マニアック評価vol76
4代目CR-Vがデビューし、月販目標1500台を軽くうわまわる3000台という受注をうけヒットしている。そもそもCR-Vは世界戦略車としてデビューし、1995年に初代が発売されてから160カ国以上の北米、欧州、アジアなど各国で販売され、累計500万台の販売実績を持ち、グローバルで人気の高いSUVである。がしかし、なぜか国内での販売は不調で、月販300台にも満たないとい状況だった。それが、この4代目でついに国内でもブレークしたのだ。
4代目CR-Vは、これまでの開発コンセプトも踏襲しながら、エフィシェント、コンフィデンス、ファンクショナルを互いに相乗効果で高めあいながら、ひとつに融合してくことがCR-Vのコンセプトだという。つまり、乗用車、ミニバン、SUVのいいとこ取りをしたのが4代目CR-Vであるという理解になる。
そして、このモデルチェンジでは開発エンジニアの意識にも大きな変化があったという。技術開発室の関根和弘氏によると「これまで改良というのはスペックにおいて、改良してきました。それが、スペックよりも官能評価を重視したクルマ造りがいいという方向へ転換しました。具体的に大きく変化したのは、官能評価を大人数による平均値とするやり方ではなく、少人数での評価。さらに、ブラインドテストを社内スタッフへ繰り返し行うことで、ベストなものを探すというやり方を取り入れました。クルマの運転に長けてないものにもブラインドテストをし、その人たちからもいいね、と評価されるものを造りました」ということだ。
上質な乗り味と高級感
そのためには、さまざまな改良が加えられたのは言うまでもないが、早速試乗して、その変化を感じてみたい。試乗したモデルは2.0Lの20GでFFモデル、そして2.4Lの24Gの4WDモデルをテストドライブしてみた。
走り出して真っ先に感じるのは、しなやかな動きとしっとりとして上質な乗り味というフィーリングだ。それは、言い換えると硬い感触がどこにもないからだ。ソフトタッチなインテリア、手触りのいいステアリング、路面からのロードノイズを抑えた静粛性、そして衝撃をソフトにいなしているサスペンションなど、さまざまな要因によって感じられたのだろう。
広い室内空間には大きめのシートが用意され、シートのハイトアジャスターやステアリングのテレスコピックなど、ドライビングポジションが好みの位置に取れるあたりはさすがにグローバルカーであると感じる。そしてキャビンフォーワードされたフロントウインドウのAピラーの死角も少ないために、広々としながらも安心感が生まれてくるわけだ。
この点についてCR-Vは乗用車ライクな扱いやすさを取り入れるために、着座姿勢も細かく研究されている。それはパッケージとして、従来モデルより室内長を225mm延長しつつもボディ全長を30mm縮小し、全幅も従来モデルと変わらない。しかしながら室内幅は75mm拡大している。全高も-5mmだが、従来同等のヘッドクリアランスも確保されていることなど、キャビンの設計見直しが大きく影響し、SUVにありがちな腰高なドライビングポジションという印象がないのだ。
しなやかに感じるというクルマの動きは、サスペンションとボディを細部にわたり改良したことが大きい。とりわけ、リヤのサスペンションではダンパー下側の取り付け位置を下げていることがポイントになる。これは、アッパー部の取り付け位置に変化はないので、ダンパー全体の長さが単純に長くなるわけで、ダンパー容量が約10%アップしている。容量がアップすればダンパー内部のガス圧もコントロールしやすくなる。さらに、レバー比にも好影響があり、ストロークが大きくなったときのレバー比変化は従来よりも小さくなるため、ダンパーが持つ本来の減衰力を発揮させることができるわけだ。したがって、乗り心地がよくなり、しなやかな動きと感じられるということに繋がるのだ。
もちろん、リヤダンパーだけではなく、ボディそのものも補強されている。前出の関根和弘氏によれば「超高張力鋼板を使うというより、鋼板の形状と板厚をもう一度見直し、効率的な剛性を考えました」というように、特にリヤまわりのボディを補強している。リヤサスペンション取り付け部やテールゲートとリヤサスペンション取り付け部の結合強化、連続閉断面構造を採用したテールゲート開口部とフロントバルクヘッドを補強し、その結果、静剛性値では、曲げ剛性で従来比7%向上、ねじり剛性で9%アップし、ステアリングレスポンスや乗り心地を高次元でバランスさせる工夫がされている。
また、遮音性も上質と感じさせる要素のひとつだ。ボディ強化にともない、振動の発生も抑えつつ、効果的に吸・遮音材を追加配置している。特に、ボンネット、ダッシュボードのインシュレーター、アウターの領域拡大や吸音性の拡大、厚み増加がされ、エンジンルーム内からの音を低減している。また、フロントフェンダー、フロアカーペット、ドア下部、などに遮音シートの追加や吸音材も追加されている。さらにテールゲートライニング内にも吸音材が追加され、後席でも静粛性が高く、ワンランク上の静粛性を得ている。
国内専用に2.0L FFモデルを投入
さて、これら上質なフィールを得るために改良された新型CR-Vを牽引するパワーユニットだが、従来の2.4Lモデルに国内専用として2.0LFFモデルが追加されている。冒頭で説明した月販3000台というオーダーのうち、その約半数以上(52%)がこの2.0LFFモデルを購入している。
実際、試乗してみると、パワー不足やトルク感がないという印象はなく、十分な走行性能をもっていると感じた。もちろん、2.4Lと乗り比べてしまえば、力強さみたいなものは細く感じてしまうが、単体で考えれば満足できるユニットだろう。ただし、試乗した環境は東京の臨海エリアであり、フラットな道路状況、碁盤の目に区画整理された道路、短時間の試乗という条件であったことは付け加えておく。逆に言えば都市部で使用するのであれば、ベストチョイスということだ。
この2.0Lモデルは可変吸気量制御するi-VTECエンジンで、DBW(ドライブ・バイ・ワイヤ)であるため、スロットルバルブを最適に制御できる。低負荷走行時に吸気2バルブのうち1バルブを遅閉じとして必要な混合気量に調整する仕組みを持っている。このエンジンにトルクコンバーター付のCVTが組み合わされる。さらにロックアップ制御もされるために、燃費性能にも貢献し、レスポンスの点においてもCVTのネガな部分は感じにくい。その結果、110kw(150ps)/6200rpm、191Nm/4300rpmの出力で、JC08モード14.4km/L(10・15モード15.4km/L)というスペックになっている。
一方の2.4Lモデルは、従来の2.4Lより圧縮比を上げ、また吸気バルブタイミングをエンジン負荷に応じて連続的に制御するVTCを採用することで、燃費性能、出力向上を図っている。組み合わされるミッションは5速ATで、2速の高回転域からロックアップするように領域の拡大がされている。スペックは140kw(190ps)/7000rpm、222Nm/4400rpmで、燃費はJC08モードで11.6km/L(10・15モード12.2km/L)となっている。
そして評価したいもうひとつは、全車にアダプティブセーフティを標準装備していることだ。それは、ドライバーオリエンテッドな点からすると、電動パワーステアリング(EPS)を機軸としたVSA制御が挙げられる。2.4Lモデルの場合はさらに前後輪トルク配分の制御が加わるのだ。
VSA制御とはABSとTCS、横滑り制御、そしてヒルホールドアシストの制御を総称した車両挙動安定化制御システムである。そのVSAが電動アシストのパワーステアリングと協調制御されている。車両が不安定な挙動を示した場合、電子制御された制動力を分配するABSが働く。または、4輪のブレーキ圧のコントロールや左右別々の制動を行い車両の安定を図る、あるいはエンジントルクを抑えるTCSトラクションコントロールなどが同時にまたは、別々に働き、それと同時に、ステアリングは挙動の乱れを収めやすいように操舵力をアシストするモーションアダプティブEPSが働く。
つまり、アンダーステア、オーバーステア、雪道、横滑りなど不安定要素をもった瞬間にVSA制御が働き、ステアリングは必要な操舵のときには軽くなり、不要な操舵のときには重くなるようにしてある。ドライバーが不要な操舵をしないように、車両が教えてくれるというもので、切りすぎたり、切り遅れたりしないような協調制御をしているというわけだ。さらに、坂道での発進時に車両が後退しないようにブレーキ圧を1秒間保つ、ヒルスタートアシストもある。ちなみに、下り坂のバックでの登坂時にもこの機能は働く。このように、複雑な制御システムが2.0L、2.4Lともに全車標準装備というのは高評価になる。
これまで北米を中心に人気を得ていたCR-Vだが、中国をはじめアジアでも基幹モデルとして成長している。そして、国内でも人気を得たことから、国内市場に一石を投じたことは間違いない。
●価格20G 2.0L+CVT FF 248万円 ●全長4535mm×全幅1820mm×全高1685mm WB2620mm ●最大出力110kw(150ps)/6200rpm 最大トルク191Nm/4300rpm ●JC08モード 14.4km/L(10・15モード 15.4km/L)
●価格24G 2.4L CVT(5速パドルシフト付) 4WD 275万円 ●最大出力140kw(190ps)/7000rpm 最大トルク222Nm/4400rpm ●JC08モード 11.6km/L(10・15モード 12.2km/L)