2025年1月のアメリカ・ラスベガスで開催されるCESにおいて、ホンダが発表予定の0シリーズだが、発表に先立ち、2024年10月9日に技術発表が行なわれていたのでお伝えしよう。
四輪電動化戦略を0シリーズと呼び、その戦略に基づいて次世代EVが産み出され2026年に北米でデビューすることが発表されている。その後2030年までに合計7モデルをグローバルで展開することになっている。
この0シリーズは「ホンダ第2の創業」と位置付けられており、今後のホンダはこの技術によって生まれ変わってくることも宣言しているわけだ。
ベースとなる考え方、思想はThin Light and Wiseというワードを使って説明しており、薄く、軽く、そして賢くがキーになり、このワードでの開発アプローチのもと、「共鳴を呼ぶ芸術的なデザイン」、「安全・安心のAD/ADAS」、「IoT・コネクテッドによる新たな空間価値」、「人車一体の操る喜び」、「高い電費性能」という5つのコアバリューを提供するとしている。
また0シリーズのゼロは0からの発想で創り出すことを意味し、車両に対してはM/M思想が継続されマン・マキシマム、メカ・ミニマムを根底に置く。
そうした考えのもと、お伝えしたようにさまざまな領域で新しい技術が公表されたわけだが、実際に栃木にあるホンダ技術研究所ではその具体的な展示を見ることができた。
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まずは薄型のバッテリーケースだ。次世代EVのバッテリーはフロアに敷き詰められるが、厚みがあればフロアは高くなり、必然的にルーフも高くなり車高も高くなってしまう。そこでバッテリーを薄くする方法として開発されたのが、このメガ・キャストで作られたケースというわけだ。
6000トン級のメガ・キャストは現在テスト生産されているが、まもなく北米オハイオの工場に設置し生産が始まる予定だ。そしてメガ・キャストとしたメリットは一般的なバッテリーケースは約60点ほどの部品から構成されているが、それを5部品に集約でき、生産効率とコスト削減のメリットがあるという。
とりわけギガ・キャストに対し40%以上のコスト削減と算出しているのだ。1万トン級のギガ・キャストに対する金型の製造費、保守等のランニングコスト、そしてライフタイムを計算し、さらに生産効率を考慮すると、この6000トン級のメガ・キャストがベストという結論になったという。
また中型・大型バッテリーパックに対応していることも特徴のひとつで、鋳造されたケースをつなぎ合わせることで大型に対応する。そしてその接合技術も新たに開発されているのだ。
それは3D摩擦攪拌接合(FSW)といい、アルミの融点700度までには温度を上げず、柔らかくした状態で撹拌しつなぎ合わせる技術だ。およそ8mm厚までのアルミであれば対応が可能であり、このFSW接合技術によって、バッテリーケースのサイズ変更が可能になるというわけだ。さらにこのケースに水冷用の水路も貼り付けられ、薄型バッテリーケースを生産することができたのだ。
ちなみに、パワーユニット系では3 in 1と2 in 1が展示され、モーター、減速機、インバータを1ユニットしたe-Axelで対応していく。そしてインバータの小型化を実現できたため、MM思想にマッチし、車内空間確保にも貢献している。その3 in 1に含まれるインバータはSiCの採用が前提になっている。そして2 in 1はインバータを持たないタイプでリヤ駆動モーターなどが想定されているという。
デジタル車内 車内のストレスフリーとファンマックス
次に車内のデジタル化での新しい価値提供について。これはIVI(In-Vechicle infotainment)の継続的進化に伴い、OTAで進化し続ける技術と位置付けている。
デモンストレーションは音声認識の精度で、自然な言語処理はGoogleアシスタントのサーバーで行なわれるが、ホンダのプラットフォームの中でチューニングすることで、より精度を高めたものが提供できるとしている。もちろん車両に関するデータのフィードバックによるものだが、車両に関係なくとも長文理解といったことはホンダのチューニングよって精度が高まっているという。
またアカウント連携が可能になり、Googleカレンダーを理解するため「次の予定は?」と問い掛ければ、自分のカレンダーに書かれた情報を音声で伝えるといったことが可能になる。
これらの音声認識技術にプラスして画像認識も組み合わせ、究極的には意図理解や行動予測といったIVIへ進化継続させ、クルマが先回りをして準備してくれるようなIVIへとしていく。そうした技術のベースはオープンなAIの仕組みを活用していき、ホンダオリジナルの情報を加えることで、提供価値のひとつとしていくわけだ。
画像認識では、顔認証アルゴリズムをホンダ独自に解析して組み込みを行なっている。そのためクルマにおけるセキュリティを担保しているという。そして行動予測技術もキーになる。これはユーザーの状況に対してクルマがシーンを理解をして、先読みを実現するという技術だ。ポイントはCNNと呼ばれるディープラーニングのひとつをつかった状態推定をリアルタイムに行ない、それによってシーンを理解するという技術だ。当然その精度を高めた担保は必要であり実現したとしている。
デモンストレーション動画では、車両に近づくと自動でドアが開くシーンがあり、子供を抱っこしていると、運転、後席乗車、手荷物といった状態を認識し、それに対し人が何をしたいのかを車両が理解をして、後席のドアを自動で開けるといった技術だ。
これらの進化を支える技術がE/Eアーキテクチャーと言われているもので、ホンダはドメインごとに高性能コンピューターを備えるドメイン型アーキテクチャーを採用している。そのドメインは3つあり、IVI、AD/ADAS、そしてセントラルの3つだ。
またこれらドメインを支えるプラットフォームは2つあり、ひとつはデータプラットフォームで、もうひとつがソフトウェアプラットフォームになる。このソフトウェアにはホンダ独自のビークルOSを採用することで、迅速なアップデートを可能にするとしている。
そのためのビークルOSを独自開発しており、車両の機能やデータに自由にアクセスし、データ収集、分析、アプリケーション開発から配信までのサイクルを高速化することで、継続的な機能向上を実現するというわけだ。またソフトウェアはOTAによりアップデートが可能になり、ユーザーはいつでも新しい価値や体験を得ることができるというわけだ。
つまり、これまでのクルマは移動手段だったが、これからは知能を持つ存在へと進化していくわけだ。
国内ではビークルOSを各社が開発をしているが、具体的な搭載までには至っておらず、ホンダが最初のメーカーということになる。
これが2025年のCESで最新版0シリーズが公開される予定であり、また量産も2026年には始まるという現在の状況だ。
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