フォルクスワーゲン 電気自動車攻勢 ツヴィッカウ工場で本格生産開始【動画】

フォルクスワーゲンは2019年11月4日、「ID.3(アイディ.スリー)」の本格的な生産が開始されたことを発表した。新世代電気自動車の最初の1台となるホワイトの「ID.3」が、ドイツ連邦共和国のアンゲラ・メルケル首相と、フォルクスワーゲン・グループ最高経営責任者ヘルベルト・ディースCEOが見守る中、ラインオフした。

メルケル首相、ディースCEOらがラインオフ式に参列
メルケル首相、ディースCEOらがラインオフ式に参列

空前のEV大量生産計画

フォルクスワーゲン・グループは、2028年までに世界中で約2200万台の電気自動車を販売し、電気自動車の本格的普及を目指している。ツヴィッカウ工場は、この計画を実現する上で重要な役割を担っている。今回初めて、大規模な自動車工場が完全なe-モビリティ専用工場への切り替えを行ない、投資額は12億ユーロ(1445億円)に上るという。

スピーチするメルケル首相
スピーチするメルケル首相

ツヴィッカウ工場では2020年に約10万台の電気自動車を生産することを予定している。2021年以降は、年間最大33万台の電気自動車が生産される計画だ。それにより同工場はヨーロッパ最大、かつ最も効率的な電気自動車工場となり、今後フォルクスワーゲンのグローバルでの電動車生産への転換においても先駆的役割を果たすことになる。

MEBを採用する第1弾、「ID.3」
MEBを採用する第1弾、「ID.3」

「ID.3は、e-モビリティのブレークスルーに重要な役割を果たします。このクルマは、何百万人もの人々にクリーンなパーソナルビリティへの道を開き、2050年までにCO2ニュートラルな会社になるという当社のロードマップにおけるマイルストーンとなります」とヘルベルト・ディースCEOは記念式典で語った。

ラインオフする「ID.3」
ラインオフする「ID.3」

「ID.3」は、フォルクスワーゲンのモジュラー・エレクトリックドライブ・ツールキット(MEB)をベースにしたCセグメントのハッチバックだ。革新的なMEBにより生まれた「ID.3」は長い航続距離、広いインテリア、ダイナミックなハンドリングを実現しており、ドイツにおけるベースモデルの価格は3万ユーロ(360万円)を下回る。この「ID.3」は、2020年の夏にヨーロッパ全域の市場で正式発売される予定だ。ヨーロッパ各国の3万5000人を超える顧客が「ID.3」を予約し、予約金を支払っている。

カーボン・ニュートラルとオール・ドイツでの生産

「ID.3」は持続可能性という観点で新たなベンチマークとなり、生産はカーボン・ニュートラルな方法で行なわれるからだ。つまりカーボン・フットプリント(足跡)がゼロの状態で顧客に納車される。

例えば「ID.3」に搭載されているバッテリーセルの生産には、グリーン電力を使用するなど、生産プロセス全体においてCO2の発生を抑制し、どうしても避けられないCO2の排出は、インドネシアのボルネオ島での「カティンガン・マタヤ森林保護」気候プロジェクトへの投資などにより相殺されるのだ。

最初に電気自動車の大量生産を開始したツヴィッカウ工場
最初に電気自動車の大量生産を開始したツヴィッカウ工場

ツヴィッカウ工場は従来車両の生産から段階的にEV生産に転換することにより、大規模な自動車生産工場がe-モビリティ専用の工場に切り替えられる。完全に切り替えが完了する2021年以降、3つのグループ・ブランドによる6種類のMEBモデルがツヴィッカウで生産されることになる。

様々なトレーニング・プログラムにより、8000人の従業員全員が高電圧技術の取り扱いを含む電気自動車の生産に備えた教育を受ける。2020年末までに従業員合計で約1万3000日のトレーニングを完了する予定だ。これによって、ツヴィッカウ工場で長期的に安定した雇用が確保される。

フォルクスワーゲン 電気自動車攻勢 ツヴィッカウ工場で本格生産開始

「ID.3はハイテク工場で生産されたハイテクカーです。約1700台のロボット、無人搬送システム、完全自動化された生産プロセスにより、ツヴィッカウ工場は電気自動車の大量生産における未来のあるべき姿を見せてくれます。しかし最終的に成功のカギとなるのはクルマを生産する人々です。ザクセン州の私たちのチームは、2年間におよぶ転換の段階を経て、数多くのノウハウを蓄積し、献身的な努力を続けた結果、本日の生産開始にこぎつけることができました。これは素晴らしい成果です」と、フォルクスワーゲン・ブランドe-モビリティ担当のトーマス・ウルブリッヒ取締役はコメントしている。

フォルクスワーゲン 電気自動車攻勢 ツヴィッカウ工場で本格生産開始

明確な方向性を持ってe-モビリティ市場へと参入したフォルクスワーゲンは、気候保護に対して重要な貢献を果たすと同時に、ドイツ国内の工場で働いている約10万人の従業員も長期的なe-モビリティの実現に深く関わることになる。

それはe-モビリティのサプライ・チェーン全体が大きく転換するからだ。ドイツで電気自動車を生産し、バッテリーセルやシステムに加え、電気モーターの開発、生産もドイツ国内で行なうのだ。

ツヴィッカウ工場での生産とは別に、ブラウンシュヴァイク、カッセル、ザルツギッター、ウォルフスブルグの部品工場も、「ID.3」の生産に関与している。これらの工場では、電気モーターやバッテリーシステムといった重要なコンポーネントを製造し、2022年からエムデンとハノーバーの組立工場も、電気自動車の生産を開始する予定だ。さらに、Northvolt(ノースボルト)社と協力して、ザルツギッターに大規模なバッテリーセル工場を建設する計画となっている。

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