ダイハツと前田建設は2025年11月6日、12月から2年間の予定で、茨城県取手市にある前田建設のイノベーション実装施設「ICI総合センター」で、複数施設向けマイクログリッドシステムの実証実験を開始すると発表した。

マイクログリッドとは、電力消費地の近くに配置された太陽光発電などの発電設備と、蓄電池などを組み合わせて、地域単位で電力を供給・管理する小規模な電力網のことだ。
トレーラーで牽引できる20フィートコンテナに蓄電池とスマートパワーハブ(SPH:豊田中央研究所とダイハツが共同開発した電力変換器)を設置し、被災地やイベント会場などに移動させることが可能。また、太陽光発電との接続により、現地で安定的な電力供給を実現することが可能という特長も持っている。
ダイハツが2025年度導入を予定している商用軽バンEVをこのシステムに組み込むことで、蓄電容量を増やすとともに、非常時などには電力の融通も可能だ。
前田建設は、公共施設や住居・店舗・工場等建築のライフサイクル全てにおけるカーボンニュートラルを推進すべく、カーボンニュートラルな建築化に取り組んでおり、再エネの積極的な導入を進めている。また、自社で運営しているICI総合センター内にある「ICI-Camp(研修施設)」の体育館が取手市との防災協定により、市民の避難所になっているため、停電時の電力供給が必要だ。さらに、被災地での復旧活動を行なう中、太陽光発電、風力発電など現地の再エネとの接続が容易で、かつ移動可能な非常用電源の必要性もある。
ダイハツは電動化等による車両走行時のCO2排出量の削減に加え、工場や物流、販売店舗といった生産・非生産分野での脱炭素化などの課題があり、再エネの有効活用に向け、エネルギーを地産地消できるマイクログリッドシステムの研究開発を推進し、システムの有効性ならびに信頼性が確認できる実証実験場所を検討していた。
前田建設とダイハツは、直面する上記の課題解決に向け、2023年からコラボレーションを開始。マイクログリッドシステムによる持続可能なエネルギー供給と不測の事態が発生した際に被害を最小限に抑え、事業を継続・復旧させるための「事業継続計画」の策定・準備を実現すべく、今回の実証実験の開始となっている。
システムは、3ポート(発電、蓄電、使用の3方向接続)電力変換器「SPH」の特長を活かし、太陽光発電や蓄電池、EVといった直流機器と接続できる。交流主体のマイクログリッドに比べ、電力変換回数が大幅に少なく、エネルギーロスを約45%削減できるのがメリットだ。また、ハイブリッドシステムのインバータ技術を応用した低コスト・高効率なパワー素子の採用により、瞬時の電圧変動や瞬停時(約1分未満)、停電時においても継続して電力を供給することができる、という特長を持っている。
実証実験は、前田建設の「ICI-Camp」で、太陽光発電で作られた電気を体育館および食堂に電力を供給し、余った電気は蓄電池や「BEV商用軽バン」のバッテリーに蓄電する。
平常時は、日中一時的に電力のピークが高まる厨房に接続し、電力消費の平準化によるCO2の削減効果を検証するとともに、災害等による停電時を想定し、太陽光発電や蓄電池により体育館へ継続した電力供給を行なう。
このような使用条件の異なる複数施設でのマイクログリッドシステムの実証実験を行ない、信頼性が確認できた後、20フィートコンテナを実際に移動させ、太陽光発電との接続による電力供給やEV商用軽バンを用いた複数建物間での電力融通の検証も行なうことになっている。













