【ホンダ】N-BOX試乗記 軽自動車の概念を超えたのか N-シリーズ

マニアック評価vol88
軽自動車市場はダイハツとスズキの一騎打ちという様相が、ここ何年も続いている。かつてホンダはN360というモデルで市場を席巻していた時代もあったが、近年では業界首位を狙うどころか、スズキや三菱のOEMモデルを販売する日産に差をつけられているほどなのだ。その危機を脱し、攻勢に出るためにホンダはNシリーズと銘打った商品力のあるモデルを続々投入してくる戦略に出たのだ。その第一弾がN-BOXである。かつてステップバンというモデルで人気を得たモデルを思い出させるようなスクエアなデザインが特徴で、子供でも絵に描きやすい親しみある四角いモデルデザインだ。特にAピラーは2本あるような形をしていて、死角を減らす目的なのだろうが、デザイン的にも新しさを感じさせる見た目になっている。

カスタム
N-BOXカスタムはターボエンジンを搭載

そもそもの設計思想にはマンマキシマム・メカミニマムというホンダのM・M思想があり、その究極を体現したとでも言える、革新的なモデルとして誕生している。そのため、軽サイズでありながらミニバンをライバル視するほどの快適空間と広さを持ち、期待を超えた使い勝手の良さを謳っている。

N-BOX
N-BOXはNAエンジン搭載でアイドルストップがつく

室内長は2180mm、高さ1400mmで軽ハイトワゴンではトップの広さを持っている。フロントシートは大きく大柄な男性でも十分なサイズ。アコードクラス並みという大きさがあり、ベンチタイプのセパレート式には好感が持てる。また、このシートは衝突した際、シートバックに沈み込んでヘッドレストで頭部を支えるという衝撃吸収に配慮されたものになっており安全面でも評価できる。

チップアップラゲッジ

↑チップアップすると、ベビーカーをたたまず乗せられる。→リヤシートはレバーを引くだけで、とても簡単にこの状態にできる

後席の広さも特筆できる。ホンダが特許を持つセンタータンクレイアウトにより、フロア面も低く、また、フロントシートの着座センターからリヤシート着座センターまでのタンデムディスタンスはクラストップという1150mmが確保され、大柄な男性2人が足を組める広さを持っている。その際、リヤシート後方の荷台にはポリタンク4本が積めるスペースが残っている。

カスタムリヤカスタムインテリア

↑カスタムのリヤビュー。→高級感あるカスタムのインテリア。

特に使い勝手の点で、N-BOXは苦心をし、自転車を楽に積めるというセールスポイントを実現している。というのは、開発者を含め様々な使用状況を検証した結果、子育てユーザーにとって自転車の搭載は重要なポイントになることがわかったということだ。

主に郊外や地方都市では、小・中・高校生の塾帰りや急な雨といったときに、迎えに行き自転車を積んで帰るということが多いというのだ。そのため、女性でもシートが簡単にたため、自転車も容易に乗せることができる重要性を訴求したというわけだ。

実際、リヤシートはレバーを引くだけで簡単に後席をたためる。また、リヤゲート開口部は広く上下に1200mm、左右で1055mmの広さがあり、27インチの自転車でも余裕で載せることができる。さらに、「簡単に」ということもポイントで、フロアが地面から480mmという低さがキーになる。つまり膝の高さぐらいまで、自転車の前輪を持ち上げれば車内に積み込めるし、自身が乗り込む動作自体も楽にできるというわけだ。

そして多彩なアレンジも可能で、27インチ自転車を載せて3人が乗車できる。また、26インチマウンテンバイクであれば2台、ベビーカーはたたまずにそのままリヤシートフロアに載せることもできる。そして両側スライドドアは開口部が640mmあり、フリードよりも広いなど、使用する現場での使い勝手を徹底的に研究した様子が伺える。

Aピラーメーター

↑Aピラーが2本あるようなカタチで死角を減らしている。→エコ運転になると、メーターがブルーからグリーンに代わるコーチング機能

質感の高いインテリアと軽快な操作感

運転席からの視界もミニバン並みの見晴らしがあり、気になるAピラーの死角も独特のデザイン処理で見やすくなっている。また、左側には「ピタ駐ミラー」と名付けられたミラーを使っての死角削減がされ、路肩への幅寄せや駐車をサポートしている。

インテリアの質感は高く、クラスを超えたレベルと言える。ダッシュボードのデザインも単調でシンプルにしたものではなく、2段にしてあり変化がある。メーターにもシルバー塗装がされ視認性も高い。また、エコ運転をしている場合、NAエンジンはメーターの周囲がグリーンになり、ターボ車はメーターの中心がブルーからグリーンになるコーチング機能もある。グレードによってはピアノブラックを用いたダッシュボードになっており、高級感すらキチンと演出されている。軽だから安っぽいというイメージを払拭している。その質感の高さには驚かされるだろう。

カスタムAピラー

↑ピアノブラックを用い、高級感あるカスタムのインテリア。→光学式のピタ駐ミラー。左フロント周辺の死角を減らしている

搭載されるエンジンは新開発の3気筒660ccのNAと同じくターボの2種類。エンジン搭載位置をフロントへ移動させたことから、衝突した際、エンジン自体も偏平変形し衝撃吸収をするという革新的なエンジンを搭載している。新NCAPで4つ星という世界基準の安全性を持っているN-BOXは、クラッシャブルゾーンがもともと狭いが、N-BOXでは衝突した時にコンプレッサーがスイングし、ウオーターポンププーリー、触媒がつぶれ現行のエンジンサイズよりも84mm小さくなり、エンジンをつぶすことでクラッシャブルゾーンを確保しているのだ。

この革新的エンジンはNAが43kw(58ps)/7300rpm、65Nm/3500rpmでJC08モード燃費は22.2km/L。一方のターボエンジンは47kw(64ps)/6000rpm、104Nm/2600rpm、JC08モードは18.8km/Lというスペックになる。組み合わされるミッションはCVTで、NAエンジンにはアイドルストップ機能が搭載される。

スペックからも分かるように、低回転から最大トルクの出るターボ車のほうが乗りやすい。乗り比べてしまうとその差は歴然と感じてしまうが、NAでも市街地走行で不満はない。が、ややエンジン音が大きいかもしれない。もっともモノスペースのワンボックスタイプはロードノイズやエンジンノイズ、振動などの点で3ボックスよりも不利である点は考慮しなければならない。

フロントシートビュー

↑標準車のフロントシート。サイズはアコードクラスと同等の大きさ。→ミニバン並みの視界があり、安心感がある

乗り心地はどちらのモデルとも硬いアタリはなく、クラスレベルの乗り心地を持っている。ステアリング操作も軽く、扱いに重さを感じる部分はない。特筆したいのは、アクティブセーフティが充実していることだ。

軽自動車とし初めて、車両安定装置を全車に標準装備している。横滑りの防止や急激な挙動変化を抑えるVSA(車両挙動安定化制御システム)を備え、さらに、坂道発進時の後退を抑制するHSA(ヒルスタートアシスト機能)を装備しているのだ。

シンプルなデザインだけに、今後アフターパーツを使ってのドレスアップなども楽しいモデルといえるかもしれない。個性的にデザインしていく新たな楽しみを持った革新的K自動車と言えるだろう。

●価格124万〜178万円 ●全長3395mm×全幅1475mm×全高1770mm・カスタム1780mm(4WDは1790mm・カスタム1800mm) WB2520mm ●車両重量930kg・カスタム950kg(4WDは990kg・カスタム1000kg〜1030kg) ●最大出力43kw(58ps)/7300rpm 最大トルク65Nm/3500rpm ターボ47kw(64ps)/6000rpm 最大トルク104Nm・2600rpm ●JC08タイプG FF 22.2km/L ターボ4WD18.2km/L

ホンダ公式サイト

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