【ホンダ】 2モーター式プラグインHVと1モーター式HVの両刀作戦か

ホンダは、これまでエコカーとして1モーター式のパラレルハイブリッドカーを前面に押し出してきていた。また福井前社長は、電池容量を格段に大きくするプラグインハイブリッドシステムには否定的だったのも特徴だったが、2009年に伊東社長が就任して以来、全方位のエコカーを開発して行く方向に大きく舵を切った。

その結果、従来から推進してきた燃料電池車(FC)、1モーター式のパラレル式ハイブリッドカー以外にEV、2モーター式ハイブリッドカー、プラグインハイブリッドカーの開発に一気に拍車がかかった。

そして、2010年10月から熊本県で、12月には埼玉県とカリフォルニア州トーランス市でも自治体と環境分野における協力協定を結び、実証テストを開始している。このテストに参加するのは、自動車はEVと2モーター式プラグインハイブリッドカー、2輪は電動バイク(EV-neo)、さらにカートタイプのEV(モンパルML200)の4機種である。

EVは、FCのクラリティ(試験車両)と同じ駆動モーターを採用し、最高出力93kW。電池は東芝製リチウムイオン電池を搭載している。EV航続距離は160km以上、最高速140km/hとなっている。充電時間は100Vで12時間以下、200Vで6時間以下、急速充電(80%充電)で30分というスペックである。

注目すべきはホンダ初の2モーター式プラグインハイブリッドカーで、これはインスパイアをベース車としている。言いかえると、シビック以下のクラスは従来からの1モーター式、アコードクラス以上は2モーター式を想定していると想像できる。また、1モーター式はエンジンとモーターの間にクラッチを装備していないが、2モーター式は複数のクラッチを採用していると考えられる。

2011年人とくるまのテクノロジー展に出展されたインスパイヤーベースの2モーター・プラグインハイブリッド

インスパイアをベースにした2モーター式ハイブリッドカーの仕様は次の通り。エンジンはアトキンソンサイクルを採用した4気筒2.0Lのi-VTEC。出力は100kWだ。トランスミッションはECVTとされ、遊星ギヤを使用せずクラッチのみでコントロールすると考えられる。

駆動用モーターの最高出力は120kWと強力で、この出力はシボレー・ボルトのそれより大きい。発電兼用モーターの性能は発表されていないが、このモーターも駆動力アシストを行うと見られる。電池はブルーエナジー社製のリチウムイオン電池で、容量は6kWh。すなわちプラグイン・プリウスより10%ほど容量は大きい。

EVモードでの航続距離は25km(JC08モード)で、最高速度は100km/hとされている。充電性能は、当初は100Vで4時間以下、200Vで1.5時間以下とされていたが、最新情報では100Vで2〜2.5時間、200Vで1.5時間以下と、100Vでの充電時間が短縮されている。

注目の走行モードは、EVモード、ハイブリッドクルーズモード=2モーターアシスト(エンジンの駆動力と2モーターの駆動力を混合)、ハイブリッド加速モード=アクセル開度モーターアシスト(アクセル開度に合わせてモーターアシスト量を制御)、エンジンドライブモード=高速クルージングではエンジンのみで走行(加速するとモーターアシストが加わる加速モードに移行)となっている。

その意味では、エンジンとモーターの役割をきちんと行うシステムで、シボレー・ボルトのコンセプトとは異なり、むしろBMW・X6ハイブリッドのコンセプトに近い。このクルマは現在実証実験中であり、このスケジュールから考えると早ければ2012年中盤頃に発売されると考えてよいだろう。

文:編集部 松本晴比古

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