ホンダ 燃料電池車と水素社会に向けた理念をアピール FCVコンセプトカーも日本初公開

ホンダ FCVコンセプト
FCV開発担当の清水潔氏(左)、伊東孝紳社長(中央)、FCV担当・執行役員の三部敏宏氏

2014年11月17日、ホンダは本社で「水素社会に向けたHondaの取り組み説明会」を開催し、伊東孝紳社長は、同社の水素社会に対しての取り組みを説明するとともに、リース形式で世に出したFCV「クラリティ」に続く第2弾となるFCVコンセプトカーを日本初公開し、2015年度内に発売したいと語った。 ホンダは、水素を燃料とするFCVについて、「作る、使う、つながる」というコンセプトの中に位置付けているという。作るとは、水素を電気分解で精製するオンサイト型の「スマート水素ステーション」を意味し、使うは文字通りFCVを使用すること、つながるはFCVの発電能力を生かし、社会の電力網と接続する、あるいは大規模災害時の非常用電源とするという意味だ。 このようなコンセプトの下で水素社会の実現のために取り組んでいくという。ただし伊東社長は2030年頃に本格普及ができたら望ましいと語り、相当に長期的な展望に立っていることもわかった。水素社会の普及のためには経済産業省や環境省など官民一体での取り組みとなることは言うまでもなく、説明会に登壇した経済産業省・資源エネルギー庁・燃料電池推進室長の戸邉千広氏、環境省・自動車環境対策課長の小野洋氏も官民一体の取り組みで推進すると語った。

ホンダ FCVコンセプト

ホンダ FCV コンセプトホンダ FCV コンセプト

ホンダ FCV コンセプト

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今回、日本で初公開されたFCVコンセプトは、実は2013年11月に開催されたロサンゼルス・オートショーでワールドプレミアされたもので、デザインもほぼ同一で、リヤホイールカバーがカットされている程度の違いだ。このFCVコンセプトをベースにしたクルマを2015年度内に発売する予定で、現状では2015年末~2016年初頭を念頭に置いているようだ。

ホンダ FCV コンセプト
2013年11月のLAショーでのFCVコンセプト
ホンダ FCV コンセプト
今回発表されたFCVコンセプト

伊東社長に続いて4輪R&Dセンター・FCV開発責任者の清水潔氏がFCVコンセプトの概要を説明した。新型FCVは、小型高出力の燃料電池パワートレインをフロントのボンネット内に格納し、リヤアクスルの直前とアクスル上に70MPaの水素タンクを配置。5人乗りのセダンパッケージとしながら、エアロダイナミクスを追求したデザインとしている。

ホンダ FCV コンセプトホンダ FCV コンセプト

ホンダ FCV コンセプトホンダ FCV コンセプト

ホンダ FCV コンセプトホンダ FCV コンセプト

小型化高出力化された燃料電池スタック、駆動用モーター&減速ギヤ、電圧コントロールユニットをワンパッケージとし、その容量はV6エンジンとほ ぼ同等だという。燃料スタックへの空気供給のために電動ターボコンプレッサーを装備し、1.7気圧に過給している。燃料電池スタックの出力は100kW以上、航続距離は700km程度と発表されたが、それ以外の諸元は公表されなかった。燃料スタック の出力は、トヨタのFCVとほぼ同等と見てよいだろう。

ホンダ FCV コンセプトホンダ FCV コンセプト

ホンダ FCV コンセプトホンダ FCV コンセプト

ホンダ FCV コンセプト

ホンダ FCVコンセプト
上から電圧制御ユニット、燃料スタック、モーター&減速ギヤユニットをワンパッケージに。
小型・高出力化された燃料スタック(発電部)
100kW以上という小型・高出力化された燃料スタック(発電部)。氷点下でも発電できる性能を持つ

今回はこのFCVコンセプトと同時に、FCVの電力を外部給電するためのAC出力装置の「パワーエキスポーター・コンセプト」も発表された。この外部給電出力装置は最大9kWを出力でき、家庭用としては100V/3kVA、大型エアコンや電池調理器用として単相3線100V・200V/6kVAが使用できるという。またEVからの出力もできるなど汎用設計となっている。

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初公開されたパワーエクスポーター・コンセプト(外部給電装置)
ホンダ FCVコンセプト
家庭への給電、大規模災害時の非常用電源としての使用を想定した汎用設計

また、すでにさいたま市で実証実験中のパッケージ型のスマート水素ステーションも改めてアピールされた。このオンサイト型水素ステーションは、コンプレッサーが不要な高圧水電解システムを採用し、35MPaまで加圧して1.5kg/日の水素製造能力を持つ。これはFCV2~3台分をまかなえる水素量だという。電気分解時に加圧状態とすることで昇圧して水素タンクに貯蔵し、高圧水素タンクから充填ノズルまでの主要構成部分を世界で初めてパッケージ型に収納したもの。小規模とはいえこのシステムにより、水素ステーションの設置工事期間と設置面積の大幅な削減ができるとしている。

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このようにホンダは、作る、使う、つながるという水素を巡る一連のサイクルを提案しているが、現状では水素燃料の価格もハイブリッド車の燃料代と同等になるようなレベルに設定されるとされており、クルマを使う側にとっては環境性能以外には大きなメリットが見えにくい点が課題だろう。

 

ホンダ公式サイト

COTY
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