2022年11月28日ホンダは開発を進める先進安全技術に関し、最新の情報と進捗についての説明、および体験試乗会を開催した。
ホンダは安全技術に関し、クルマは危険だから乗らないや、運転しないとかではなく、安全に対して積極的に取り組み、社会を変えていく姿勢で開発していることを強調した。道を使う誰もが安全であるという共存安全思想だという。
目指す目標は2050年、全世界でホンダのバイク、クルマに関わる交通事故ゼロを目指すもので、そのためにはADAS技術の進化、人とAIの知能化運転支援技術で運転時のヒューマンエラーを無くす目標だ。
現在、ホンダ車には「ホンダ・センシング」が装備され認識・検知機能の進化で安全運転をサポートしてきた。N-BOXを例に取ると、ホンダ・センシング搭載により追突事故は82%減少し、歩行者事故は56%減少したデータがある。そのため2030年までに二輪検知機能付きホンダ・センシングを全世界の四輪全機種への展開を目指している。
そして、その内容を進化させた「ホンダ・センシング360(サンロクマル)」を開発し、2022年12月に中国でのCR-Vを皮切りに23年度中に国内でも搭載モデルを発売予定している。そして、順次グローバルに適用を拡大。2030年までに先進国で発売されるすべてのモデルへの搭載を展開するとしている。
ホンダ・センシング360「ネクスト・コンセプト」
そして今回、そのホンダ・センシング360にさらに5つの機能をプラスしたネクスト・コンセプトを発表し、体験試乗してきた。この新360は2024年以降順次展開する予定だ。
では、具体的にどんな機能が追加されたのか。そしてこれらの機能を実際にホンダのテストコースで実体験をしてきた。
1:ハンズオフ機能付き 高度車線内運転支援機能
これは車線中央を維持し、カーブの曲率に対して自動で減速、そして前走車との車間距離を自動で維持する。システムでは高精度地図を使用するコネクテッドカーであり、搭載により、運転負荷が30%低減できる技術としている。
2:ハンズオフ機能付き 高度車線変更支援機能
これは同一車線上で遅い車両を検知した場合、周囲の車両、道路環境を検知・予測しながらシステムが稼働し、自動でウインカーが操作され、加速、減速を支援する機能でドライバーのサイドミラーの目視は必要なものだ。そして追い抜きが終わると、追い越す時と同様に周囲の車両状況を判定し、元に戻るという運転支援機能になる。また、ナビで目的地を設定している場合、出口に近い車線への移動を支援する機能も備えている。
3:ドライバー異常時対応システム
昼夜を問わずドライバーを監視し、顔の向き、目の開閉状況、動作の有無を検知し、正常な運転ができるかを見守っているシステムだ。異常が発生した場合、音と表示で車線中央を維持する。さらに反応がない場合は、アクセルの応答を無効化し無意識の急加速を防止。ハザードランプとクラクションを鳴らし周囲に知らせながら減速し、車線内で停車。そして緊急速報サービスに自動接続するシステムだ。
4:降車時車両接近警報
これは後側方から接近する車両やバイク、自転車を検知。インジケーターの点滅で警告するシステム。
5:ドライバーの状態と前方リスクを検知 回避支援を行う技術
この機能はドライバーの注意力低下、緩慢運転を検知したときに、ドライバーに注意を促すが、その先に衝突の恐れがある場合は、衝突回避を支援する。
また、注意低下で前走車に接近していくと軽い減速(0.1~0.2G)をしてドライバーに気づかせるもので同乗者はきづかないようなホンダ独自の技術でもある。そして、ひきつづき注意力に欠けた運転が継続した場合、表示と警報に加え、ブレーキ操作を強め再度注意を促すというものだ。
歩行者、自転車、路駐車にぶつかる可能性があり、同じ車線内に十分な回避スペースがあるときは、ステアリングを回避方向に操作し車線内での衝突回避を支援する。同じ車線内に回避スペースがない場合、ドライバーの操作をきっかけに減速と操舵を支援する。ドライバーの操作がない場合は衝突回避ブレーキが作動する。
AIで速度域の拡大を目指す
この日はこのホンダ・センシング360ネクストコンセプトに加えてさらなる高度技術であるホンダ・センシングエリート(レベル3)のさらなる次世代技術のプレゼンテーションも行われた。
これは2021年3月にトラフィックジャム・アシストとして世界初のレベル3として型式認定を受けたホンダ・センシングエリートのネクストコンセプトで、運転支援の範囲を一般道へ拡大し、さらに自動駐車機能や高速道路での全速度域への機能拡大を目指すものだ。
そのためには高度なAI技術がキーになると考え、アメリカのベンチャー企業であるhelm.ai社に投資を行ない、ホンダの技術とヘルムエーアイは深く融合し、ホンダ独自のソリューションを開発する取り組みだ。
更なる高度化をするには複雑なシーンを人間と同じように認知・判定しなければならず、それには高度なAIが必要になるというわけだ。
開発するAIは、従来のひとつひとつを学習させて記憶させる方法に加えて、みずから情報を分類分けし抽象度をあげた概念学習機能を持たせるというものだ。これはAIに正解を与えず、自力でデータの規則性や特徴を導き出す学習方法を取り入れたAIということだ。
そうすることで、人と同じように理解することができ、複雑な交通環境でも識別が可能になるとしている。さらに人が見過ごすような危険リスクをAIは理解するので、データに基づき制御することも可能になってくる。
そのため、リアルワールドでの経験によって得られた知見・概念をフィードバックする「成長するAI」に位置付けているのだ。ホンダはこれまでのホンダ・センシングで得られた情報をクラウドにあげ、あらゆるリスクをアップデートすることで、一般道での対応を常に最新へと向上させていくことが可能になるというわけだ。ホンダはこのホンダ・センシングエリートを先進フラッグ技術に位置付けている。