ホンダ アコードのラインアップに新しいグレードが追加された。「e:HEV Honda SENSING 360+」というグレードで、名称の通りホンダセンシング360+が搭載されたモデルだ。
いわゆるADAS系の進化型で、レベル2ではあるものの、広範囲で運転支援が可能になり、運転負荷軽減にもなる機能だ。
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ホンダは2050年までに交通事故死ゼロを目指しており、知能化運転支援技術と安心・安全ネットワーク技術を使ってゼロを目指す目標がある。その進化の過程として最新の「ホンダセンシング360+」が搭載されたわけだ。
ホンダセンシング360との違いは、ドライバー異常検知機能や高精度マップによるレーンキープ精度の向上、人の感性にあったライントレースといったもので、全車速域でのハンズオフ機能も含まれている。

実際にこのホンダセンシング360+のADAS機能をテストドライブできたので、どの程度実用的なのかお伝えしていこう。テスト環境は御殿場を起点とした東名高速と新東名高速道路という公道で、天候は雨と霧の悪条件だった。


目的地設定は車載のGoogleマップを使って設定。あとは車両側で高精度地図と組み合わされ運転支援が開始される。自車位置計測は衛星のGNSSを使い、車両側では3軸センサーと車速センサーのデータを元に自車位置が測位されている。この自車位置精度は高く、トンネルや悪天候でもかなりのレベルで対応していたのだ。とくにトンネルに関しては2km程度のトンネルを体験したが、自車を見失うことなく測位している。
ホンダの開発陣によれば中央高速の恵那山トンネル(約9km)や首都高速の山手トンネルでも問題はないというのだ。経験的には山手トンネルはGoogleマップも使えず、自車に搭載しているローカルナビだけが測位するのを知っている。それが、ホンダセンシング360+では測位可能という進化を遂げているのだ。


そして周囲の車両環境はカメラとレーダーで判定している。通常ハンズオフとなればLiDARの搭載を想像するが、アコードには搭載していない。それでも自車を見失うこともなく走行できたのだ。
高速道路の本線上に入って早速運転支援の設定をする。ステアリングにある「SET」のスイッチを下げるだけで稼働し、すぐさまその時の車速で走行を始める。すると、その数秒後にはハンズオフが可能になるサインとしてメーター表示がブルーに変わるのだ。対応車速は135km/hまでハンズオフ対応可能で、これまで渋滞時ハンズオフ機能のライバルは多いが、その優位勢はあるし、トンネルでも大丈夫というのも大きな評価ポイントだ。

そのまま走行車線を走行していくと、遅い車両に追いつく。すると車線変更をして追い越すことの提案がメーターパネルに表示される。それを承認するボタンを押すと、ハンドルを握る必要があるものの、自動でウインカーが出され、車線変更し、追い越しが終わると再び自動でウインカーが出て走行車線に戻るのだ。
また、ナビでルート設定をしているため、出口が近づくと左車線への車線変更が提案され、同様に承認ボタンを押すと左へ移り、さらに出口車線へとクルマが誘導されていくのも体験した。
こうした提案や車線維持に関し、周囲の車両との車間距離や相対速度差などのしきい値は、十分な安全マージンが取られており「大丈夫か?」と言った心配はまったくない。逆に「今なら大丈夫」というのは人間が経験で知っている経験値だということもわかった。




一方、大型トレーラーの横を走行する際、車線内でややトレーラーとは反対側に寄って走行したいものだが、このシステムはそれも取り込んでおり、より安心感につながるのだ。ただ、今回のテストドライブでは、うまい具合にそうした大型車の横を通るシーンに出会わなかったため体験はできなかった。
さて、悪天候についてだが、テスト時は濃霧も発生しており、雨も降り続いている状況でこうした高度運転支援は機能するのか。その点でも驚くレベルだったのだ。雨に関してはADASが切れることはなかった。常時先行車を認識し、車間調整もシステムが行なっていた。

しかし濃霧では濃いめの場所で解除されたが、その状況は人間でも速度を落とさないと危ないと感じるほどの濃霧なので、逆に解除されてよかったと思えたのだ。人の目でよく見えない状況で、クルマの機能が働き続けるほうが心配で「なんで速度を落とさず走れる?」と不安になるからだ。
濃霧について技術者からは、レーダーは乱反射しないそうで、対象物からの反射で測定しているため濃霧には強いということだ。ただ、ホンダセンシング360+にはそのレーダーの他にカメラも使用しており、濃霧ではカメラで判定できない状況になるとレーダーだけでは走行しないというわけだ。
さて、これらの車線移動や追い越し時の加減速のフィーリングは、かなり熟練ドライバーのレベルで、目を閉じて体験すると、人の操作かシステムの操作か区別できないほど自然な動きをしていた。加速や減速、車線変更時のヨーモーメントなど、Gが発生する動きのすべてをなめらかに動かすことに注力したと説明していた。逆に一般の方だと、車線変更でヨーを発生させるドライバーの方が圧倒的に多いわけで、システムのほうが運転が上手だったと言えるのだ。
ちなみにGoogleマップは、目的地情報の取得のためだけに使っているそうで、高精度マップ(ゼンリン)で車線や勾配を読み込みながらルート案内をしているという。そのため、ホンダセンシング360用のECUをグレードアップし360+に対応するEUCへとアップグレードしている。
そして「e:HEV Honda SENSING 360+」は見た目も少し変更されており、特別感を得られる様にカラー変更をしている。18インチのホイールは艶のある切削クリア塗装された黒基調のデザインで、ドアミラーも黒に塗装されている。インテリアは2色あり、ホワイトとブラック。ともにピラーからルーフにかけてブラックになっており、特別感があるインテリアとしているのだ。
パワートレイン等は通常のe:HEVと共通で、2.0Lガソリンに2モーター式ハイブリッドだ。通常グレードが559万9000円に対し、e:HEV ホンダセンシング360+グレードは599万9400円と約40万円の差となっている。
ホンダセンシング360+はライバルに対してトンネルなどでの測位性能の有利さや、全車速対応していること、さらに少々の悪天候でのロバスト性に優れていると言えるものだ。ただ、高機能ではあるもののレベル2には変わりなく、常時ドライバーは前方確認は必要であり、セカンドタスクが許されているものではないことの認識はしっかり持つべきだ。とくにスマホを見る癖のあるドライバーは要注意だ。
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