ホンダと日産自動車は2025年2月13日、それぞれが記者会見を行ない、2024年12月23日に発表した2社の経営統合に向けた協議・検討の開始から2ヶ月足らずで破談に至ったことを発表した。
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12月23日の発表内容に従い、2社の経営統合の方法については、2社の共同出資による持株会社を設立し、その傘下にホンダ、日産がそれぞれのブランドで事業を行なう形を前提に検討が進められていた。
しかし、日産は経営的な危機を迎えており、2社の経営統合を実現するためには日産の経営再建がどのように行なわれるかが明確にならない限り、統合は不可能であることは明らかだった。
また、ホンダと日産では現時点での時価総額は4:1となっており、ホンダが主体になって経営統合を行なうことも自明であった。ところが、日産の再建に向けての経営計画の策定が明確ではなかった。そのため、2社の経営統合を推進するためには、共同出資の持株会社の方式では、経営戦略の決定に時間がかかるリスクを懸念し、ホンダは持株会社方式ではなく相互の株式交換を提案した。
この案では、ホンダと日産の持ち株比率は圧倒的にホンダが大きくなり、日産は事実上、子会社化されることになる。子会社化された日産に対してホンダが迅速にリストラを行なうことになるわけだ。
日産側は取締役会を開催し、この株式交換方式、つまり子会社化を拒否し、2社の統合計画は破談に至った。また、12月の2社の経営統合に向けた協議・検討の開始発表時には三菱自動車の加藤隆雄社長も同席していたが、三菱は統合に向けては懐疑的で、終始距離を保ち続けた。
ただし、2024年8月にホンダ、日産、三菱の3社によるソフトウエア・ディファインド・ビークル向けのOS開発、e-アクスルの基幹部品共通化などの戦略的なパートナーシップは維持されることになる。
結果的にホンダは、危機状態にある日産を抱え込むリスクから開放されということができ、一方で、日産は改めてどのように再建を図るのかが問われることになる。
注目される日産の動向
日産は2月13日に2024年度第3四半期(2024年4月1日~12月31日)の決算を発表した。グローバル販売台数は前年同期から4万4000台減の239万7000台。売上高は前年同期(9兆1714億600万円)から0.3%減となる9兆1432億700万円、営業利益は前年同期(4783億7500万円)から86.6%減の640億1000万円、営業利益率は0.7%という結果であった。
2024年度通期決算の見通しでは、前回見通しから売上高をさらに2000億円減の12兆5000億円、営業利益を300億円減の1200億円に下方修正した。そして、前回見通しで未定としていた純利益については800億円の赤字となる見通しを明らかにした。ただし、赤字が800億円に収まるかどうかは明確ではない。
経営再建に向けては、2026年度までに「年間350万台の販売でも持続的可能な収益性とキャッシュを確保できる体制」を目指すとしている。そのため、固定費を中心に大幅な削減を行なう。具体的には、接部門の人員をグローバルで2500人削減し、車両組み立て工場、パワートレイン工場で2025年度に5300人、2026年度に1200人の人員削減を実施する。
また工場では、2025年度第1四半期にタイの第1工場、第3四半期と2026年度に他の2工場を閉鎖することを計画しており、アメリカのスマーナ工場、キャントン工場へ2025年度からシフトし、生産台数を抑制する。
結果的にグローバルでの生産能力は2024年度の500万台から2026年度には400万台まで削減。すでに実施済みとなっている中国における50万台分の規模縮小と前述3工場の閉鎖などにより、工場の稼働率を高めるとしている。そして、新型車の開発に関しては、開発期間をこれまでの52ヶ月から37ヶ月に、最終的には30ヶ月に短縮するとしている。
新型車では、アメリカ市場向けに「ローグ PHEV」「ローグ e-POWER」を投入し、日本市場では新型軽自動車や大型ミニバンの導入を行なう計画だ。e-POWERは、第3世代システムを2025年からヨーロッパで販売する「キャシュカイ」に搭載予定で、「ローグ e-POWER」が第2弾となる。
さらに新型「リーフ」をグローバルで投入し、ヨーロッパ市場にはコンパクトEVも追加し、中国向けとしては新エネルギー車である「N7」を2025年度中に発売するとしている。
しかし、新型車の投入計画の出遅れは響いており、人員削減や工場規模の縮小の見積もりから考えると、V字回復の期待は薄いと言わざるを得ない。
そのため、日産は再建をアシストできる新しいパートナーも積極的に模索して行くとしている。
そこで改めて台湾の鴻海精密工業(ホンハイ:フォックスコン)の存在が注目される。鴻海の郭台銘会長は、日産を買収ではなく提携したいという意向を表明している。しかし鴻海の資金力を持ってすれば日産の買収は容易である。
iPhoneの製造、パソコンの主要部分の製造で世界的な大企業に成長した鴻海は、自動車開発・生産事業に進出することが長年の野望なのである。そして、すでにルノーとも交渉を開始しており、ルノーが所有にする日産の株式、そしてフランスの信託銀行が持つ日産の株式の買収を提案していると言われている。
これらの株式を鴻海が取得すれば、日産の筆頭株主に躍り出るのだ。また、すでに鴻海は先進EVの開発を独自に進めており、その責任者が元日産のCOOであった関潤氏である。