フォルクスワーゲンのCセグメントSUV「ティグアン」が第3世代にフルモデルチェンジを行ない、試乗することができたのでお伝えしよう。
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スペック詳細は上記のリンクから見ていただくとして、概要をお伝えすると7年ぶりのフルモデルチェンジで、プラットフォームがMQBからMQBevoへと変わり、さまざまな機能がアップデートされている。エンジンラインアップは1.5Lガソリンのマイルドハイブリッドと2.0Lディーゼルターボの2タイプ。
今、欧州はEVへのシフトチェンジを行なっているが、そのEVの販売は中国勢に押されたり、富裕層へ一巡したことで踊り場だと言われたり、さらにウクライナの戦争も影響し景気は後退している。とくにドイツ国内の経済状況は悪く、自動車産業では「なにもしない」でじっと耐えているような状況だ。
とりわけフォルクスワーゲンでは工場閉鎖のニュースがあったりと、急激なEVシフトの煽りを喰らった形になっている。しかし、欧州から日本を見るとEV市場は途上中であり、またエンジン車へのこだわりが強いことなどから、その保守的国民性がここにきてディーゼルやエンジン車が売れるチャンスとばかりに販売攻勢を仕掛けている。逆に日本のインポーターはEVシフトにより、販売モデルが限定的なことから「売るクルマがない」状況だったわけで、相思相愛な状況が1、2年は続きそうだ。
そうした背景からか、ティグアンには2019年にディーゼル+AWDモデルが国内で5400台も販売したヒット商品があることから、この第3世代でこの組み合わせを復帰させて導入したのだ。
国内でのEV化は限られている環境で、ハイブリッドかPHEV、ないしディーゼルが正解というユーザーも多い。そうしたマーケットニーズは継続しているわけで、VWとしては大事な市場というわけだ。
今回、試乗したモデルは残念ながらこのディーゼルには乗れず、1.5Lガソリンターボ+マイルドハイブリッドモデルだった。これに7速DCTが組み合わされている。
エンジンは110kW(150ps)/250Nmを発揮するEA211evo2型エンジンで、アクティブ・シリンダーマネージメント(ACT)機構を搭載し、4気筒のうち2気筒を、従来より頻繁に停止して走行することで効率を高めている。
また48Vマイルドハイブリッドは水冷式の48Vベルトスターター・ジェネレーターを組み合わせており、滑らかな再始動と回生を行なっている。
このエンジンでワインディングと一般道を走行したが、最初に2.0Lターボか?と勘違いをさせるほど力強さを感じた。1.5Lターボで大柄なティグアンの重量をいとも簡単に加速させるパワーは扱いやすい。低速域でのレスポンスとトルクの味付けがよくできているのだ。
全長は4545mm、全幅1840mm、全高1655mm、ホイールベース2680mmで、ホイールベースは先代と変わらないが全体に少し大きくなっている。寸法的には少し前のDセグメントサイズの大きさになっている。さらに今回、ボンネット高を高くしたため、より大きさと迫力を感じるのだ。それでいて燃費は15.6km/L(WLTC)なので、納得できるスペックだと思う。
そしてもうひとつキーになるのがサスペンションだ。ディーゼルモデルに標準装備されるDCC-proはダンパーの伸び側と縮み側を個別に制御できるため、スポーティなハンドリングとコンフォートな乗り心地が両立できたとアピールしている。このDCC-ProはeTSIガソリンモデルのR-LineとTDIの全グレードに標準装備される。
機能面では運転支援機能のトラベルアシストもアップデートされており、レーンチェンジ・アシストシステムなど最新の状態になっている。またインテリアも10.25インチの標準装備デジタルメータークラスターや15インチタッチスクリーンなどアップデートされているが、タッチ式はやはり操作性としてはいまひとつの印象は否めない。とくに右手が利き手のため左手での操作ということも影響している。
さて、乗り心地や静粛性は高級車レベルで、プレミアムモデルとの境界線がわからなくなる。レザーシートにベンチレーション付きで、リラクゼーション(マッサージ)機能まで装備されると高級車以外の何者でもない。静粛性も高く、しなやかな乗り心地だ。サスペンションがよく動くだけにボディの剛性が感じられ、どっしりとした安心感のある乗り味になっている。
これはサイドウインドウに遮音ガラスを採用した効果が高い。サイドウインドウからの風切り音も抑えられ、ロードノイズも聞こえにくくなっている。このあたりは空力特性も影響し、Cd値は0.33から0.28へと向上しているのだ。SUVでこの数値はある意味驚異的でもある。
新型ティグアンは、高級の大衆化を具現化したようなモデルで、ピープルズカー=国民車のフォルクスワーゲンが作ると量販車でもここまで高級になることを体験した。
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