マニアック評価vol153
フォルクスワーゲンCCは、パサートからの派生車で「パサートCC」として2008年に欧州、北米、日本で発売されていた。セダンのパサートに対してパサートCCは4ドアクーペスタイルを持ち、2012年7月に行われた13年モデルのマイナーチェンジで、名称も「フォルクスワーゲンCC」に改められている。そして、VWの乗用車ではパサートの上位に位置することになり、国内最上級のモデルというポジションになっている。
CCとは「コンフォートクーペ」の略で、Dセグメントのアッパーミドルクラスのポジショニングに位置し、いわゆるプレミアムセグメントに属する。搭載されるパワーユニットは1.8LのTSI(ガソリンターボ)に7速DSGが組み合わされ、ダウンサイジングコンセプトを取り入れたモデルとなっている。また、欧州、北米で販売されるCCには1.4L、1.8L、2.0LのTSIガソリン搭載モデルと2.0LのTDIディーゼルターボ、3.6Lの4Motion(AWD)モデルも存在する。しかし国内では上記の1パワーユニットだけとなる。
従ってグレード構成もシンプルで、標準モデル(499万円)と安全装備などが充実したテクノロジーパッケージ(524万円)の2グレード。ボディサイズは4815×1855×1425mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースが2710mmで、おなじセグメントに位置するBMW3シリーズと比較すると、全長4625mm、全幅1800mm、メルセデスベンツ・Cクラスの全長4640mm、全幅1770mmであるから、全長、全幅ともにCCのほうが大きいことがわかる。
具体的な装備から見てみると、全車標準装備として、アクティブセーフティでは、ドライバー疲労検知システムのFatigue Detection SystemやESP、DSR、ABS、ブレーキアシスト、エマージェンシーストップシグナルが装備。パッシブセーフティでは、フロントエアバッグ(運転席/助手席)、サイドエアバッグ(前席/後席)、カーテンエアバッグなどがあり、ヘッドライトではオートハイトコントロール機能付など標準でもかなり充実した装備をもっている。
→斜め後方に車両が近づくとミラーサイドにワーニングが点滅し、ドライバーに注意を促す
これにプラスされるテクノロジーパッケージには、プリクラッシュブレーキシステムのFront Assist=低速域追突回避、軽減ブレーキシステムと、レーンチェンジアシストシステムのSide Assist Plus、レーンキープアシストのLane Assist、フロントVWのエンブレムに内蔵したレーダーで作動するアダプティブクルーズコントロールのACC=全車速追従機能といった装備が加わり、アクティブブセーフティ、パッシブセーフティともに充実した内容になっている。ただし、これらのテクノロジーパッケージの装備は、ドライバーが任意にオン/オフを設定できるようになっている。ちなみに、センサー類は77MHz、24MHzのレーダー、そしてカメラも使用している。
エクステリアは今回のマイナーチェンジで、VWのデザインを踏襲してフロント及びリヤを水平基調のデザインに改め、クーペスタイルと相まってシャープなデザインへと変更されている。パサートCCのときには丸味のあるヘッドライト&テールランプからは印象が随分と大人っぽくなっている。また、CCのヘッドランプ&テールランプにはLEDが採用され、エレガントさや高級感を作っている。タイヤは18インチで試乗車にはコンチネンタルのスポーツコンタクト5が装着されていた。
インテリアでも水平基調のデザインが採用され、シンプルでまっすぐなダッシュ周りの印象となる。上部はソフトタッチのウレタン素材でクラス相応の質感がある。一部樹脂を使用しているものの、見た目の印象に安っぽさはなくウッドとシルバーのトリムを上手く配し、清潔感あるインテリアになっている。
センターコンソールから空調、ナビ画面周辺はシンプルに効率よくまとめられているが、ゴージャス感はあまりない。同じようにステアリングデザインでも、もう一押しのゴージャス感が欲しい。機能的には握りやすい太さ、親指のかかりがいい凸の位置などは申し分ない。つまり、機能面では良く作られているが、演出の部分でインテリアが上質なアウディ、Cクラスなどのライバルと差がある。もっともそこまでは不要だという意見も多々ある部分だ。
メーターは2眼で左がタコメーター、右が速度計でともにアナログ式で見やすい。一方で、アクティブセーフティなどの機能の状況を示すアイコン表示や状況表示などが数多くあり、じっくり記憶していかなければ意味を瞬時に理解できない。もっとも理解していなくても走行には一切影響はなく問題とはならないのだが。
そして、今回試乗したのはテクノロジーパッケージを装備したモデルだ。試乗日が雨だったので分かったのだが、フロントウインドウには遮音用のフィルムが採用されているため、車内が静かであった。もちろん、ボディ随所に遮音材を使い、ノイズ低減ではクラス相応の静粛さを持っている。車内の広さでは、やはり後席のヘッドクリアランスが小さい。フロントは十分な高さが確保されているが、クーペスタイルであるため、多少の犠牲はあるものの、そこが気になるという方はパサートのセダンを選択すればいい。後席足元の広さは確保されていて、ナパレザーの上質なレザーシートは座り心地が良く快適だった。
1.8LのTSIエンジンはガソリン+ターボユニットでV6型3.0L並みの出力というダウンサイズコンセプトを採用。160ps/4500-6200rpm、250Nm/1500-4500rpmというスペック。乗った印象では160ps、250Nmというスペックどおりの印象で、クルマのキャラクターとして十分なパワーユニットだと思う。7速のDSGはすばらしく、ATと変わらない滑らかな発進をし、変速は素早い。パドルシフトを使ってのスポーツドライブでも軽快にシフトチェンジは行われる。
ブレーキはドイツ車としては珍しくブレーキダストが少ないタイプを採用している。そのためか、踏力を使って減速する意識となる。それは他のドイツ車と比較し踏力が同じであれば、効きが甘いと感じるかもしれないからだ。ただ、それも通常走行ではまったく気になることではなく、スピードレンジを上げたときに感じることで、ハードなスポーツ走行をした場合に限られるだろう。
ハンドリングは超高速域が日常的にあるドイツ車だけに、直進安定性は高く安心感の強い走りをしてくれる。この日の雨では、大きな水溜りを通過する際にも、ハンドルを取られることはなく、何事もなかったかのように安定して通過する。かといって路面のインフォメーションが薄いのかといえば、そうではなく、ドライバーにしっかり伝えることはできている。このあたりの仕上げはさすがだ。
また、コーナリングでもドイツ車の高いレベルの反応をする。少しの操舵でクルマは反応し、ドライバーは操作している感触を常に持ち続けられる。
サスペンションにはスポーツ、ノーマル、コンフォートの3段階の切り替えがあるアダプティブシャシーコントロールのDCCがあるが、意外にもスポーツモードは使いにくい。というのは、硬く締まりすぎる感があり、一般道や国内高速道路ではオーバースペックのような印象だ。それより、通常はコンフォートで走行し、少し締め上げたいと思うときにはノーマルを選択すると調度いいように感じた。
最近ではコンフォートを選択するとエコモードとなりアクセルの反応が鈍く、省燃費ドライブに設定されているモデルが増えているが、CCに関してはコンフォートがお勧めのモードだと思う。極端に言えばスポーツモードはサーキットでも走行しない限り選択しないモードではないだろうか。
マイナーチェンジしたCCは、アクティブセーフティ、やパッシブセーフティ、そしてシャシーコントロールに、ダウンサイジングエンジンと先端技術が満載しているモデルであることが分かる。そしてエクステリアデザインでも先端の4ドアクーペスタイルであり、魅力的なスタイルをしている。インテリアも上質感があり、清潔感も高い。さらに、フォルクスワーゲンらしい安心感の高い走りがあるモデルであり、積極的に選んでみたいと思えるモデルだった。