2012年12月20日、ダイハツは、軽乗用車「ムーヴ」をビッグマイナーチェンジし、同日から発売を開始した。今回のマイナーチェンジは異例ともいえる大幅改良を行い、燃費性能向上に加えて、走りの基本性能、安全性能、デザインなどを大幅に進化させている。
5代目となるムーヴは2010年12月に発売されたが、まる2年が経過し今回のビッグマイナーチェンジを迎えた。今回のマイナーチェンジでは、「ミラ・イース」で採用した低燃費技術「e:Sテクノロジー」をさらに進化させて採用し、軽ハイトワゴンクラストップの燃費、29.0km/L(JC08モード)を実現し、クルマ本来の基本性能である「走る、曲がる、止まる」を追求し、安定した走り、快適な乗り心地、上質な室内空間を達成。さらに軽自動車初となる衝突回避支援システムも採用。
デザイン面でもフロントマスク、インスツルメントパネルを変更。安心感や存在感が感じられるデザインとしている。低価格という軽自動車の柱を堅持しながら、走りのレベルは1.3Lクラスの小型車に匹敵させるというコンセプトである。
燃費向上のための「e:Sテクノロジー第2弾」は、ミラ・イースで採用された技術をベースにさらに細かな改良を加えている。
まずエコアイドル(アイドルストップ)は減速中の作動速度を従来の7km/hからを9km/hからとより早い作動タイミングに改良し、アイドルストップ時間を拡大した。またCVTの油圧系は軽自動車初の熱マネジメント、つまりCVTフルード冷却にエンジン冷却水を使用したウォーマー/クーラー・システムを採用し、常に最適温度にコントロールできるようにして摩擦抵抗を低減した。CVTフルード自体も、より低粘度化させ、減速比もハイギヤードに変更している。
細部では、吸気温度を下げるために、車外からの吸気としたり、イオンセンサーを利用した気筒ごとの点火時期制御やEGRの採用、車高ダウンとフロント形状変更によるの空力性能の向上、タイヤ空気圧のアップなどの積み重ねにより、競合車のワゴンRを上回る29.0km/Lの燃費を実現している。なおエンジンやCVTのハードウエアなどは変更はない。
シャシーは、今回のマイナーチェンジで足回り部品を全車で共通化した。つまり従来はカスタムにのみ設定していたフロント・スタビライザー、カスタムRSのみに採用していた-15mmのローダウン・スプリングを全車共通の仕様としている。スプリングレートは下げながらロール剛性をアップし、同時に操舵のリニア感を向上、前後ブレーキのサイズアップなども行い、1.3Lコンパクトカー並みの安定した走りとしている。
また低速走行時から高速走行時までの静粛性向上、振動の低減を行っている。振動や騒音の伝達経路の剛性の向上や、吸遮音対策を徹底することで、静粛性能についてもコンパクトカークラスと同等レベルに仕上げているという。
今回のビッグマイナーチェンジの大きなトピックの一つが、衝突回避支援システム「スマートアシスト」の大幅な標準装備化だ。
じつは従来モデルの「カスタムRS」には、軽自動車初となるレーザーレーダーを利用したプリクラッシュセーフティ/車載カメラを利用した車線逸脱警報機能、全車速対応型レーダークルーズコントロールを「インテリジェント・ドラインビングアシストパック」としてオプション設定された。
今回は、近距離の衝突回避支援にターゲットを絞り、低コストにすることで標準装備グレードを拡大(「SA」の名称が付いたモデルは標準装備)することを目的にしている。もちろんこれも軽自動車初の快挙となる。
障害物検知用のセンサーにはレーザーレーダーを採用し、約4〜30km/hで走行中に、レーザーレーダーが前方車両や障害物を認識し、衝突の危険性が高い場合に、ブザーとメーター内のインジケーター表示でドライバーに警告。その後もドライバーがステアリングやブレーキで回避操作せず、衝突の危険性が非常に高まった場合に緊急ブレーキが作動する。相対速度が約20km/h以下の場合は衝突回避、約20〜30km/hの場合は、被害を軽減するシステムになっている。
また付加機能として、停止中または10km/h以下で走行中に、前方約4m以内に障害物(建物や壁など)がある状況で、ペダルの踏み間違いなどにより必要以上にアクセルを踏み込んだとシステムが判断した場合は、ブザーとメーター内のインジケーター表示でドライバーに警告するとともに、エンジン出力を制御し、発進を抑制する「誤発進抑制制御」の機能も備えている。エンジン出力の抑制制御はアクセルを踏み続けている間、最長約8秒間継続する。
さらに付加機能として「先行車発進お知らせ機能」も備えている。信号交差点や渋滞などで先行車に続いて停車した場合、先行車が再発進しても自車が発進しなければブザーとメーター内のインジケーター表示でドライバーに告知する機能だ。もちろんこのスマートアシストを備えるグレードはVSCも一体で装備される。
デザインでは、ムーヴはシンプルでスマート、安心感のあるスクエアスタイル、ムーヴ・カスタムは存在感とプレミアム感のあるスポーティスタイルで、こちらは軽自動車初の4連LEDヘッドライトも採用。
インテリアは、ムーヴ、ムーヴ・カスタムともにインスツルメントパネのデザインを変更し、文字サイズを拡大した自発光式メーターを運転席前配置としている。ダッシュまわりは、ムーヴはベージュをアクセントにした2トーンインパネを採用し、ムーヴ・カスタムはブラック基調の室内に、オーディオパネルのブラック加飾やシルバー加飾をアクセントにしている。メーターはメッキリングや立体目盛で高級感を演出した自発光式3眼メーターを採用している。
新型ムーヴ、ムーヴ・カスタムは価格も競合モデルより低く抑え、価格、性能、走り、静粛性など総合力で軽自動車首位の座を確かにする戦略だ。軽自動車の覇権を巡る競争は一段と加速したといえる。