マニアック評価vol643
フォルクスワーゲンのCセグメント+サイズのSUV「ティグアン」はMQBプラットフォームを採用した2代目として2016年から発売されている。2017年に日本に導入されたティグアンは、1.4L TSIエンジンに6速DSGを搭載したFFモデルのみだった。
しかしヨーロッパでは、エンジンバリエーションとして1.4 TSI以外に、2.0 TSI、2.0 TDIがラインアップされ、4WDモデルの4MOTIONも設定されている。またホイールベースもショートタイプと、ロングタイプがあるなど、グローバルモデルらしい幅広い車種展開となっている。2017年にはグローバルで77万台が販売されたという。
そして2018年8月から、ようやく日本に最新のクリーンディーゼル、2.0L TDIエンジンを搭載し、4MOTIONと組み合わせたSUVとしての本命モデルが導入され、試乗の機会があったのでお伝えしよう。
ティグアン 2.0 TDI 4MOTIONの特長
ティグアンはかなりスクエアなボディデザインで、一見すると小型のミニバン風にも見えるので、SUVとしての認知度が高いとはいえないが、初代は2007年にデビューしたCセグメント+サイズのSUVのパイオニア。アウディQ3とともにフォルクスワーゲン・グループがグローバルに販売する重要車種だ。
ボディサイズは全長4500mm、全幅1840mm、1675mm、ホイールベース2675mmで、Cセグメント+としては全長は短めだが、横幅は大きめだ。
FFモデルでも、その走りは同クラスのSUVのベンチマークというに相応しい高いレベルにある。そして2.0 TDIと4MOTIONの組み合わせはどうか、興味がそそられるが、残念ながら今回の試乗では4MOTIONの威力を試すシーンはなかった。
※関連情報:フォルクスワーゲン 新型ティグアン 試乗記 ベンチマークというにふさわしいMQB世代のSUV
しかし、以前からティグアンの4MOTIONは本格SUVに勝るとも劣らないラフロードの走破性は、海外では定評があり、走破性能はスバル フォレスターの開発目標になっているほどだ。
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ディーゼルエンジンと4WDモード切替
搭載される2.0L TDIエンジン(EA288型)は、すでにパサートに搭載されて販売されているが、パサート用は190ps/400Nmであるのに対し、ティグアン用は150ps/3500-4000rpm、最大トルク340Nm/1750-3000rpmとパワー、トルクが抑えられ、エンジン特性はより低速型にチューニングされている。
ただし高圧・低圧EGR、可変ジオメトリー・ターボ、酸化触媒、DPF、尿素水噴射式SCR触媒というディーゼル排ガス対策は共通だ。そしてティグアンはこの最新のEA288型ディーゼルと新世代の7速DSGを組み合わせている。この7速DSGは最大420Nmまでの許容トルクを持ち、変速比幅は6.2。超クロスレシオと低フリクションを実現している。
4MOTIONは、第5世代の電子制御油圧クラッチを使用し、プレビュー制御を採用したハルデックス・カップリングで、リヤデフと一体化され、リヤサブフレームにマウントされている。
4WDの駆動モード切替ダイヤルは、シフトレバーの近くに配置され、駆動モードとドライビング・プロファイル(ドライブモード)の両方を操作できる。ただし、ドライビング・プロファイルの選択はダイヤル中央を押し、センターコンソールのモニター画面で「エコ、ノーマル、スポーツ、個別、コンフォート(DCC装備車のみ)」のいずれかをタッチして選択する。
一方、駆動モードはダイヤルを回転させて選択する。この駆動モードは、オンロード、スノー、ラフロード、ラフロード・カスタムの4モードから選択できる。この駆動モードは、4WD制御だけでなくESPのトラクションコントロールやアクセル特性もトータルで変更され、路面に合わせてコントロールしやすい最適制御となるのだ。
このようにラフロードの走行も想定したクルマなので、最低地上高は180mm、前後のアプローチ、デパーチャー角も悪路を走破できるように設定されている。
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試乗インプレッション
走り出すとすぐに、ディーゼルエンジンとはいえ静粛で滑らかなフィーリングが実感できる。また出足から強力なトルクが湧き上がり、加速力もなかなかだ。一方でエンジン回転を4500rpmあたりまで引っ張るとトルクは頭打ちになり、やはりパサート ディーゼルよりは低速重視の特性であることが感じられる。
なので、Dモードは早め早めのシフトアップが行なわれる。強力なトルクを活かすことで、積載が多い状態での登坂なども全く苦にならないだろう。一方で最高速は200km/hに達するレベルで、100km/h巡航では1500rpmほどで、高速走行にも余裕がある。
もちろんアダプティブクルーズコントロールをONにすると、車間調整からレーンキープまでするから長距離ドライブでも疲れ知らずだ。
試乗車はTDI 4MOTION ハイラインで、オプションのレザーシート(28.8万円)、DCC(連続可変ダンパー)パッケージ(21.6万円)を装備し、タイヤは19インチ(235/50R19)サイズが装着されていた。DCCはあえてコンフォートにしなくてもノーマルの状態でも乗り心地は文句なしだ。スポーツを選べばより締まったフィーリングにはなるが、路面の凹凸をいなすしなやかさがあり、乗り心地が悪化することはない。
またピッチングを抑えたフラットな乗り心地なので、前席だけではなく、リヤに乗った人にとっても疲れにくい乗り心地といえる。さらに特筆すべきは、舗装が荒れた路面でもフロアのブルブル感やドタバタ感がなく、ボディ全体のがっちりとした剛性感はクラストップレベルということができる。ハンドリングも安心感があり、背の高いSUV的なフィーリングを感じさせないで峠道を走り抜ける。
シートはこれまでと同様にクッションのタッチは硬いが、腰や肩のホールド性がよく、長時間乗っても疲れにくいという点では、よく作り込まれたシートだ。シートの印象はリヤ席でも同じだ。リヤシートは座面もたっぷりあり、リクライニング調整角度が大きく、リヤ席の居住性はクラス随一といえるほど優れている。またフロントシートの背面には格納式テーブルがあり、リヤシートの乗員はこの角度調整式のテーブルやカップホルダーを利用できるなど、けっこう細かな配慮がされていることがわかる。
インテリア全体はダークな色調で、色気がないビジネスライクな印象を受ける。地味そのものといったインテリアだが、収納スペースが多く、実用性、使い勝手のよさもトップレベル。またインテリアのトリム類やシートなどの仕立てのよさ、質感の高い作り込みはこのクラスのライバルを上回っている。<レポート:松本晴比古/Haruhiko Matsumoto>