところが、RSとは「ロードセーリング」の略だそうで、スポーティなモデルではあるものの、スポーツモデルという位置づけのちょっと手前、といったポジションのようだ。

しかし、ルックスとしては十分スポーツモデルとして通用する、いい顔のデザインをしている。エンジンは1.5Lの自然吸気エンジンで、CVTとMTが選択できる。駆動方式はFFだけで、132ps/155Nmというスペック。タイヤはトップグレードのハイブリッドSと同様16インチを装着している。ちなみに試乗車の銘柄はダンロップSPスポーツ2030で、タイヤサイズは185/55-16だった。

ホンダ フィットRS マイナーチェンジ コックピット
試乗車は6MT。他にCVT仕様も選べる

このRSはクルマをよく知る人であれば、欧州のスタンダードモデルのように、思い通りに走れる癖のないいいクルマという表現が分かりやすいと思う。突出して凄いこともないが、反面乗りにくいところもなく、万人が気楽に運転できるという取り柄があるのだ。こうした一見普通に思える性能は意外と難しく、基本の基本をキチンと製造することができなければ、こうした性能のモデルにはならない。

国内ではハイブリッド信仰があるため、メインストリームはモーターとの組み合わせになるが、本来であればこのモデルあたりがメインストリームではないか?と感じる。さらに、このRSにはマニュアルにも関わらず、緊急自動停止ブレーキを含む、ホンダセンシングを装備しているのだから、クルマをよく知る人が選ぶモデル、という思いが開発側にはあるかもしれない。

■価格

ホンダ フィット マイナーチェンジ 価格表

COTY
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