2016年5月にビッグマイナーチェンジをしたアコードハイブリッドに試乗してきた。アッパーミドルの上級セダンとして世界160か国で販売されるグローバルセダンは、静かでゆったりとした乗り心地。先進さも兼ね備えたモデルだった。<レポート:高橋 明/Akira Takahashi>
じつはアコードは6代目以降、フレキシブル・プラットフォームの採用で、国内仕様、欧州仕様、北米仕様など仕向け地仕様で対応してきた歴史を持つが、この9代目アコードはグローバルモデルと再定義し、世界共通化を図ったモデルなのだ。簡単に言えばハンドルの右左は違うにせよ、クルマはほぼ同じになったということ。
国内ではセダン需要がシュリンクしており、そのためあまり脚光を浴びるようなことはないかもしれないが、世界で通用する上級セダンというのが、9代目アコードの本当の姿なのだ。そのアコードが2016年の6月にマイナーチェンジをし、フルモデルチェンジに近い多くの改良が行なわれているのだ。その詳細はこちらの記事をご覧いただきたい。
ボディサイズは全長4945㎜×全幅1850mm×全高1465mmでホイールベースは2775mm。身長185cmの人を基準に設計しているだけに、余裕あるインテリアが印象的だ。
室内は、シートも大きくタイトな作りの傾向がある中、適度な緩さと締まりがあり、大人な座り心地のシートである。シフトレバーは排除され、NSXやレジェンドに採用されているエレクトリック・ギヤセレクターに変更された。見た目からは先進さを感じる。だが、慣れないとちょっと使いにくい。車庫入れで左手が空振りをする。もちろん機能的にはなんの不具合も存在しない。
スピードメーターは単眼で見やすい。デジタルインフォメーションも上手に整理され、必要な情報は得やすい。速度、燃料、回生レベル、そしてメーター中央には、表示セレクトでエンジン、モーター、回生具合がイラストで分かりやすく表示される。
ナビ画面はいまとなっては小ぶりだ。ここ数年で急激に変化している部位でもあるが、機能も車両情報とナビゲーション機能が別々のモニターに表示され、結果モニターがセンタークラスターとダッシュボードにそれぞれ装備されているのだ。カーナビは国内の場合、販売店の売上に関わる重要な用品のひとつであり、メーカー設定にしずらい事情がある。だが、グローバルモデルと再定義したモデルだからこそ、グローバル基準でも良かったのではないかとも感じる。
■大人な走り
走り出してみると非常に静かで、乗り心地も良く上級セダンであることを感じる。特に静粛性では、多くの改良が加えられている。例えば、前後のインナフェンダーに吸音材の追加や、フードインシュレーターの追加、フロントドアガラスを合わせガラスにしたり、また車内にも吸音カーペットを敷くなどして、ハイブリッドの効果のひとつである静粛性を際立たせる改良がとてもいい。
エンジンは2.0LのガソリンエンジンにCVTを組み合わせたものだが、こちらは2kW/10Nmほど出力がアップしている。さらに、モーターも出力も向上させている。11kWアップし135kWとなりシステムの合計では、215psのアップがある。出力のアップがイコール強い加速力へとつながるというより、モーター駆動のタイミングや時間が長く取れるといった意味の出力アップだ。
ただ、ワインディングや上り坂が続くようなシーンではCVTのネガが出て、エンジン音と加速感のズレが気になる。そして加速しているにもかかわらず、エンジン音に変化がないという特有の症状が気になる。エンジン音をもう少し小さくできれば、気にはならないのだが、違和感はある。ただ、このクルマをどうやって運転するか?という常識的な範疇での想定では、こうしたネガは顔を出さないということにもなるだろう。
新たに加わった機能にスポーツモードと減速セレクターがある。スポーツモードはモーターアシスト機能がより広い領域でアシストするので、力強く走れる。減速セレクターはパドルシフト形式で、左がダウン、右がアップ。インジケーターには減速力を数字で示し、1から4段階で減速が強くなる。ただこれが、イメージ的にはシフトアップと勘違いしやすいかもしれない。体感的には数字が大きくなると減速しているのだが、イメージはシフトアップだ。これも慣れの問題と言えばそれまで。
このマイナーチェンジで大きく変わったと感じたのがサスペンションだ。これまで、ゆったりとした乗り味で、アジリティの世界とは正反対の味付けをしていたが、今回ダンパーが変わり、少し締まった印象になった。基本の方向性はアジリティを追及する方向ではないが、上級セダンとしてはちょうどいい具合になったのではないだろうか。
ブレーキもこのマイナーチェンジで進化している。電動サーボを使ったブレーキが、よりナチュラルなブレーキタッチへと制御変更し、特に停止寸前の踏力を緩める瞬間など、油圧式との差がわからないレベルになっていた。
ホンダの安全システムであるホンダセンシングをもちろん搭載している。自動追従機能もあり、疲労軽減には役立つだろう。ただ、このACCを含めた自動運転技術の類は、運転が上手な人のように運転することを目指して開発しているが、制御は日々進化しており、その速度も速い。したがって、少し古臭い印象は否めない。例えば、遅いクルマが前方に現れ、追い越し車線へ移動したとき、即座に加速が始まらない。少しのタイムラグがあってから加速を始めるので、マニュアル運転をしたくなる衝動に駆られるのだ。
これらはハードな部品性能というより、制御プログラムの開発に影響されることが多いので、どこかのタイミングでアップデートされる可能性はあると思う。
■まとめ
国内で上級セダン市場は小さいかもしれないが、確実にそのニーズはある。車格の違いを無視すれば、クラウンがその筆頭となるモデルだろう。だが、アコードの選択というのは大いにあると思った。
比較してみると、クラウンハイブリッドアスリートが439万5600円~でアコードは385万円から。燃費では圧倒的にアコードが有利で30.0km/Lに対し23.2km/Lだ。ボディサイズで比較してみると全長はクラウン4895mm、アコード4945mmで+50mmアコードのほうが長い。全幅もクラウンの1800mmに対してアコードは1850mmと広く、一方、ホイールベースは2850と2775mmでクラウンのほうが+75mm長いという違いがある。が、グローバルモデルという位置づけのアコードのほうが少し大きいということがこれで分かる。
当然、アコードは北米をメインマーケットにしたモデルであるからサイズが大きめ。国内の基準で考えればクラウンはライバルにならない。だが、こうしてボディサイズで見れば比較する対象になるほど、中身もともなった上級セダンと言えるだろう。
■価格(税込み)
アコードハイブリッドEX 410万円
アコードハイブリッドLX 385万円